ブラジルにおける内部統制ついて①

 

今週より4回にわたってブラジルの内部統制について記載いたします。

 

海外子会社の経営(管理・運営)は、日本企業に限らず、欧米企業にとっても非常に困難が多く、思わぬ落とし穴が存在するものです。一般的には、言語、文化、商習慣の違いによって起こるものが多く、また、国の「未成熟さ」も注意するべき要因といえます。

特にブラジルにおいては、複雑な税制、労働者保護色の非常に強い労働法、頻繁に改正が行われる各法律が大きな要因となり、日本国内では起こり得なかった困難に遭遇する局面があり、また、意図せずともコンプライアンス違反を犯す可能性が非常に高い国であるといえます。

2015年を振り返れば、ブラジル国営石油公社ペトロブラスに絡む汚職問題が大きな話題となりました。経済の悪化も相乗し、ブラジル全土、更には日本企業を含めた海外企業に対しても、現在も大きな影響を及ぼしています。

上述のリスクを抑え、健全な企業経営を目指すべく、コーポレート・ガバナンスの強化と内部統制、ブラジル法令における有効性の高い統制プログラムを構築することは、ブラジル企業およびブラジルで事業を営む海外企業にとって、非常に重要な課題といえます。また、本来あるべき企業経営の姿を追求し、統制のとれた組織となることで、高い収益性を維持し、事業計画を上回る理想企業になり得るのではないでしょうか。

 

内部統制とは、従業員や会社資産の管理統制であり、コーポレート・ガバナンスを強化するプロセスでもあります。コーポレート・ガバナンスの目的は、コンプライアンス違反、企業の腐敗行為や不祥事などの違法行為を防ぐための経営管理機構であり、また、健全かつ効率的な企業運営を実行するプロセスの構築とその監督による収益力の強化とされています。そのプロセスにあたる内部統制は、企業運営において非常に重要な要素であり、プロセスなくして管理体制の構築は不可能です。有効性の高い内部統制を構築し、内部監査によって継続的に評価することが、コーポレート・ガバナンスの強化に繋がり、安定した経営基盤を構築と収益性の確保に繋がります。

つまり、内部統制とは、経営者の意思に従い事業活動を適切に遂行するための企業内部の管理体制であり、目的(業務の有効性と効率性を高め、財務報告の信頼性を確保し、事業活動に係る法規の遵守を促し、資産の保全を行うこと)を達成するために、企業内部に組み込まれ組織内の全ての者によって遂行されるプロセスを指します。

また、内部統制を構成する基本要素を正しく導入することによって、不祥事や違法行為に限らず、業務上のミスや欠陥が発生した場合でも、発生原因を発見し、取り除くことができる環境、文化を構築することが可能です。

 

米国の内部監査人協会による内部統制の定義では、「設定された目的と目標が達成される可能性を高めるために、経営者によってとられているあらゆる行動」とされており、また、日本の金融庁による「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準のあり方について」における内部統制の定義では、「内部統制とは、基本的に、業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事業活動に関わる法令などの遵守並びに資産の保全の4つの目的が達成されているとの 合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内の全ての者によって遂行されるプロセスをいい、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング(監視活動) 及びIT(情報技術)への対応の6つの基本的要素から構成される」とされています。

上述した内部統制は、米国SOX法に基づく内部統制の基本的枠組みであるCOSOフレームワークをベースとしているもので、ブラジルにおいてもリスク監査の導入等に当該フレームワークを参考としています。次回はブラジルにおける内部統制の概要を解説していきます。

以上

 

 

Tokyo Consulting Firm Limitada

Diretor Presidente

金内 陽

 

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