従業員の採用について

労務

 

 

今週はブラジル労務について記載いたします。

ブラジルの人材市場において、従業員が転職を決意する一番の理由を「より高い賃金(remuneração superior)」という統計が人材紹介会社の2015年5月実施の調査において明らかとなりました。これは、同社調べの世界平均が約28%であるなか、比較的高い数値です。また、同社人材データベースによる調査において、求職者が新しい職を探し始める主な理由として、ライフワークバランス/キャリア形成/職場を挙げています。

 この結果の捉え方を2つに分類すると、

  1. 各ポジションに設定できる給与額には上限があるため、従業員が高い給与を求めてジョブホッピングすることはやむを得ない。
  2. 各ポジションに設定できる給与額には上限があるが、キャリア形成を上手く整備し、キャリアと成果に応じて昇進・昇給を提示できれば、ジョブホッピングによる従業員の入替わりは軽減できる。

上記の様にいえると思います。

同調査によると、約92%の企業は「適切な技術、資格等の条件を満たした人を採用するのは困難」と回答しています。つまり、日本企業だけではなく、ブラジル現地企業、欧米企業にとってもニーズに合った適格者を採用することは非常に困難であり、ブラジルの人材市場全体の大きな課題となっています。相場給与よりも高額な予算を設ければ、よりスキルのある人材を採用できるのは事実ですが、従業員にとっては、少々物足りない業務を行うことになり、自身のキャリア形成と矛盾が生じることによって、新しい職場をすぐに探し始めるという結果を招きかねません。

また、以下の調査結果が更なる採用リスクを示唆します。同調査によると、約90%の企業は、採用した従業員に対して「採用は誤りだった」と回答しています。つまり、当初想定していた人物像や、業務態度、パフォーマンスと現状に乖離があり、不満を持っているということです。人材回転率(Turnover rate)が5%以下の企業のうち約43%の企業が、また、人材回転率が10%以下の企業のうち約30%の企業が、従業員の退職・解雇の理由は採用ミスによるものだと判断しています。

不満および乖離の原因は、主に、生産性の低さ(51%)、モラル・道徳観の低さ(28%)と回答しています。これらは、当初想定していたスキル自体に関する要素ではなく、人間性に関する要素といえます。この点も日本企業だけではなく、ブラジル現地企業、欧米企業にとっても大きな問題点となっています。この結果から、採用ポジションには十分過ぎるスキルの人材を採用して、相場よりも高い給与を支給しても、定着しない、パフォーマンスが向上しないなど、根本的な問題は解決されないことになります。

ブラジルの労働法によって、一度雇用した従業員の契約上の給与や手当は下げることが出来ず、解雇を行うにもかなりの企業負担と訴訟のリスクが切り離せません。これらを勘案すると、まず採用フェーズにおいてミスマッチングを可能な限りなくすこと、更に、雇用した従業員は長期的な視点をもって教育やトレーニングを行い、将来的なスキルアップ、キャリアパスを示すことによって、企業にとって価値のある「人財」として扱うことが重要であるといえます。企業にとって限りある資源を有効活用することは、とても重要な課題です。特に物価が高く、人件費が企業経営を圧迫するブラジルにおいては、採用した人材を最大限有効活用することが、ビジネスチャンスを生かし(生み出し)、成功する最大の要素といえるのではないでしょうか。

以上

 

 

Tokyo Consulting Firm Limitada

Director

金内 陽

 

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