みなし解雇に関する判例

労務

お世話になっております。東京コンサルティングファームの藤井でございます。

本日は、労働法に関する判例のうち、みなし解雇に関する判例をご紹介いたします。こちらの判例では、従業員側の主張が認められず、会社側の主張が認められました。

 

P氏は、2006年1月1日、A社のManufacturing Logistic Work部門に異動。同年12月1日、会社は、在庫の数に矛盾があると発見した。P氏とA社での話し合いの上、無断で在庫がなくなることがないよう、P氏は、別部門の在庫を監視することに合意した。同年12月29日、より在庫の監視がしやすいようにというP氏からの推薦の通り、同氏の机はその部門へ移動された。

 

<従業員の主張>

机の移動に伴い、うつ、寝不足、食欲減少という症状が現れたため、2007年5月7日、退職願を提出するとともに、これはみなし解雇だとして訴えた。

 

<会社の主張>

机は移動したが、仕事の内容は変更しなかった。P氏から、仕事内容を変えた理由を説明するようレターを受けたが、仕事内容自体にはなんら変化がないということは説明した。また、2007年2月1日に賞与を支払った後はじめて、P氏の症状について知らされ、2月12日、机の位置を元に戻した。

 

<法では>

2003年の判例では、みなし解雇と判断できる要件について、以下のように述べられている。

(a) 雇用主による契約違反行為がある場合

(b) その違反は、被雇用者の退職が正当化されるほど、重大なものでなければならない

(c) その他の関係の無い理由ではなく、その違反行為に応じる形で退職しなければならない

(d) 雇用主による違反に対して、すぐに退職せずに居座り続けてはいけない。違反を放棄して、雇用契約の変更に同意したものとみなされる。

以上の要件を全て満たしていない状態で辞職した場合は、みなし解雇とは認められない。

また、みなし解雇だと主張する場合は、雇用主による違反行為があったことを被雇用者(主張者)が証明する責任があるとされた。

 

<判決と裁判所の見解>

P氏は会社が契約違反行為を犯したことを証明できなかったものとし、みなし退職とは認めないものとする。主な理由は、以下の通りである。

P氏は、会社が契約違反行為をしたという証明に失敗した。

机を動かすよう提案したのはP氏であり、また、机を動かした理由も正当なものである。また、賞与を受け取る前にすでに移動していたにもかかわらず、そのときは訴えず、賞与を受け取った後訴えている。本当に机の移動が納得できず根本的な契約違反だと判断しているのならば、期間をあけずに訴えを起こすべきだった。このような状況から鑑みるに、P氏は机の移動に同意し、根本的な契約違反だとは判断していないことが見受けられる。

 

<判決のポイント>

会社側は、従業員からのレターに真摯に対応したことが、今回の判例で有利に働いたポイントとみられます。従業員としては、会社側の契約違反があると感じた場合には、退職届を提出するなど、すぐに行動に移さなくてはならない、という点に注意する必要がございます。

 

 

Tokyo Consulting Firm Sdn. Bhd.

Managing Director

藤井 大輔 (ふじい だいすけ)

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