大統領、首相の就任に伴うトルコ経済

みなさん、こんにちは、トルコ駐在員の田中隆道です。

先日、車で移動している際、たまたま運転手が爆音でラジオを聴いていたため、耳を傾けるとエルドアン氏が大統領就任に伴う演説を行っていました。演説の内容は、クルド人問題など今後の改革について力強く話しており、色々な意味でトルコを賑わせていたようです。

大統領就任は2014年8月28日に行われ、2007年8月から大統領を務めていたギュル氏に代わり、2003年から約11年間首相を務めたエルドアン氏が首都アンカラの国会にて宣誓を行いました。

そして大統領就任に伴い、首相代行として同月29日には新たに与党、公正発展党(AKP)の党首で2009年以降外相を務めたダウトオール氏が指名されました。ダウトオール氏は国会議員として約3年務めたのみで経験や政治実績に乏しく、政治面での力量などはまだベールに包まれています。そのため、首相就任について一部ではエルドアン氏が大統領として政治的影響力を維持しやすい人選としてダウトオール氏を任命したと厳しい意見もあるようです。

現在のトルコの経済状況としては、18四半期連続のプラス成長しておりヨーロッパが下火にも関わらず好景気に沸いています。ゼイベクジェ経済大臣も今年5月に2014年の経済成長率は輸出の拡大で4.0%を上回るであろうと予想し、6月のトルコ統計機構(TUIK)の発表では2013年の第4四半期の経済成長率4.4%からは少し減速したものの、実際に今年の第1四半期では前年同期比4.3%と予想を上回りました。
また、昨年12月以降雇用に対して力が入れられており、雇用者数はここ数カ月で100万人ほど増加していると見られています。そのため、雇用の増加に伴い家計の収入増加に繋がり、個人消費の拡大、経済成長と正のスパイラルが期待できるのではないでしょうか。

ただし、トルコは毎年大きな貿易赤字を抱えており新首相や新大統領の課題の1つとなっています。2012年のデータにおいてもトルコの貿易収支は約‐650億USD、サービス収支などと合算したとしても約‐480億USDの経常収支となっており、今後この赤字を黒字へと転換ができなければトルコの経済成長はこれ以上続かない可能性があると投資家からなどは見られています。

トルコが現在まで安定した財政運営を行えた理由として、海外からの資本収支が経常赤字を補い、2012年度の数字を見ると約‐480億USDの経常収支に対して、700億USDの資本収支と約220億USD程プラス収支となっていました。しかし、この資本収支も直接投資と証券投資とで比較すると、投機目的の証券投資が8割程のため安定した資本でないことが分かります。

そこで、今後トルコは経済構造改革として、トルコ国内に安定した資本を置き、且つ貿易赤字の改善を行う必要があると考えられます。そのため、まずは経済の安定を目的とし、流動的な投機ではなく事業立ち上げを検討している投資家からの投資を主体に切り替えが必要になります。その上でトルコは価値の高い輸出品の生産できる拠点と成長し近隣諸国へ輸出を行っていかなければなりません。

投資家の投資により設備投資が行われ、生産拠点となることが出来れば雇用増加がさらに加速していきさらなる正のスパイラルが生まれるため、新首相、新大統領の改革に期待したいと思います。

そして、近年日本もトルコと良好な国交が築かれており、安倍晋三首相はエルドアン前首相が大統領選で当選した際に祝意を伝え、ダウトオール氏の首相就任時には在トルコ日本大使館を通じて祝辞を送っていました。今後、技術は持っているもののマーケットを拡大していかなければならない日本と海外投資を受け入れ価値の高い輸出品を生産しなければならないトルコとでwin-winな関係が作れるのではないでしょうか。

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