皆さん、こんにちは!
東京コンサルティンググループ シンガポール拠点の田中 勇です。
いつもブログをお読みいただきありがとうございます。
さて、今回は「越境リモートワーク~シンガポール、日本と諸外国の課税~」についてお話していこうと思います。
目次
越境リモートワーク~シンガポール、日本と諸外国の課税~
近年、特にコロナ禍以降、越境リモートワークが急速に普及しています。シンガポールでも、この新しい働き方が注目を集めていますが、税務や法律面での課題も多く存在します。本記事では、シンガポールにおける越境リモートワークの実態と、注意すべきポイントを詳しく解説します。
1.越境リモートワークとは
越境リモートワークとは、国境を越えて異なる国の企業に雇用され、リモートで働く形態を指します。例えば、シンガポールに住む日本人が日本企業に雇用されるケースや、シンガポール人が日本企業に就職するものの、ビザの問題で入国できずリモートで働き始めるケースなどが該当します。
2.雇用と業務委託の違い
シンガポールでは、雇用関係を「業務の契約(Contract of Service)」、業務委託を「業務用の契約(Contract for Service)」と呼び分けています。
①雇用(Contract of Service)の特徴:
- シンガポール雇用法の適用を受ける
- 雇用契約書で主要な雇用条件を明文化する必要がある
- 従業員は法的保護を受けられる
②業務委託(Contract for Service)の特徴:
- 独立した個人事業主と法人の契約
- 雇用法の適用を受けない
- 特別な法的保護はない
3.越境リモートワークの実態
シンガポールでは、以下のようなケースで越境リモートワークが増加しています:
- EPホルダーの配偶者が就労許可を得られず、海外企業にリモートで雇用される
- シンガポールで働いていた外国人が帰国し、リモートで継続勤務する
- シンガポール企業に就職が決まったが、入国できずリモートで勤務を開始する
4.法律上の取り扱い
越境リモートワークは、多くの場合、従来の雇用法の枠組みに当てはまらず、法的保護が不十分な状況にあります。
シンガポールの場合:
- 個人が外国法人に対して業務を行うことは、雇用・業務委託いずれの形でも問題ない
- 個人事業主としての登記は不要
ただし、社会保険や年金基金への加入ができないなど、従来の雇用と比べて不利な点も多いため、報酬面でその分を補填するケースも多くあります。
5.税務上の注意点
①恒久的施設(PE)の問題
越境リモートワークで注意すべき点の一つが、個人の活動が恒久的施設(Permanent Establishment:PE)と認定されるリスクです。
PEとは:
外国企業が他国で事業を行う上で、その国内に設置する固定的な事業場所のこと。PEと認定されると、その国で法人所得税を支払う必要が生じます。
対策:
- リモートワークの業務内容を、営業活動を含まない事務作業に限定する
- 企業名義での販売活動を避ける
②個人所得税の取り扱い
越境リモートワークにおける個人所得税は、原則として以下のように扱われます:
- 報酬を受け取る場所に関わらず、個人が滞在している国で課税所得を申告・納税する
- 税務上の居住者(Tax Residence)は、通常183日以上の滞在で認定される
- シンガポールでは、60日を超える滞在で納税義務が発生する
二重課税の回避:
租税条約を締結している国同士の場合、外国税額控除制度を利用して二重課税を回避できます。滞在証明や納税証明を用意し、適切な手続きを行うことが重要です。
6.シンガポールビジネスのことは「東京コンサルティングファーム」にお任せください
今回は「シンガポールにおける越境リモートワーク」について解説しました。
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※本記事は、シンガポールに関する一般的な情報提供のみを目的としたものであり、法的助言を構成するものではありません。
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株式会社東京コンサルティングファーム シンガポール拠点 田中 勇
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