中国「産業・サプライチェーン安全規定」への対応と日系企業のリスク対策

皆さん、こんにちは!
東京コンサルティンググループ中国拠点の小林 祐介です!

いつもブログをお読みいただきありがとうございます。

さて、今回は「中国、産業・サプライチェーン安全規定への対応と日系企業のリスク対策」についてお話していこうと思います。

 

中国に関する基礎知識が知りたい方は、こちらから▼
・中国の基礎知識
タイに関するセミナーに参加したい方は、こちらから▼
・中国関連セミナー

 


【中国「産業・サプライチェーン安全規定」への対応と日系企業のリスク対策】

産業・サプライチェーン安全規定とは?最新公告の概要はどうなっているのか?

【結論】 産業・サプライチェーン安全規定とは、中国政府が重要産業の供給網の安定と国家安全を守るため、2026年3月31日に施行した包括的な行政法規である。本規定は、中国のサプライチェーンを阻害する外国企業に対する調査権限や強力な制裁措置を明確化している。これに至る政策的背景として、2025年に発出された輸出管理や関税措置に関する各種公告(2025年第7号や第20号等)からの法的な連続性と管理強化のステップが見て取れる。

 産業チェーン・サプライチェーンの安全に関する国務院の規定とは、国家安全法や対外貿易法等を根拠とし、中国の産業供給網の強靭性向上と外部リスク排除を目的として制定された行政法規である。2026年3月31日に国務院令第834号として公布され、即日施行された。全18条からなる本規定は、これまで個別の法令や公告で散発的に対応されてきたサプライチェーン保護の仕組みを一本化し、国家安全保障の観点から強力な執行権限を当局に付与している。

 中国政府は2025年を通じて、サプライチェーン管理や対抗措置に関する布石を打ってきた。例えば、商務部や税関総署等が発出した輸出管理関連の公告や、税委会公告2025年第7号(米国の追加関税に対する対抗措置の停止・調整等に関する通知)、あるいは同年秋の特定品目に関する輸出管理公告(第20号等)など、重要物資の供給と輸出入を戦略的にコントロールする姿勢を強めていた。今回の新規定は、こうした個別の品目管理から一歩進み、サプライチェーン全体を法的に防衛するための基本骨格を完成させた形となる。

 本規定の核心は、外国の政府、組織、または個人が正常な市場取引の原則に違反し、中国企業との取引を不当に中断したり差別的措置を講じたりした場合の対抗措置にある。サプライチェーン安全調査とは、正常な市場取引原則に反して中国の産業供給網に脅威を与える行為に対し、国務院の担当部門が実施する公式な行政調査手続きである。この調査の結果、違法性が認定された対象者に対しては、中国関連の輸出入活動の禁止・制限、中国国内への投資制限、さらにはデータや個人情報の国外移転の禁止といった厳しい処分が下される。

 

日系ビジネスへの具体的な影響とは?注目すべき業界動向やコンプライアンス上のリスクはどこにあるのか?

【結論】 本規定の施行により、日系企業は現地拠点だけでなくグローバルな調達方針全体が中国の安全保障審査の対象となるリスクに直面する。特に半導体や自動車部品などのハイテク製造業において影響が顕著であり、取引先変更に伴う一時的な資金効率の悪化やサプライチェーン再構築のコストが増大する。コンプライアンス違反と認定された場合、中国関連の輸出入禁止やデータ越境移転の制限といった事業継続を揺るがす制裁を受ける可能性がある。

 本規定が実務に及ぼす最大の影響は、親会社が決定したグローバルな方針が原因で、中国現地法人が不測の法的リスクに巻き込まれる点にある。例えば、他国の輸出管理法令(米国の規制など)への対応として中国企業への部品供給を停止した場合、中国側からは「正常な市場取引原則に反する不当な取引中断」とみなされ、本規定に基づく調査対象となるリスクが生じる。域外適用とは、自国領域外で行われた行為に対しても自国の法律を適用し管轄権を行使する法的メカニズムである。本規定は実質的な域外適用の性質を帯びており、日本本社の意思決定が直接的に問われる構造となっている。

 業種別に見ると、半導体製造装置、電子部品、自動車サプライチェーン、先端材料などの分野で緊張が高まっている。こうした業界では、急な調達先の変更や供給停止が発生しやすく、代替サプライヤーの選定や品質検証に多大な時間と費用を要する。結果として、棚卸資産の滞留や運転資金の固定化を招き、企業の資金効率を著しく悪化させる。キャッシュフローの観点からは、予期せぬ取引停止による売上債権の回収不能リスクや、違約金請求による偶発債務の発生に最大限の警戒が必要となる。

 さらに、コンプライアンス上の制裁措置にはデータ越境移転の制限が含まれている点も見逃せない。データ越境移転制限とは、中国国内で収集・生成された業務データや個人情報を国外のサーバーや親会社へ送信することを法的に禁じる措置である。万が一制裁対象となれば、現地法人から日本本社への財務報告や人事データの共有が即座に遮断され、グループ全体の内部統制や連結決算業務が機能不全に陥る危険性がある。

 

日系企業が直ちに取るべき対応とは?実務的な推奨アクションをどのように進めるのか?

【結論】 日系企業が取るべき対応は、自社のサプライチェーンに潜む中国依存度と取引停止リスクを可視化し、有事の調達代替案を策定することである。また、本社主導のグローバル方針が中国現地の法令に抵触しないよう、契約書の不可抗力条項や解除条項を見直す必要がある。中国拠点と本社間での迅速な情報共有体制の構築が、突然の調査や制裁を回避するための鍵となる。

日系企業が直ちに取るべき実務的な推奨アクションは、主に以下の3ステップです。

1.包括的なサプライチェーン・デューディリジェンスの実施

 実務的な推奨アクションの第一歩は、包括的なサプライチェーン・デューディリジェンスの実施である。自社が調達する原材料や部品、あるいは自社の販売先に関して、どの取引が中国の「安全規定」のトリガーになり得るかを洗い出す必要がある。特に、第三国の輸出管理規制と中国の安全規定の板挟みになるリスクが高い取引については、早期に法的なリスクアセスメントを実施し、供給継続の可否や代替ルートの確保を検討しなければならない。

2.取引基本契約書・供給契約書の条文見直し 

 次に、既存の取引基本契約書や供給契約書の条文見直しが急務となる。他国の法令遵守による取引停止が債務不履行とみなされないよう、契約書の不可抗力条項(コントロール不能な事象による免責事項)を見直すことが重要である。他国の法令遵守を理由とした取引停止が中国側で債務不履行や違法行為と判断されないよう、契約解除の要件や不可抗力の定義を明確に再定義し、法的衝突の緩衝材を設けておくことが望ましい。

3.社内コンプライアンス体制・エスカレーションフローの構築 

 さらに、社内のコンプライアンス体制強化と迅速なエスカレーションフローの構築が求められる。中国の業界団体や取引先から不審な問い合わせや供給継続に関する誓約書の提出を求められた場合、現地法人の独断で署名したり拒否したりすることは極めて危険である。中国EU商会が指摘するように、本規定の運用ガイドラインには依然として不透明な部分が残されている。そのため、本社法務部門および現地の外部専門家を交えた対策チームを組成し、当局の動向を注視しながら慎重に方針を決定する体制を整えることが肝要である。

 

まとめ:産業・サプライチェーン安全規定へ確実に対応するためのアプローチとは?

【結論】 本規定は単なる理念法ではなく、中国当局に強力な執行権限を与える実務的な規制である。早期のサプライチェーン監査と社内規程の改定が、事業継続と健全なキャッシュフローを守るための必須条件となる。

 2026年3月に施行された「産業チェーン・サプライチェーンの安全に関する国務院の規定」は、日系企業に対してこれまでにない高度な経営判断を迫るものである。米中対立をはじめとする複雑な国際情勢の中、単一の法令だけでなく各国の法規制が交錯するリスクを俯瞰で捉えなければならない。対応が遅れれば、突然の調査介入や多額の損失を被るリスクが高まる。

 東京コンサルティンググループでは、中国現地の最新法規制に基づいたサプライチェーンのリスク診断から、契約書のレビュー、現地法人と本社のコンプライアンス体制構築まで、実務に即した包括的なサポートを提供している。自社の供給網に不安を感じている方や、具体的な実務対応でお困りの方は、ぜひお気軽に東京コンサルティンググループまでご相談いただきたい。

 この記事に対するご質問・その他中国に関する情報へのご質問等がございましたらお気軽にお問い合わせください。

※画像クリックでお問い合わせページへ移動します


PR】海外最新ビジネス情報サイト「Wiki Investment」


※画像クリックでWiki Investmentページへ移動します

進出予定の国、進出している国の情報収集に時間かかりませんか?

進出してビジネスを成功させるためには、

その国の知識や実情を理解しておくことが必須となってきます。

しかし、情報が溢れかえっている社会では

どれが本当に信頼できる情報なのか?重要になります。

そんな「信頼できる情報」をまとめたサイトがあれば、どれだけ楽に情報収集ができるだろう…

その思いから作成したサイトがWiki Investmentです!!

弊社東京コンサルティンググループは海外20カ国超に拠点を有しており、

その現地駐在員が最新情報を「Wiki Investment」にまとめています。

【Wiki Investmentで何ができる?

・現地駐在員が毎週ホットな情報を更新するNews update

・現地に滞在する方からご質問頂く、
 より実務に沿った内容が記載されているQ&A集

・当社が出版している海外実務本をデータベース化したTCG書籍

などの新機能も追加しました!


経営者・幹部層の方におススメしたい【全ての経営者へ贈るTCGブログ】

※画像クリックで「TCGブログ」ページへ移動します

会社経営や部下のマネジメントをしていると、様々なお悩みって出てきませんか?

どうしたら、会社は良くなっていくんだろう・・・
・部下が育ってくれるにはどうしたらいいんだろう・・・

そういったお悩みをもつ経営層の皆様におススメしているブログがございます。
コンサルティングファームとして、これまで多くの企業様と関わり、
課題を解決してきたコンサルタント達による

経営課題や悩みについて解説したブログを無料公開しております。

もっと会社を良くしたい!、マネジメントについて学びたい!

そうお考えの皆様におススメのコンテンツとなりますので、ぜひご覧ください!

・「全ての経営者へ贈るTCGブログ」はこちらから

 


株式会社東京コンサルティングファーム 中国拠点
萩生田 弘毅


※)記載しました内容は、作成時点で得られる情報をもとに、最新の注意を払って作成しておりますが、その内容の正確性及び安全性を保障するものではありません。
該当情報に基づいて被ったいかなる損害についても情報提供者及び当社(株式会社東京コンサルティングファーム並びにTokyo Consulting Firm Co., Ltd.)は一切の責任を負うことはありませんのでご了承ください。

関連記事

ページ上部へ戻る