皆さん、こんにちは。
東京コンサルティンググループ メキシコ拠点の袖山です。
「アジアのサプライヤーから部品を調達しているが、2026年から関税が上がったと聞いた。
自社の品目は対象なのか?IMEXを使えば免れるのか?」
メキシコに赴任されて間もない担当者様や、調達・購買部門の方から、最近こういったご質
問を多くいただきます。
結論からお伝えしますと、2026年1月1日より、メキシコはTLC(自由貿易協定)非締結国
からの輸入品1,463品目に対して、5〜50%の新関税を正式に適用開始しています。
本記事では、DOF(連邦官報)・Secretaría de Economía(経済省)・SHCPの公式情報の
みを根拠として、以下の点を解説します。
1. 今回のLIGIE改正とは何か
2. 対象国・対象品目の具体例
3. IMMEX・PROSECによる緩和策の活用可否
4. 日系企業が今すぐ着手すべき実務アクション
5. よくある落とし穴
今回のLIGIE改正とは何か
LIGIE(Ley de los Impuestos Generales de Importación y de Exportación:輸出入一般関税
法)は、メキシコに輸入されるあらゆる品目の関税率を定めた法律です。
今回の改正は、シェインバウム大統領の署名のもと2025年12月29日にDOFへ公示され、移
行期間なしに2026年1月1日より即日発効しています。
最大のポイントは「メキシコとTLCを締結していない国由来の輸入品」を対象とした点です。
逆に言えば、米国・カナダ(T-MEC)や日本(JMEPA:日墨EPA)など、TLC締結国か
らの正規輸入品は、原産地証明を適切に提出すれば新関税の適用外となります。
対象国・対象品目の具体例
主な対象国
中国・インド・韓国・ベトナム・タイ・インドネシア・ブラジル・ロシアなどが挙げられま
す。これらの国とメキシコの間にはTLCが存在しないため、対象品目であれば一律で新関税
が課されます。
業種別の主な対象品目と関税率(DOF 2025年12月29日公示より)
業種・製品カテゴリー 主な対象品目 新関税率(目安)
自動車・自動車部品 車体部品・ヘッドライト・バンパー・受信機 25〜50%
繊維・アパレル 生地・縫製品・付属品 15〜35%
電子・電機 半導体・集積回路・液晶画面・電子部品 10〜25%
プラスチック 樹脂・容器・フィルム・瓶 10〜35%
鉄鋼・アルミ 鋼管・板材・アルミ押出材 15〜35%
家電・白物家電 冷蔵庫部品・エアコン部品 15〜35%
玩具・家具 人形・ブロック・木製・金属製家具 25〜35%
履物・革製品 革靴・バッグ・ベルト 20〜35%
ガラス・紙・化粧品 瓶・包装紙・クリーム類 10〜25%
なお、本措置は過去の大統領令による時限措置とは異なり、法律改正による恒久措置である
ため有効期限は設けられていません。「一時的な措置だろう」と楽観視することは危険であ
り、中長期的な調達戦略の抜本的な見直しが不可欠です。
IMMEX・PROSECによる緩和策の活用可否
✅ IMMEX(一時輸入プログラム)
輸出向け製品の製造に使用する部品・素材の一時輸入については、引き続きIGI(一般輸入
税)の留保(diferimiento)が認められます。
ただし以下の場合は適用外となります。
● 輸入品を国内市場向けに転用した場合(importación definitiva)
● IMMEX企業から非IMMEX企業へのvirtual transfer(V5):移転時点で即時課税
● 繊維・アパレル品目:Secretaría de Economíaの個別認可が新たに必要
✅ PROSEC(産業別促進プログラム)
自動車・電機・繊維等の特定産業に登録している製造業者は、0〜5%の優遇関税率が維持さ
れます。ただし、PROSECの適用は「製造業者」に限定されており、商社・販売会社は対
象外です。
⚠️ TLC原産地証明の落とし穴
日本からの輸入品でJMEPA(日墨EPA)を適用する場合、原産地証明書(Certificado de
Origen)が正確に添付され、通関申告書(pedimento)上に適切な識別子(TL)が記載され
ていないと、TLC適用外として新税率が課せられるリスクがあります。 日本からの輸入で
あっても、品目ごとの原産地要件(使用部材の調達先を含む)を個別に確認することが不可
欠です。
日系企業が今すぐ着手すべき実務アクション
アクション① 自社調達リストのTIGIEコード確認
購買部門が使用している全品目のTIGIE(関税コード)について、今回の改正で影響を受け
るかどうかを、DOF公示のLIGIEリストと照合してください。1,463品目のどれに該当する
かを把握することが出発点です。
アクション② 原産地証明の有効性確認
TLC適用を申告している品目について、サプライヤーから取得している原産地証明書が最新
かつ要件を満たしているかを確認してください。中間素材にアジア産が混在する場合は、原
産地判定が複雑になります。
アクション③ IMMEXプログラム内の転用リスクの棚卸し
一時輸入品のうち、国内向けに転用された実績がないかを確認してください。virtual
transferを行う場合の課税タイミングを、調達・財務チームで事前に共有することが重要で
す。
アクション④ コスト影響のシミュレーションと対応策の検討
現行の調達コストに対する関税上昇分を品目別に試算し、以下の3つの選択肢を比較・検討
してください。
● サプライヤーへの価格転嫁交渉
● メキシコ国内・北米サプライヤーへの切り替え
● 製品売価への転嫁
日系企業が陥りやすい5つのポイント
ポイント① 「日本からの輸入なら大丈夫」と思い込む
JMEPAが存在しても、原産地証明書の不備や、製品に使用されている部材の調達先が第三
国(アジア等)の場合、EPA適用が認められないケースがあります。品目ごとの個別確認が
必要です。
ポイント② IMMEX企業だから全て免除と思い込む
IMMEX適用は「輸出向けの一時輸入」に限定されます。国内販売向けに転用した時点で課
税義務が発生します。また、繊維品目については個別認可が必要になりました。
ポイント③ 関税コード(TIGIE)の分類を過去のまま流用する
今回の改正で新たに課税対象となった品目があります。以前は税率0%だった品目がコスト
に影響するケースもあるため、既存品目であっても最新リストとの照合が必要です。
ポイント④ 「時限措置だから」と対策を先送りにする
2026年12月31日が期限とされていますが、延長・恒久化の可能性があります。また、年内
の調達コスト増加への対応を先送りにすると、2026年中の損益に直接影響します。
ポイント⑤ 通関申告書(pedimento)の記載不備
TLC適用の識別子(TL)の記載漏れ・誤記は、本来適用されるべき優遇税率が認められな
い原因となります。通関エージェントとの連携・確認を怠らないようにしてください。
まとめ
メキシコの2026年LIGIE改正により、TLC非締結国(中国・インド・韓国等)からの輸入品
1,463品目に5〜50%の新関税が課されています。
今一度確認すべきこと(チェックリスト):
● [ ] 自社調達品目のTIGIEコードを最新LIGIEリストと照合したか
● [ ] 原産地証明書がサプライヤーから正確に取得・保管されているか
● [ ] IMEXプログラム内の一時輸入品の転用リスクを確認したか
● [ ] コスト試算を行い、経営層・本社へ報告したか
● [ ] 通関申告書(pedimento)上のTLC識別子(TL)の記載を確認したか
関税の誤申告や分類ミスは、SAT(税務庁)による遡及課税・罰則の対象となります。
自社品目への影響調査や対応戦略の立案について、
お気軽に東京コンサルティンググループ メキシコ拠点にご相談ください。
株式会社東京コンサルティンググループ メキシコ拠点 袖山