シンガポール雇用法改正!ポイントその1「年休」

シンガポール雇用法改正~年休について~

来年2019年4月1日より、シンガポール雇用法(Employment Act)が改正されます。

 

すでに2018年5月の時点で公表されていた変更ではありますが、大手新聞各紙が「画期的な改正」と形容するこの改正、具体的にどのように影響があるのか、簡単にはつかめない点が多くあります。

 

本ブログではこの改正について、ポイントを絞って解説していきます。

 

今週は「年休」についてまとめます。

 

何が変わるの?

 

まず、雇用法の改正についてストレートにお伝えしましょう。

 

ズバリ、一番の変更点は、これまでシンガポール雇用法の対象外であった月給S$4,500以上の従業員にも、一律法律が適用になる点です。

 

一般にPMET(Professionals, Managers, Executives and Technicians)と呼ばれる専門職・経営者層の従業員に対して、給与がS$4,500を超えているというだけで一切保護が与えられないのでは労働条件が厳しすぎるということで、就業時間の指定と残業代支給を義務付ける第4部(Part IV)を除いて、一般的に雇用法が適用されることになりました。

 

これにより拡大されるのは、主に以下の保護を受ける従業員です:

・年休(Annual Leave):最低7日~14日

・祝日(Public Holidays):働かなくても勤務した扱いの日として補償

・病気休暇(Sick Leave):通院・入院が必要な場合に、診断書が出れば有給休暇がとれる

・給料日(Pay Day):給与計算期間の締め日から7日以前の支給が必要

 

なお、上記第4部についても、これまでの対象者は月給S$2,500以下の従業員とされていましたが、こちらがS$2,600以下の従業員まで引き上げられることになっています。

 

そもそもシンガポールの年休って?

 

それでは年休のお話です。原則を知って理解の助けとしていきましょう。

 

まず、シンガポールにおける年休(Annual Leave)とは、1年間勤務を継続するごとに、企業から与えられるべき有給休暇を指します。

 

したがって、各人が自分の勤務開始日を基準にして、1年たつごとに一定の日数有給休暇がとれるようになるのが原則です。

 

法定では最初7日、一般には最初14日程度、有給休暇として付与されますが、その後1年経過するごとに取得可能日数が増えていき、会社との契約・就業規則により、一定数で最大となる形で規定されます。

 

シンガポールにおいて、これは会社の福利というよりは従業員の権利であり、通常退職前にはこれを消化するか、会社に買取の義務が生じるような規定が設けられる性質のものです。

 

いつからいつまで年休取得できるの?

 

上記原則はシンガポールの規則に反映されていますが、1年満了するそのタイミング、その年一回のタイミングで、何日も有給休暇取得の権利が付与されるというのは、少し極端です。

 

年度末に支給されることの多いAWSにも同じ弊害がありますが、付与された直後に離職通知が提出されるような弊害も生まれます。

 

そのため、一般に試用期間相当と考えらる、雇用開始から3か月の期間を満了した従業員から、雇用継続期間で月割りないし日割りされた日数を、「前倒しで」取得できることになっています。

 

一方、この年休が取得可能な期間は、原則として年休の付与される年、つまり1年満了後の1年間です。

 

そこで消化されなかった年休については、会社側に買い取り(Encashment)などの義務はなく、単純に取得の権利が消滅すると雇用法に書かれています。

 

つまり、法定の最低付与日数、利用期間は、以下のようになります:

対象年度 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 7年目 8年目~
付与日数 7日 8日 9日 10日 11日 12日 13日 14日
利用期間 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 7年目 8年目 9年目
前倒込み利用期間 1年目~2年目末 2年目~3年目末 3年目~4年目末 4年目~5年目末 5年目~6年目末 6年目~7年目末 7年目~8年目末 8年目~9年目末

 

例えば2年目には、以下のような計算を行います:

・1年目満了に対しる年休の日数から、すでに前倒しで利用されている日数を引いて計算

・2年目満了に対する年休がどれだけ前倒しで利用できるか、月割りで計算

 

ただし、会社によってはほぼ無制限に翌年まで持ち越すことを許したり、毎年一定の日数しか利用されないよう、満了時に買い取りを行うところもあり、結果として上記日数を超えているのであれば、法的には問題ありません。

 

今回の変更は?

 

シンガポールでは一般的に、ほとんどの従業員が雇用契約・就業規則で上記法定日数以上の年休が付与されています。

 

したがって、2019年4月の改正で、年休の付与日数を増加させる必要があるという会社は、少ないのではないかと思います。

 

一方、改正法が保証するのは年休を利用する権利です。

 

解雇が比較的容易であったシンガポールにおいて、雇用法の保護を受けている従業員が退職する際には年休の買取が必要ですが、これまでPMETに対してはこの点が保証されていませんでした。

 

つまり、給与が高い従業員であるPMETが退職する際、これまでは「雇用契約書に書いていないし、雇用法の保護も受けない給与帯だから」ということで年休未消化分の買取を回避できた部分も、今後はきっちり年休を消化させるか相当の金額を払う必要が出てきた、ということです。

 

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