日本と中国の不正の違い

 こんにちは、中国・上海の田中勇です。本日は、日本と中国の不正の違いについてお話します。

 企業活動をする上で、従業員による不正に対するコントロールは非常に重要です。特に海外での不正は、経営者にとって見えにくいものとなるため、注意が必要です。日本では不正対策について万全の整備をしている企業が多いです。一方、中国ではこれから整備する予定の企業、中には整備する認識がない企業も散見されます。これから中国で不正に対するコントロールを整備するのであれば、まず日本と中国の不正の違いを認識する必要があります。日本と中国の不正の違いは、以下の4つに集約することができます。

①言語
②社内関係者の倫理
③法律上の責任追及
④匿名の告発
 
 ①言語について、多く場合、不正の証拠となる書類やデータは中国語または英語です。さらに、最も不正発見に有効な情報は、帳簿等の会計データです。よって、不正をコントロールするには、一般的な中国語・英語の言語能力のみならず、中国語・英語の専門用語を理解できる能力も必要になります。また、日本人担当者にとって理解できない地方の中国語を使用されることで、中国人従業員によって不正発見の妨げや遅延を図られることもあります。中国語については、普通語以外に、上海語・広東語等多くの地方の中国語が存在します。普通語の中国語を理解できる担当者だとしても、地方の中国語によって会話が行われた場合、その日本人担当者は全貌を理解できないことがあります。

 ②社内関係者の倫理について、日本に比べ中国人は不正に対する倫理が低い傾向があります。その理由は、ビジネス習慣、格差、成功に対する圧力等が関連しています。ビジネス習慣について、中国のいくつかの法規が、厳しく運用されていないという実態があります。法規を実務に反映させることが難しいことあること、厳しくチェックできる体制が整えられていないこと等が原因と考えられます。格差とは、駐在員と現地採用中国人との格差を指します。駐在員と中国人の給与の格差は大きく、多くの現地採用中国人が不公平さを感じます。その結果、不正により均衡を保とうする中国人が出てくるのです。成功に対する圧力について、現在の新社会人の多くが、お金持ちになるべきという強いプレッシャーを感じています。1978年、小平による「改革開放」をきっかけに、資本主義の考え方が中国に浸透し始めました。その後、一攫千金で成功する者があらわれ、お金持ちが世間の注目を浴びるようになりました。中国人の中には、成功者になろうというプレッシャーが強いために、リスクを負ってでも不正によって成功者になろうと考える者が出てくるのです。特に、1980年代生まれの若い社会人は、成功者にならなければならいという強いプレッシャーを受けていると考えられます。実際、不正事件の多くの犯人が30歳以下であるという中国の調査データもあります。

 次回、③法律上の責任追及、④匿名の告発についてお話します。

以上

関連記事

ページ上部へ戻る