既にご存知の方も多いとは思いますが、2019年度の一般最低賃金は対前年比16.2%アップの102.68メキシコペソ(MXN)/日、また、北部国境地域に限っては、対前年比100%アップ、つまり2倍の176.72MXN/日となりました。これは、本年年1月1日より施行されいます。
今回の上昇率は過去の推移をみてもかなりの高い上昇率となっています。
さて、このメキシコの最低賃金ですが、どのように決められ、そしてどのような影響があるのかを改めて解説していこうと思います。
今回の最低賃金の改正は、毎年12月上旬から中旬にかけて翌年度適用される最低賃金の額が、最全国最低賃金委員会(CONASAMI :El Consejo de Representantes de la Comisión Nacional de los Salarios Mínimos)より発表されます。最低値慇懃は、インフレ率を一つの指標として決定されているようですが、インフレ率にプラス2~4%程されているのがここ数年の傾向でした。
しかし、2019年度の最低賃金は、インフレ率にプラス10%を超える上昇率を見せており、かなりの高い上昇率を見せています。
$:メキシコペソ
全域 (左記エリアを除く) |
北部国境付近 | 上昇率 | インフレ率 | |
(対前年:全域) | (対前年) | |||
2015年 | $70.1 | ― | 4.18% | 2.13% |
2016年 | $73.04 | ― | 4.19% | 3.36% |
2017年 | $80.04 | ― | 9.58% | 6.77% |
2018年 | $88.36 | ― | 10.40% | 4.83% |
2019年 | $102.68 | $176.72 | 16.20% | ― |
さて、この最低賃金ですが、1日当たりの給与額を表しているため、一般の企業勤務者の中でこの最低賃金の金額で働いている人は、ほとんどいないでしょう。そのため、最低賃金が上がったとしても、現在の従業員の給与額を変更しなければならないということにはなりません。つまり、この最低賃金そのものが企業に直接的に影響することは無いと考えられます。
一方で、最低賃金の上昇は、UMAと言われる指標にも影響を与えるため、間接的に企業のコストアップにつながります。
●UMAとは
UMA(Unidad de Media y Actualización)は、最低賃金を基に計算されている数値であり、社会保険料やペナルティ等を算定する際に使われています。
2019年のUMAは84.49MXN/日であり、前年度より4.8%の上昇がなされました。
$:メキシコペソ
日 | 月 | 年 | |
2016年 | $ 73.04 | $ 2,220.42 | $ 26,645.04 |
2017年 | $ 75.49 | $ 2,294.90 | $ 27,538.80 |
2018年 | $ 80.60 | $ 2,450.24 | $ 29,402.88 |
2019年 | $ 84.49 | $ 2,568.50 | $ 30,822.00 |
一概には言えませんが、この上昇分が社会保険料にも影響を与えているため、人件費トータルで見れば、企業の負担額は増えることになります。
メキシコでは現在支給している給与額が最低賃金を超えてさえいれば、昇給そのものを行わなくても違法とはなりません。しかし、インフレが起こっている状況下において、昇給をさせないということは実質減給と同じになるため、インフレ率や最低賃金の上昇率を考慮して昇給をさせている企業が多く存在します。
その際、ただ単に給与の上昇だけが人件費を上昇させるのではなく、それに付随するコスト(社会保険料等)も考える必要があります。
株式会社東京コンサルティングファーム メキシコ拠点
黒岩洋一
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