フィリピン 証憑不足で予期せぬ追徴課税?!Part.4

経営

 

こんにちは、Tokyo Consulting Firm Philippine Branchの大橋 聖也です。

No.62<証憑不足で予期せぬ追徴課税?!Part.4>

日系フィリピン子会社の税務コンプライアンスチェックにあたって、各種証憑類の取扱いが論点になることがあります。

前回に引き続き、証憑と税務の関連性をテーマに具体的に証憑不足による追徴課税を受ける事例を取り上げていきたいと思います。

 

【サービスやローン等の契約書】

多くの日系フィリピン企業は、日本の親会社やタイ・シンガポール等の関連会社との間でサービスの役務提供やローンによる資金移動がなされています。

親会社とのサービス契約書の内容が不透明であること、又は親会社からのローンに対する英語での契約書がないことから、税務調査時には、フィリピン子会社では最終源泉税(FWT:Final Withholding Tax)に対する追徴課税を受けるケースが多く見受けられます。

原因としては、そもそもFWTとは何かを現地駐在員やフィリピン人経理担当者がよく理解しておらず、無意識の内に申告納付漏れが発生しているのが実態です。

 

FWTとは、源泉徴収義務者によって代理徴収される税のうち、当該税金の支払いによりフィリピンでの課税関係が完結するものをいい、配当・ロイヤリティー・利子の支払いといった取引に適用されます。

フィリピンでは、外国法人である日本の親会社は、フィリピン国内で発生した源泉所得に対して、FWTの課税が生じます。

一般的には、以下に記載する源泉地の判断基準に沿って、日本の親会社がフィリピンの子会社からロイヤリティー、利息、配当を受け取る場合、フィリピンでのFWTの課税有無を確認する必要があります。

例えば、日本から人を送り、子会社への技術指導や経営管理などのサービスフィーについて、フィリピンで役務提供が行われた場合、フィリピンで課税対象となります。
*フィリピン国外で役務提供がなされた場合は、フィリピンでの課税対象にはなりません。

 

<源泉地の判断基準>
サービス:役務提供がなされた場所
ロイヤリティー:ノウハウや資産が提供された場所
利息:債務者の居住地
配当:配当を支払う法人の居住地

 

また、FWTの主な注意点は、以下になります。
・納税義務は所得を受け取る親会社ではなく、支払い側のフィリピン子会社であり、フィリピンでの課税関係は、子会社の源泉徴収により完結する
・FWTは支払う側のフィリピン子会社の税務調査の対象項目であり、BIRから指摘が入った場合の納税義務は子会社が負う

実務上、実際に起きた事例をいくつかご紹介します。

 

<ケース1>ローン契約書の作成漏れ
意外にもローン契約書を作成し忘れてるケースは多くあります。
当該契約書に課税されるDST(印紙税)の申告漏れ、本来発生すべき利子に対するFWT又は移転価格を指摘される可能性があります。

<ケース2>サービス契約書の内容不備
実際の役務提供はフィリピン国外でなされているが、フィリピン子会社を経由した資金移動がある場合に、サービス内容や取引の流れが契約書に明確に記載されていないことで、税務調査時には、FWTの課税対象とみなされ追徴課税を受ける可能性があります。

<ケース3>不必要な契約書作成
日本の親会社から派遣された現地駐在員が、現地で支給された給与に対して毎月源泉税(WTC)を適切に申告納付していたにも関わらず、フィリピン子会社側で雇用契約書ではなく、コンサルティング契約書を作成してしまった為に、税務調査時に当該契約書を根拠にFWT15%の追徴課税をされた事例があります。

 

次に、FWTの税率については、非居住者に支払う事業所得・利子に対する源泉税率については、日本とフィリピン間にある租税条約(TTRA又はCORTT)の事前申請をすれば、軽減税率(事業所得30%→0%、利子20%→10%)を受けることが出来るようになります。

なお、日本の親会社は、受け取った所得に対して法人税等が課税されますが、フィリピンで支払った最終源泉税に対して外国税額控除を適用することで二重課税を回避することが可能です。

税務調査が入る前に、自社のフィリピン子会社で納税義務が発生するFWT(最終源泉税)の取扱いが正しくされているか税務コンプライアンスチェックをされることをお勧めします。

 

最後に、2017年9月に弊社フィリピン本の第2版が、出版されました。
フィリピンへの進出実務を最新の情報にアップデートすると共に、弊社フィリピン拠点における6年間のコンサルティング実務の経験を盛り込んでまとめ直したものとなります。
中でも本著はフィリピンの基本的な投資環境から、設立法務、会計税務、人事労務、M&Aに至るまでフィリピンでのビジネス展開に必須な情報を網羅的に収録していますので、
是非、本屋又は弊社宛にお問合せ頂き、手に取っていただけますと幸いです。

今週もどうぞよろしくお願い致します。

 

 

 

 

Tokyo Consulting Firm – Philippine Branch
大橋 聖也

2012年、東京コンサルティンググループに入社。中小企業の発展、会計業界の生き残りを掛けて、社外CFOとして社長のビジョン実現をサポートする、ビジョナリーコンサルティングを立上げに奮闘。社長の抱えるお困り事解決すべく経営理念の策定・経営会議のファシリテート・財務分析等の支援を行う。2016年10月より、フィリピン支店の拠点長として世界に活躍のフィールドを拡げ、真の顧客貢献を目指す。

 

※)記載しました内容は、作成時点で得られる情報をもとに、最新の注意を払って作成しておりますが、その内容の正確性及び安全性を保障するものではありません。該当情報に基づいて被ったいかなる損害についても情報提供者及び当社(株式会社東京コンサルティングファーム並びにTokyo Consulting Firm Co., Ltd.)は一切の責任を負うことはありませんのでご了承ください。

関連記事

ページ上部へ戻る