物価水準について

こんにちは。東京コンサルティングファーム ブラジル駐在員の金内です。
今週はブラジル投資環境について記載いたします。

ブラジルは、1980年代後半、1990年代にかけてハイパーインフレーションを経験している国であり、インフレ率および物価の上昇率について、常に検討事項として考慮されています。
インフレーションとは、モノやサービスの全体価格レベル(物価)が、一定期間において持続的に上昇する経済現象を意味します。また、ハイパーインフレーションとは、国際会計基準においては3年間で累積100%(年率約26%)以上の物価が上昇する経済現象をハイパーインフレーションと定義しています。過去にブラジルが経験したハイパーインフレーションは、1980年代後半は1,000%以上、1990年代前半には2,500%と定義値を遥かに超える数値を記録し、実際の物価は、日に日に物の価格が2~3倍になっていくという状況でした。こういった歴史的な背景がある点、また経済や金融事情がインフレを誘発しやすい環境にあるという点から、ブラジルにおいてインフレ率、物価上昇率の抑制は常に政策の課題となっています。直近の年平均インフレ率は、2010年は5.04%、2011年は6.64%、2012年は5.40%となっています。ちなみに日本の直近年平均インフレ率は、2010年は-0.72%、2011年は-0.29%、2012年は-0.04%とマイナスが続いています。
ブラジルの物価は、もともとの中間コストの高さに加えて、経済成長率と消費者物価指数を基準として毎年改定される最低賃金の上昇、賃上げや年金支給額の増額などが続いており、構造的にも物価上昇圧が掛かりやすい状況にあるといえます。また、現在も消費者物価は前年比で上昇基調が続いていることから、物価上昇圧は引き続き高いといえます。上記を鑑みると、ブラジルの消費事情に大きく影響を与えている様に思われますが、全体の数値から見ると購買力にさほど影響を与えていません。大きな理由は、中間所得層の増加が挙げられます。
ブラジルは、消費財の下限価格が高い一方で、中間所得層に向けの商品に対する価格の変動幅が少ないといえます。中間所得層にとっては、下限から中間レベルの商品を購入する選択肢があり、その時々の経済事情に合せて購入する商品の価格を調整することが出来ます。こういった所得層の構成からも全体的な購買力に大きな変化が起きにくい状況にありますが、顕著になるのは、都心部と地方の所得格差です。物価が上昇に合せて最低賃金が調整されたところで、消費財全体の下限価格帯が高いために、低所得層の購買力が劇的に改善されることはありません。また、中間所得層の増加にも限界があり、全体的な所得の底上げが直近の課題といえるでしょう。

以上

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