東京コンサルティングファーム
メキシコダイレクター
片瀬 陽平
いつもチェックして頂きありがとうございます。メキシコ駐在員の片瀬でございます。
今日は以前にも簡単に書いたことがあるPTUについて、再度詳細に記載します。
まずPTUについて簡単にご説明します。PTUとは従業員への利益の分配金をいい、メキシコでは国内で発生した税引前の利益の10%を従業員へ還元しなければならないと決められています。メキシコの法人税率は30%ですので10%のPTUを合計すると税率が40%となり、世界でも類をみないほどの高税率国となるのです。設立間もない企業等PTUを支払わなくても良い企業もありますが、基本的にメキシコの内国法人等は全てPTUを支払うことが必要となります。
メキシコでは、2012年12月の労働法の改正によりPTUにメスが入りました。具体的には、2012年12月前までは同資本で派遣会社を作り、直接的な雇用契約を無くすことによってPTUを回避することが可能でした。そのために多くの企業は派遣会社を利用したPTUの回避スキームを利用していました。そこへ労働法の改正です。2012年12月前までは直接的な雇用関係がない場合にはPTUを支払う必要が無かったのに、改正により実質的に雇用していると認められる場合にはPTUを支払うべきとされてしまったのです。
同資本での派遣会社を使ったスキームは実質的に雇用していると考えられるために、そのスキームを利用することは難しいと考えられます(アンパロ等により今後どうなるかは正直分かりませんが)。
では別資本での派遣会社を使ってPTUを回避することは可能なのかを今日は考えてみました。これが可能であれば、役員はPTUを支払う義務がないために日本からの駐在員は全て役員にして、現地で働いてもらう方たちは全て派遣会社から賄うというスキームを使うことができます。
まず、労働法127条にPTUの対象者が記載されているのですが、書き方が曖昧なためにこれだけを読むのであれば、別資本の派遣会社であってもPTUの対象となると考えた方が良いと思います。
その上で以下の部分を検討して本当に別会社であってもPTUを支払う必要があるのかを深く読み説いていきます。
【検討材料】
①当該条文の立法趣旨
②派遣社員の意義
③労働者保護
①当該条文の立法趣旨について
昨年の労働法改正の趣旨は、特段明記はされていませんが、派遣ダミー会社を利用した税逃れを取り締まるためにできたことは明確です。そのために客観的に税逃れであることが認められない場合には、立法趣旨からは派遣社員に対してPTUを支払わなかったとしても問題は無いと考えることもできます。
②派遣社員の意義について
次に派遣社員の意義について考えてみます。派遣社員とは、その他の一般的な社員と同一の職務であってはならずに、全体に従事させることは許されず、部分補完的な意味合いとされています。まぁ、凄く曖昧なのですが・・・。つまりこの派遣社員の意義を満たさなければそもそもが直接的な雇用関係があるとみなされるものと考えられてしまいます。
③労働者保護について
メキシコは労働者保護の観点が非常に強い国です。そのため労働者に関する法令における解釈において疑義が生じた場合(裁判等において解釈による判断となった場合)には、労働者保護の観点から労働者に最も有利な解釈がなされます。
以上の事から総合的に考えると上記の「日本からの駐在員は役員、現地の人員は派遣社員」によるPTUの回避は少し難しいものとも考えられます。(これを行うのであれば、派遣社員で賄うことのビジネス上の意義を明確にする必要があります。・・・まぁ、派遣でなければならないビジネス上の意義を作るのは凄くむずかしいですが。)
一部の派遣社員に対してPTUを支払うべきかについては、上記より保守的に考えるのであれば支払うべきであると考えますが、支払わない場合でも、労働者が不満を持たないようにすれば良いのかと思います。例えばPTUの原資外でボーナス等を支払うなどです。ただし派遣社員が不満を持って訴えを起こした場合には負ける可能性が往々にしてありますので注意が必要です。
ただ、未だPTUについてはグレイ部分が多く、一概にこうだとは言えない部分が多いのが実情です。メキシコは上記でお伝えしたとおり、労働者保護の観点が非常に強い国ですので、従業員を雇い、利益が出た後に、PTUの対策をすることはおそらくできません。そのため新規で進出を検討されている企業は事前にPTUについて確認し、せめてグレイ部分の白黒はっきりつくまでは何かしらの対策をする等は必要になると考えます。
PTUについては以上となりますが、皆さまには、ここで一つご案内があります。
【ご案内】
2月の一ヶ月間、新宿本社においてメキシコビジネスに関する無料相談会を開催しようと考えています。メキシコの情報を日本で取ることはなかなかに難しく、そのため進出の検討段階ではお金をかけてメキシコに渡り現地の情報を集めるしか無いのが現状です。
当無料相談会の意義は、「日本にいながら現地の情報を集める」ことであり、お金をかけずに現地の情報を集めることができます。是非お気軽にお問い合わせ頂ければと思います。
<無料相談会>
日時 :2014年2月3日(月) ~2014年2月28日(金)
会場 :〒160-0022 東京都新宿区新宿2-5-3 AMビル7F
相談料 :無料
担当コンサルタント :佐々木 亮介(USCPA)
時間 :1時間~2時間
申込方法:電話・FAXもしくは問い合わせフォームにて、ご予約を受け付けします。
TEL/03-5369-2930 FAX/03-5369-2931
・メキシコ無料相談会の件とお伝えください
・メキシコ無料相談会予約希望とご明記ください。
【今週の1枚】
今回はアグアスカリエンテス空港の写真を一枚。
DFからアグアスカリエンテスまでは流石に飛行機で行きます。所要時間は1時間程度なので東京から大阪ぐらいの距離ですね。最近はメキシコでも格安航空会社等が出てきており、選ぶ航空会社によってはチケット代に結構な差が出てしまいますのでご注意ください。