ミャンマーの賃金の現状について

労務

いつもお世話になっております。

東京コンサルティングファーム ミャンマー拠点の西野由花です。

 

現地での採用時、その後の昇給時には、職種に応じた賃金統計についても把握しておく必要があります。

 

最低賃金に関して、2013年に1949年の最低賃金法が改正され、新最低賃金法が成立しました。

この最低賃金法により最低賃金の決定方法が定められ、2015年6月29日、ミャンマーで初となる最低賃金の設定に関する通達が発表されました。

この通達により、同年9月1日より3,600チャットの最低賃金適用が開始されています。

その後2018年には、日給4,800チャット、時給600チャットと設定されています。

ただし10 人以下の労働者の小規模事業や家族事業には適用されません。

最低賃金は、現行では2年に1回の頻度で見直しについて規定されていますが、今後は物価変動を即座に反映させるために半年ごとへの制度変更が検討されています。

一方、2020年に予定されていた最低賃金の改定は新型コロナウイルスの関係で発表が延期されており、2021年1月現在も未発表となっています。

 

最低賃金決定の際には労働者及びその家族のニーズや社会保障給付金、実際の給与額に加え生活費や生活水準の他、国内総生産や消費者物価指数、インフレ率、地方における産業調査、雇用者における賃金の支払い状況、国の経済状況などが考慮されたうえで決められます。(最低賃金法7条、最低賃金法施行細則23条)
この最低賃金とは基本給+時間外手当+賞与の合計となり、年金、社会保障給付金、通勤手当、医療手当などの各種手当などは含まれていない為、注意が必要です。(最低賃金法2条)

また、最低賃金法23条によると、定められた最低賃金を支払わない場合は一年以下の懲役もしくは50万チャット以下の罰金、もしくはその両方が科せられます。

 

最低賃金の決定は、国家委員会からの通知によって行われます。
この国家委員会とは関連する政府機関や労働組織、労働者代表、雇用者組織もしくは雇用者の代表や専門家などにより組織されます。(最低賃金法3条)
これら最低賃金に関する調査は連邦直轄領、管区、州、もしくは経済特区の委員会が行い、それらの情報を元に各地区の委員会が最低賃金率の案を提出、その後国家委員会により最低60日前に官報及び新聞に公表されることとなります。
これらの提案に異論がない場合には国家委員会が政府の承認を得たうえで最低賃金が決定されます。(最低賃金法8条~10条)
また、決定された最低賃金率に不服がある場合は最高裁判所に申し立てることが可能な旨も最低賃金法11条により規定されています。

 

これらの最低賃金に関する規定の例外として、最低賃金法施行細則43条(l)では採用した従業員の試用期間中の賃金においては最低賃金の75%を下回らない額での支払いが認められており、またいわゆる技術研修者(Training Worker)としての採用であれば3ヶ月以内に限り最低賃金の50%を下回らない額での支払いが認められるとしています。

また、この最低賃金法により、雇用者は基本的には賃金を法律に認められた場合以外で控除することが禁止されており、罰則などで減給を行うことができなくなっています。(最低賃

金法 12 条(c)、賃金支払法 8 条)

 

【ミャンマーにおける給与及び社会保険負担率】
最低賃金(基本給+時間外手当) 4800チャット/日

600チャット/時

賞与支給金額(固定+変動) 基本給与の1.16ヶ月分(平均)
社会保険負担率(医療保険、労災保険のみ) 雇用者側:3%、労働者側:2%

出所:JETRO「投資コスト調査」 調査実施期間2018年12月~2019年1月

【ミャンマーの職種別月額給与平均】
製造業 作業員(一般工) 162 USD
エンジニア(中堅技術者) 349 USD
マネージャー(中間管理職) 1,016 USD
非正常業 スタッフ(一般職) 415 USD
マネージャー(課長クラス) 1,028 USD
アパレル店舗スタッフ 98 USD
飲食店舗スタッフ 65~98 USD

出所:JETRO「投資コスト調査」 調査実施期間2018年12月~2019年1月

 

ミャンマーでもアジアの新興国の各国に見られるようなジョブホッピングが盛んに行われていますので、今後の経済の発展とともにさらに賃金は上昇していく可能性が高くなっています。

こうした事態に対応していくためにも、賃金の上昇に伴い従業員の生産性が向上していくような教育システムや賃金と売上の因果関係を含めてマネジメントを行っていく必要があります。 

 

いかがでしょうか。

弊社では設立前の市場調査や事業計画策定から設立、設立後の会計税務への対応の他にも、

人を育成し、マネジメントする仕組みとしての人事評価制度を採り入れた組織づくりについてもご提案しています。

ご質問やご不安などございましたら、お気軽に下記までご連絡頂ければと思います。

 

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Tokyo Consulting Firm Co., Ltd (ミャンマー)・ヤンゴン駐在員
西野由花(Nishino Yuka)

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