こんにちは。ハノイ拠点の小瀬です。
第5回で業種別税率、第6回で課税対象売上を扱いました。ここまでは「1つの契約=1つの業種」を前提にしてきましたが、実際の契約は物品の供給と据付サービス、資材調達と建設工事のように、複数の事業活動が1本にまとまっていることが少なくありません。今回は、そうした契約でどの率をどう適用するのか――CIT編の締めくくりとして、通達20/2026号 第7条第5項に沿って整理します。
通達20/2026/TT-BTCにおけるたった1つの原則
複数事業が混在する契約のFCT税率はどうなる? 結論として、ベトナムFCTにおいて複数事業が混在する契約の適用税率は、「契約書やインボイスで、活動ごとの価値(金額)を個別に識別できるか」で決まります。識別できれば活動ごとの本来の税率、識別できなければ契約全体に最も高い税率(または一律2%)が適用されます。
識別できれば部分ごとに本来の率を適用でき、識別できなければ簡便だが粗い一括率が課される――この構造さえ掴めば、以下のすべては応用にすぎません。
1. 3つの型で見る判定早見表
契約の型ごとに、識別できる場合/できない場合の適用率を整理すると、次のとおりです。
| 契約の型 | 価値を個別に識別できる | 識別できない |
|---|---|---|
| 複数事業が混在(一般) | 各部分にそれぞれの率 | 最も高い率を契約全体に適用 |
| 資材・設備を含む建設 | 各部分にそれぞれの率 | 契約全体に2% |
| 機械・設備の供給+据付サービス | 機械分・サービス分を各率 | 契約全体に2% |
2. 型ごとの補足
- 複数事業が混在(一般):各活動の価値が識別できれば各率、識別できなければ適用され得る業種のうち最も高い率を契約全体に適用します。
- 資材・設備を含む建設:識別できれば各率、識別できなければ契約全体に2%。なお、外国契約者が資材・設備を含む部分を丸ごと下請けに出し、自らはサービス部分のみを行う場合、その元請のサービス部分にはサービス業の率5%が適用されます。
- 機械・設備の供給+ベトナムでの据付サービス:機械分とサービス分を識別できればそれぞれの率、識別できなければ契約全体に2%です。
実務での勘どころ:追徴課税を防ぐベストプラクティス
実務のベストプラクティスは、契約書やインボイスで活動ごとの金額を明確に区分して記載することに尽きます。仮に一律率(一般=最も高い率、建設・据付=2%)を適用した方が税額が低く見える場合があっても、それは正しい申告ではありません。区分がないまま申告すると、後の税務調査で否認・再区分され、不足していた本税に加えて延滞金・加算税が課されるおそれがあります。
ベトナムでは遡及期間が長く延滞金も積み上がるため、当初区分していれば済んだ額を大きく上回る出費になりかねません。目先の税額の多寡ではなく、正しい率で申告し追徴リスクを断つという観点から、区分は必須の対応です。見積・契約の段階で、部分ごとの金額内訳を必ず残しておいてください。
3. 具体例で確認
1つの契約に、サービス(率5%)とロイヤルティ(率10%)が各6億VND・4億VND(合計10億VND)含まれているケースで比べます。
例1(識別できる):契約書で金額を区分。→ サービス6億×5%=3,000万、ロイヤルティ4億×10%=4,000万で、CITは合計7,000万VND。
例2(識別できない):「一式10億VND」とだけ記載し内訳なし。→ 一般契約は最も高い率(この場合10%)が全体にかかり、10億×10%=1億VND。区分していれば5%で済んだサービス部分にも10%がかかるため、3,000万VND高くなります。
今回のキーポイント
・ 全ては「価値を個別に識別できるか」の一点で決まる。
・ 識別できないと一般=最も高い率/建設・据付=2%の一括適用になる。
・ 区分すれば各活動に本来の率が適用され、税額を予見・最適化できる。
以上でCIT(法人所得税)編は完了です。次号(第8回)からはFCTのもう一方の柱、VAT(付加価値税)編に入ります。まずはVATの計算式と、外国契約者に用いる「直接法」の仕組みを解説します。
本ブログは、2026年8月12日時点で有効なベトナムの法令に基づき、一般的な情報提供のみを目的として作成されたものであり、特定の取引・契約に関する法的助言や税務助言に代わるものではありません。個別の事案への適用にあたっては、必ず原文法令および適用時点の改正・追加規定をご確認いただくとともに、当社までご相談ください。本資料の利用により生じたいかなる結果についても、当社は責任を負いかねます。