皆さん、こんにちは、東京コンサルティンググループメキシコ拠点の袖山です。

いつもブログをお読みいただきありがとうございます。

さて、今回「【メキシコ】T-MEC(USMCA)見直し第2回交渉の最新動向|関税リスクと日系企業が今すぐ取るべき実務対応 」についてお話していこうと思います。

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・メキシコ関連セミナー[/su_box]「T-MEC(USMCA)はいったいどうなるのか——自社の輸出ビジネスは大丈夫か?」

メキシコに進出している日系企業の皆さんの中で、こうした不安を抱えている方は少なくないと思います。

今まさに、その答えに直結する交渉が動いています。

2026年6月16〜17日、T-MEC(日本語でUSMCAとも呼ばれる米墨加協定)の第2回見直し交渉が、ワシントンD.C.で開催されました。

7月1日の正式評価期限まで残り2週間を切った今、この交渉の行方が、メキシコで事業を営む日系企業のサプライチェーン・関税コスト・輸出ビジネスの根幹を左右します。

本記事では、経済省(SE)およびUSTR(米国通商代表部)の公式発表を中心に、交渉の現在地・影響ポイント・実務対応を解説します。

  • 交渉は長期化の公算:7月1日の期限で即時失効はせず、2027年以降も交渉が継続する可能性(年次見直し)が高い。
  • 最大のリスクは自動車と関税:米国が主張する自動車原産地規則(米国産50%)の引き上げや、鉄鋼・アルミへの50%追加関税の動向が焦点。
  • 今すぐ取るべき対応:合意の有無に関わらず、自社製品の北米地域付加価値(RV)の再計算やFEOC(中国系部品)リスクの棚卸しが急務。

T-MECは、2020年に発効した北米3カ国の貿易協定です。協定の条文(第34条7項)には、発効から6年後の2026年7月1日に「合同レビュー(見直し)」を行うことが明記されています。

ここで重要なのは、「7月1日がT-MEC終了日ではない」という点です。

米墨加3カ国は、7月1日時点の合意内容によって、以下のいずれかの道を選択します。

シナリオ

内容

次の見直し

① 16年延長

現行T-MECを2042年まで延長

2032年

② 修正合意

条文を一部改訂して継続

協定による

③ 年次見直し

合意に至らず年1回の見直しに移行、2036年に失効

毎年

(出所:AmCham Mexico「T-MEC見直しプロセス解説」、T-MEC協定条文第34.7条)

第2回交渉の直前にあたる6月16日、格付け機関ムーディーズは「T-MEC交渉が2027年まで延長する可能性がある」と指摘しました。

同社は、係争中の案件・米国側の政治的な課題・カナダが欠席した二国間交渉の構造が複雑化要因と分析しています。

一方、米国通商代表部(USTR)のジェイミソン・グリア代表は「7月1日までに全問題を解決することはおそらくないだろう」と発言。交渉は7月以降も継続する見通しです。

合意なき即時失効というシナリオは極めて低い。日系企業にとって重要なのは「今どの論点が焦点か」を把握し、自社サプライチェーンへの影響を先読みすることです。

ラウンド

日程

場所

主な議題

第1回

2026年5月27〜29日(完了)

メキシコシティ(経済省)

自動車原産地規則・鉄鋼・アルミ・経済安全保障

第2回

2026年6月16〜17日(進行中)

ワシントンD.C.

農業・公正競争条件・原産地規則継続

第3回

2026年7月20日の週(予定)

メキシコシティ

積み残し課題の最終調整・合意文書作成

第1回交渉を受けて、経済省のマルセロ・エブラール大臣は「第1ラウンドはポジティブな成果で終わった」と評価。

「T-MECの強みは、北米を世界最強の製造プラットフォームにした付加価値チェーンの統合にある」と主張し、地域全体での原産地規則アプローチを強く訴えました。

最も紛糾しているのが自動車セクターの原産地規則です。

米国側は「米国製コンテンツの比率を50%以上に引き上げたい」と主張。これに対し、エブラール大臣は「50%要件は持続不可能だ」と明確に反発しており、地域全体(米・墨・加)での含有率計算を維持する立場を崩していません。

この論点が日系企業にとって重要な理由:メキシコで製造する日系自動車メーカー・部品サプライヤーは、現行の「北米地域」ベースの原産地規則のもとで対米輸出を行っています。

米国産コンテンツ比率が単独で引き上げられれば、対米輸出時のT-MEC特恵関税の適用が困難になるリスクがあります。

実際、第1回交渉後にはゼネラル・モーターズ(GM)がコアウイラ州ラモス・アリスペ工場で2027年からChevrolet AveoとGrooveの生産を開始する計画(10億ドル投資)を発表しており、中国からの輸入を置き換える動きが加速しています。

日系サプライヤーもこうした動向を参考に、部品の北米内製化を検討する局面が来ています。

現在、米国はメキシコからの鉄鋼・アルミに対して50%のセクション232関税を課しており、メキシコの鉄鋼輸出は前年比36.6%減という深刻な影響が出ています。

T-MEC交渉では、この関税の撤廃または緩和が議題の1つとなっています。

鉄鋼・アルミを主要材料とする製造業(自動車・電機・金属加工)の日系企業は、資材調達コストへの影響を注視してください。

第2回交渉から新たに「農業」と「公正競争条件(level playing field)」が議題に加わりました。

農業関連(食品・飼料・資材調達)の日系企業は、この論点の行方に注目が必要です。

ムーディーズは第2回交渉開始直前の6月16日に分析を発表し、「T-MEC見直し交渉は2027年まで長期化する可能性が高い」と指摘しました。

その場合、メキシコは「年次見直し(シナリオ③)」に移行しながら、交渉を継続することになります。

  • 現在の対米輸出製品の原産地証明書(フォームA・T-MEC原産地申告書)を最新化しているか
  • 自社製品の北米地域付加価値(RVC)計算を最新の材料費・製造費で見直しているか
  • 中国系部品・材料を使用している場合、FEOC(懸念対象外国企業)規定の適用リスクを評価しているか
  • 鉄鋼・アルミの調達先はメキシコ国内か北米内か確認し、50%関税のコスト影響額を試算しているか
  • GM等の大手OEMが進める北米内製化の動きが、自社の受注・サプライ機会にどう影響するかシミュレーションしているか
  • 対米輸出契約に為替・関税変動条項(price adjustment clause)が含まれているか
  • T-MEC特恵関税が適用できなくなった場合のWTO最恵国待遇(MFN)税率での影響額を試算しているか

T-MEC見直し第2回交渉が今週ワシントンで進行しています。7月1日の正式評価期限、そして7月20日の週に予定される第3回(最終)交渉に向けて、今月中が日系企業として対応準備を整える最後のタイミングです。

合意の有無にかかわらず、「T-MECの枠組み自体が今後数年で変化する」という前提で、原産地規則・調達戦略・契約条件の点検を進めることをお勧めします。

自社への具体的な影響分析・T-MEC対応のご相談は、ぜひお気軽に東京コンサルティンググループ メキシコ拠点までお問い合わせください。

株式会社東京コンサルティングファーム メキシコ拠点 袖山