こんにちは。東京コンサルティングファーム ブラジル駐在員の金内です。
今週はブラジル労務について記載いたします。
弊社の事務所があるパウリスタ通りは、多くのビルが立ち並び、今でも主要なビジネス街の1つです。ブラジル企業の一般的な就業時間は、8時から17時、もしくは、9時から18時で、通勤ラッシュの時間には、急ぎ歩きをする人も稀に見かけます。
(通勤時間に関する詳細は、本ブログ別回「ブラジル企業の労働時間について」をご参照ください)
サンパウロでは物価が非常に高いため、日本では一般的な若者の一人暮らしは、ブラジルにおいて一般的ではありません。Repúblicaと呼ばれる学生寮の様な共同生活宿舎や、アパートを数人でルームシェアして居住する労働者もいますが、サンパウロ市街地から遠方の場所に両親と同居している場合が殆どのため、毎日バスと電車を3時間以上乗り継いで出勤する従業員も稀ではありません。ブラジルの公共移動手段は、ダイヤ通りの運行は皆無と思われ、駅やバス停にそもそも時刻表を見かけません。余裕を持った行動は非常に重要ですが、時間ギリギリに行動してしまうのも人の常です。
日本には「10分前集合・5分前行動」という言葉がありますが、ブラジルでは、CLT(統一労働法)において、出勤記録の5分未満の差異は勤怠に影響しない主旨の条項があります。
Consolidação das Leis do Trabalho (CLT)
Art. 58 –§ 1º – Não serão descontadas nem computadas como jornada extraordinária as variações de horário no registro de ponto não excedentes de cinco minutos, observado o limite máximo de dez minutos diários.
出勤記録における5分未満の差異は、1日10分間を上限として、勤務時間から差し引かれることはなく、また、超過労働時間に加算されることはない。
例えば、就業時間の最初に朝礼を行う企業は、開始を就業開始5分後からに設定する必要があるなど、雇用側からみれば中々受け入れがたい条項ですが、労働法で保護された権利ですので、容認せざるを得ません。
現在弊社はアジア・中東・中南米など、様々な国に進出しており、各国で現地スタッフを採用して朝の研修会などを行っていますが、国民性が違えば遅刻に対する考え方も異なり、最終的には社員への意識教育が重要な要素となります。
日本式の勤怠管理では、遅刻は通常減給です。しかし、これは従業員による遅刻に対する罪悪感があってこその懲罰であるため、罪悪感のない現地スタッフには、効果的な懲罰規定とはなりません。むしろ、「遅刻をして(減給という懲罰を受けることによって)困るのは自分だけである」という遅刻を正当化させてしまう危険性すらあります。
全体の運営の為に「和を乱さない」というのは非常に日本的な考え方かもしれませんが、日本企業として重要視するポイントや持つべき意識を共有し、また、全体の効率性や能率性の観点を持たせることによる意識教育を行うことで、従業員の勤怠も改善されていくのではないでしょうか。社員の意識教育は、全てにおいて正しいアプローチとは言い難いですが、実際に多くの企業で改善の事例が出ています。就業規則の策定、社訓を壁に掲げる、朝礼を始めてみるなど、企業規模やタイミングに限らず、始められることは多くあります。新しい取り組みを始めてみるのも良いかもしれません。
以上
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