こんにちは、Tokyo Consulting Firm Philippine Branchの大橋 聖也です。
【1分でわかるフィリピン進出のイロハ】
No.76<フィリピンにおける交際費の損金算入限度額とは?>
日系フィリピン子会社の税務コンプライアンスチェックにあたって、費用の損金算入限度額が論点になることがあります。
法人税の納税額、更には自社の将来キャッシュフローにも影響を与えるため、事前にタックスプランニングの一貫として検討すべき事項となります。
損金算入限度額がある代表的な費用項目は、交際費(Entertainment expenses)になります。
今回は、日本とフィリピンで比較しながら交際費の損金算入限度額をみていきたいと思います。
1 交際費の範囲
(日本)
日本では、以下の通り明確に定義されており、また交際費の判定について多くの判例があります。
「交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出する費用」
また、以下のように交際費の対象外となるものもあります。
・専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
・飲食その他これに類する行為のために要する費用であって、その支出する金額を飲食等に参加した者の数で割って計算した金額が5,000円以下である費用
(専らその法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く)
・会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用
(フィリピン)
フィリピンでは、原則的に課税期間中に生じた費用で、事業との直接的な関連性があり、かつ根拠証憑を適切に具備しているものは、税務上の損金算入することが認められています。
2 損金算入限度額
(日本)
日本では、資本金基準をベースにしています。
期末資本金額が1億円以下の企業は、いずれか有利は方を選択できます。
1)交際費等のうち、接待飲食費の50%まで
2)交際費等のうち、年間800万円まで
期末資本金の額が1億円を超える会社は、交際費等のうち接待飲食費の50%を損金算入できます。
(フィリピン)
フィリピンでは、売上高基準をベースにしています。
・Service Companyの場合
→上限額:年間売上高×1%までを損金算入
・Manufacturing or Merchandising Companyの場合
→上限額:年間売上高×0.5%までを損金算入
3 証票類や帳簿の記載
(日本)
日本では、接待飲食費については、帳簿や書類に次の事項を記載しなければなりません。
– 飲食費に係る飲食等のあった年月日
– 飲食費に係る飲食等に参加した得意先、仕入先その他事業に関係のある者等の氏名又は名称及びその関係
– 飲食費の額並びにその飲食店、料理店等の名称及びその所在地
– その他飲食費であることを明らかにするために必要な事項
(フィリピン)
フィリピンでは、税法の求めにより企業側に実証義務が課せられており、税務署から発行される領収書 (Official Receipt)の保管やその他の適切な記録をもって、下記の事項を証明しなければならないとされています。
– 事業等との直接の関連性
– 費用額の記載
特にスタートアップ企業においては、追加投資に伴う資金調達や今後の資金繰りに関して、上記の損金算入限度額を考慮したタックスプランニングを検討して頂ければと思います。
最後に、2017年9月に弊社フィリピン本の第2版が、出版されました。
フィリピンへの進出実務を最新の情報にアップデートすると共に、弊社フィリピン拠点における6年間のコンサルティング実務の経験を盛り込んでまとめ直したものとなります。
中でも本著はフィリピンの基本的な投資環境から、設立法務、会計税務、人事労務、M&Aに至るまでフィリピンでのビジネス展開に必須な情報を網羅的に収録していますので、
是非、本屋又は弊社宛にお問合せ頂き、手に取っていただけますと幸いです。
今週もどうぞよろしくお願い致します。
Tokyo Consulting Firm – Philippine Branch
大橋 聖也
2012年、東京コンサルティンググループに入社。中小企業の発展、会計業界の生き残りを掛けて、社外CFOとして社長のビジョン実現をサポートする、ビジョナリーコンサルティングを立上げに奮闘。社長の抱えるお困り事解決すべく経営理念の策定・経営会議のファシリテート・財務分析等の支援を行う。2016年10月より、フィリピン支店の拠点長として世界に活躍のフィールドを拡げ、真の顧客貢献を目指す。
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