こんにちは、Tokyo Consulting Firm Philippine Branchの大橋 聖也です。
【1分でわかるフィリピン進出のイロハ】
No.66<相次ぐ税務調査?!2019年BIR優先プログラムとは?>
今回は、【2019年BIR優先プログラム】をご紹介します。
日系フィリピン子会社の税務コンプライアンスチェックにあたって、「今後のBIR(税務署)の動向はどうなのか」は関心の高いところでしょう。
それを知る手掛かりの一つとして、BIRは毎年1月、この一年優先的に実施する項目を纏めたプログラム(Priority Programs)を発表しています。
今年も1月16日に「2019年優先プログラム(RMC No. 5-2019)」が公表されました。
2019年優先プログラムには、前年から継続している項目のほか、税制改革の動きを受けて新たに追加された項目を含め、全部で19の項目が掲げられています。
その中で大きなポイントは、2つあります。
➀税務調査(BIR Audit)の強化
昨年に続き、「税務調査の強化」や「課税ベースの拡大」が挙げられており、2019年の徴税目標値である2.33兆ペソを達成すべく、昨年以上に税務調査が頻繁に行われることでしょう。
*徴税目標値は、2018年対比で14%増、2017年対比で23%増となります。
また、追加された項目として、「TRAIN実施プログラム」や「TAMPのモニタリング」が挙げられていることから、今後は優遇税制を受けている企業だけでなく、RDO(Revenue District Office)のベンチマーキングによる税務調査の対象企業も増えてくると想定されます。
*TAMPとは、各地域における納税規模の大きい事業者で、RDOによるモニタリング対象者
②移転価格の優先順位低下
一方で昨年、「税務調査の強化」の項目で挙げられていたBEPS(税源侵食と利益移転)やTransfer Pricing(移転価格)といった文言は、2019年の優先プログラムからは削除されています。
近年移転価格の法整備が進むインドネシアやタイなどASEAN諸国と比べて遅れているフィリピンですが、移転価格文書にかかる通達や事前確認制度(APA‐Advance Pricing Agreement)などの移転価格関連の整備については記載がありませんでした。
APAガイドライン導入や移転価格調査の今後の動向については、日系企業にとって非常に関心の高い論点ですが、今回はBIRにおける移転価格の優先度が下がるという意味なのか、引き続きBIRの動向を注視する必要があります。
最後に、多くの納税者が期待している、TRAINの施行により有効なVAT還付システムの早期構築はBIRにとって大きな課題の一つであるはずですが、VATについての言及はなく、VAT還付関連通達の適切な運用を含め、BIRの今後の対応が注目されます。
という事で、今後ますます税務調査への対応がフィリピン日系企業にとって一つの経営リスクとなっていく中で、
4月22日、弊社東京オフィスにて「フィリピン税務調査セミナー」の開催します。
お時間ある方は是非ご参加ください。
「2019年優先プログラム(RMC No. 5-2019)」
REVENUE MEMORANDUM CIRCULAR NO. 5-2019 issued on January 16, 2019 prescribes the CY 2019 BIR Priority Programs, to wit:
- Run After Tax Evaders (RATE);
- Oplan Kandado;
- Intensified Audit and Investigation;
- Enhanced Implementation of the Arrears Management Program in the Regional Offices;
- Broadening the Tax Base;
- Taxpayer Account Management Program (TAMP) Monitoring;
- Fuel Marking and Field Testing Program;
- e-Invoicing/e-Receipting and eSales Reporting;
- Optimization/Implementation of Internal Revenue Integrated System (IRIS, formerly e-TIS);
- Tax Reform for Acceleration and Inclusion (TRAIN) Law Implementation Program;
- Massive Tax Education Campaign/ Public Awareness Program;
- Implementation of RA 11032 (Ease of Doing Business and Efficient Government Service Delivery Act of 2018);
- Information and Communications Technology Solutions for Improved Taxpayers Services;
- Sustained Compliance with Data Privacy Act;
- Data Sharing Agreements with Other Government Agencies;
- Action on Administrative Cases Against Erring Revenue Officials and Employees;
- Expedite Recruitment of New Personnel and Promotion of Qualified Employees;
- Capacity Building Enhancements for BIR Officials and Employees; and
- Budget Utilization Program.
最後に、2017年9月に弊社フィリピン本の第2版が、出版されました。
フィリピンへの進出実務を最新の情報にアップデートすると共に、弊社フィリピン拠点における6年間のコンサルティング実務の経験を盛り込んでまとめ直したものとなります。
中でも本著はフィリピンの基本的な投資環境から、設立法務、会計税務、人事労務、M&Aに至るまでフィリピンでのビジネス展開に必須な情報を網羅的に収録していますので、
是非、本屋又は弊社宛にお問合せ頂き、手に取っていただけますと幸いです。
今週もどうぞよろしくお願い致します。
Tokyo Consulting Firm – Philippine Branch
大橋 聖也
2012年、東京コンサルティンググループに入社。中小企業の発展、会計業界の生き残りを掛けて、社外CFOとして社長のビジョン実現をサポートする、ビジョナリーコンサルティングを立上げに奮闘。社長の抱えるお困り事解決すべく経営理念の策定・経営会議のファシリテート・財務分析等の支援を行う。2016年10月より、フィリピン支店の拠点長として世界に活躍のフィールドを拡げ、真の顧客貢献を目指す。
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