企業買収における政府による認可手順①

外資は、新規外商投資企業の設立および新しい資本や設備の導入とは別に、株式買収または資産買収のいずれかの方法で設立会社の持分を購入することができます。

間接買収の場合
オフショアで行われる間接買収は株式譲渡のみとなります。間接買収がオフショアで行われると、中国政府は一般的に当該取引に対する管轄権を有しないため、独禁法関連を除き、中国側の承認を求められることはほとんどありません。

直接買収の場合
●一般的な流れ
現行中国法の下では、既存の外商投資企業の登録資本の移転を伴う取引は、新規外商投資企業の設立時と同様に、認可および登録が必要となります。商務部・地方公共機関が、国内企業および外商投資企業への外国投資に係る取引を審査し認可を与える権限を有します。国家工商行政管理局およびその地方機関(工商行政管理局)は、提案された取引が適切な審査機関により承認された後、登録手続きを行います。

●審査機関
直接株式譲渡の審査は、新規外商投資企業の設立の場合と同様です。一般的に、認可申請は、対象外商投資企業を初めに認可した機関に提出します。対象企業が外商投資企業でない場合、総投資額に応じて、申請は商務部あるいは省レベルの国家経済貿易委員会に行います。また、対象企業が「主要業種」である時、国家経済安全保障に影響を与える可能性がある時、「著名な商標」、「著名な中国ブランド」の支配に変化を生じるおそれがある時は、買収当事者は商務部へ報告しなければなりません。これに違反する場合、商務部及び関連政府部門は、各当事者に買収の中止、または国家経済保障に悪影響を及ぼさないように変更を求めることができます。
中国の法人または自然人により支配されるオフショア企業、または中国の法人もしくは自然人によって設立されたオフショア企業が、中国関連企業を買収するときも、商務部の認可を要します。また、買収当事者は、対象企業、購入者及び売主間で提携が行われているかを申告する義務を負います。

●資産評価
一般に、対象企業が既存の外商投資企業でない場合、各当事者は株式譲渡の前に株式評価を受けなければなりません。評価結果より買収価格が明らかに低い場合は買収が禁止されます。
買収が国有株の移転に係る場合、対象企業が既存の外商投資企業であるか否かに関わらず、売主は資産評価を行うべきであり、有資格の資産評価機関を任命しなければなりません。評価結果は、財務当局によって承認または登録された評価結果を買収金額の基礎としなければなりません。一般に、実際の買収価格と評価額の差が10%を超えることはできません。

●必須書類
株式譲渡の当事者は、株式譲渡契約または株式引受契約を締結します。株式譲渡または引受は、中国法に準拠しなければならず、審査機関による審査を受けなければなりません。
対象企業の定款は、必要に応じてその修正を行う必要があります。尚、対象企業が合弁企業および複数の投資者を有する独資企業についてはこれに加えて合弁事業契約書または株主同意書の修正が必要です。更に、対象企業が買収後、合弁企業または複数の投資者を有する独資企業になる場合は、新たに合弁事業契約書または株主同意書が必要となります。これらの修正または新たな会社関連文書は、株式譲渡契約の承認と同時に、審査機関の審査・承認を受ける必要があります。
その他の必要書類としては、一般に、対象企業の取締役の取締役会全員一致の決議書、対象企業の既存パートナーによる同意書および株式買権放棄書、国内有限責任公司を買収する場合には株主による全会一致の決議書が必要となります。審査機関はまた、当事者に対し、別途審査に必要な書類の提出を求めることができます。例えば、購入者の銀行資本信用証明書や株式譲渡承認決議が記載された取締役会決議書などがあります。
審査機関に提出する文書は全て中国語で書かれたものでなければなりません。中国語以外の言語の文書を提出したとしても、政府担当者は当該文書の検査を受け付けないので、認可プロセスが遅れることが予想されます。文書の公証、公認された翻訳者による翻訳の要否は、地方の慣行によるところが多いです。

●認可手順及びタイミング
必要書類を受領後、審査機関は中国語で書かれた書類を精査し、内容が不当と判断されれば変更を求められることがあります。当事者は、変更要請に異議があれば、審査機関に協議を申し入れる事が出来ます。規模、場所、認可レベル、業種、複雑性、および取引が与える影響の程度等の多様な要因が、審査機関での判断に影響を及ぼします

●国有株に関する特別手続き
外国投資者が国有株(金融機関や上場企業への国有株を除く)を購入することを計画しており、その結果、対象企業が外商投資企業となる場合、売主は下記の特別な手続きを経なければなりません。また、いかなる国有株(金融企業や上場企業への国有株を除く)の移転も、関連法令で他に定めがない限り、中国内の取引所を通じて行わなければなりません。趣旨は、取引の透明性を高め、公務員により実際価格よりはるかに安い価格で不正に国有財産が売却されることによって生じる国有財産の損失を食い止めることです。更に売主は取引所を通じて売却する株式の広告を行わなければなりません。公告期間中に購入希望者が複数現れた場合は、当該株式は競売または入札方式で売却されます。

●登録手順
対象企業は、買収の認可を受け、当該買収により変更が必要となる登録事項を修正するために、管轄地域の工商行政管理局に必要書類を提出します。

中国現地法人駐在員 高橋斉志

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