
皆さん、こんにちは!
東京コンサルティンググループ、ミャンマー拠点の渡辺 晃です!
いつもブログをお読みいただきありがとうございます。
さて、今回は「2025年版:ミャンマー労務①」についてお伝えします。
目次
【2025年版:ミャンマー労務①】
要約
- 2011年の労働組織法と2012年の労働紛争解決法が制度面の基盤ですが、2021年以降は労組活動が抑圧され、実務上の自由は大きく制限されています。
- 最低賃金は2018年の1日4,800MMKを土台に、2023〜2025年の段階的な日額手当の追加により、2025年時点の実質水準は7,800MMK/日になっています(従業員10名以上の事業場が対象)。
- 社会保障制度は2012年法に基づき整備済みで、事業主・被用者が拠出する仕組みが機能しています。
- 公表失業率は実態を捉えにくいため、就業率や賃金就業の比率など「雇用の質」を併せて確認する必要があります。
- 若年層の国外流出が続き、徴兵制の本格運用発表(2024年)以降は人材供給への影響がより顕著になっています。
- 外国人雇用は「技能不要業務は自国民に限定」が原則で、固定クォータは課されていない一方、MIC許可条件や人材育成計画の提出など案件ごとの運用が重視されています。
- 政情により統計の欠測や法令運用の地域差が存在するため、最新通知と現場実務の両面での確認が不可欠です。
労働力人口と労働構造
ミャンマーの人口構成はかつて若年層の比率が高い状態でしたが、現在は生産年齢人口の比率が高止まりし、労働供給の潜在力が引き続き大きい状況が続いています。就業率は一見持ち直しているものの、増加分の相当部分が非賃金就業(自営業や家族従業など)に偏る傾向があり、労働生産性や所得の質的改善につながりにくい点が課題です。さらに、タイなど周辺国への越境就労や移住が続き、2024年に発表された徴兵制の本格運用を契機に若年層の国外流出が加速したと見られます。その結果、国内の一部産業では採用と定着の難易度が高まり、賃金や福利厚生以外の動機付けやキャリア形成の提示がより重要になっています。
失業率と賃金水準
公表失業率は低位で推移する一方で、非公式部門や季節雇用が大きな比重を占めるため、統計だけでは実情を把握しづらい状況です。実務では就業率、賃金就業の比率、平均所定外労働の動向、インフレ下での実質賃金の推移など、複数の指標を併せて確認することが有効です。最低賃金は2018年改定の1日4,800MMK(8時間)をベースに、2023年以降の段階的な日額手当の追加により2025年時点で実質7,800MMK/日となっています(従業員10名以上の事業場が対象)。もっとも、為替や物価の変動が大きいため、名目賃金の引き上げが必ずしも実質購買力の改善に直結しない点には留意が必要です。賃金テーブルの見直しにあたっては、職務・技能と評価との連動、物価連動手当の有無、通勤・食事・住宅などの非金銭的給付の最適設計を合わせて検討することをおすすめします。
労働組合と労働争議
制度面では、2011年の労働組織法により組織化や登録の手続きが整備され、2012年の労働紛争解決法(2019年改正)によって調停・仲裁の枠組みが設けられました。しかし、2021年以降は独立系労組の活動が著しく制限され、国際労働基準に照らしても結社・団体交渉の自由が損なわれていると指摘されています。企業側としては、法令に沿った就業規則・懲戒手続・苦情処理メカニズムを文書化し、現場の通訳・翻訳を含めたコミュニケーションの透明性を高めることが、労使関係の安定と紛争の未然防止に有効です。
雇用慣行と労務管理
ミャンマーでは、賞与や祭礼時手当などの慣行的給付が広く見られますが、法定の義務ではありません。社会保障については2012年の社会保障法に基づく制度が施行されており、事業主と被用者が拠出する仕組みが整っています。もっとも、カバレッジや給付の実効性には地域差があるため、採用時の説明責任と加入・拠出の運用管理を丁寧に行う必要があります。安全衛生は工場法等の関連規制で求められる基準を満たすだけでなく、現場の教育、ヒヤリハットの見える化、設備更新の優先順位付けなど、日常の運用に落とし込むことが重要です。勤怠や残業の管理は、紙とデジタルの併用による二重記録や監査ログの保持など、証跡を重視した仕組みづくりが望まれます。
外国人の雇用義務・在留
外国人の雇用は原則として「技能を要しない業務は自国民に限定」ですが、専門職・管理職・コンサルタント等の職務では就労が可能です。なお、役職や人数に関する一律の上限制限は現在の法体系上は設けられておらず、職位や人数にかかわらず、要件を満たせばビザの取得・延長は可能です。
一方で、政府案件やMIC/SEZの枠組みで投資計画を当局に提出するケースに限り、計画上の人員数の報告が求められることがあり、当局との協議により個別条件が付される場合があります。
就労に当たっては、雇用契約(言語・条項)の明確化に加え、在留許可(Stay Permit)および再入国関連手続(MJ等)を適切に整え、更新スケジュールと申請経路を事前に設計しておくことが重要です。なお、マネジメント職以外の従業員については、ビザ延長時に雇用契約書を労務局(Labour Office)へ提出する必要があります。
②に続く
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