こんにちは。ハノイ拠点の小瀬です。

第4回で「CIT = 課税対象売上 × 業種別率」、第5回でその「業種別率」を一覧にしました。残るもう一方の要素が、掛け算の土台となる「課税対象売上」です。率が同じでも、売上をいくらと捉えるかで税額は変わります。

今回は、実務で算定が特殊になりやすい個別ケースを、通達20/2026号 第7条第4項に沿って整理します。

まず基本の考え方(第4回の復習)

外国契約者税(FCT)におけるCIT課税対象売上とは、外国契約者が受け取る売上の総額(税額を差し引く前)のことです。これにはベトナム側が立替払いした費用も含まれます。今回の個別ケースは、この原則に対して「何を含め、何を除けるか」の特則を定めたもの、と捉えてください。

1. 下請けを使う場合("自分の取り分"だけが売上)

  • ベトナム下請業者に出す場合:元請業者の課税対象売上には、下請業者が行った作業の価値は含まれません(下請業者が契約書または付録のリストに記載されていることが条件)。ただし、契約の範囲外で、内部消費のために元請業者がベトナムで購入した物品・サービスの価値は、売上から控除できません。
  • 外国下請業者に出す場合:ベトナム側当事者が、業種別率で元請業者と外国下請業者の両方の分をまとめて申告・納付します。外国下請業者は、その代行納付された部分について重ねて申告・納付する必要はありません。

2. 機械・設備・輸送手段のリース(一部費用を除ける)

課税対象売上はリース料の総額です。ただし、保険・メンテナンス・検査・オペレーター費用・海外からベトナムへの輸送費など、貸し手が直接支払う特定の費用は、実際の裏付け書類がある場合に限り除外できます。

※ ポイントは「裏付け書類(インボイス等)があるか」。書類で立証できなければ、総額がそのまま課税対象売上になります。契約時に、これらの費用を区分して書類を揃える取り決めをしておくと有利です。

3. 国際輸送(航空・海上で捉え方が違う)

  • 国際航空/海上輸送:課税対象売上は、自社便・コードシェア便(航空)でベトナムから徴収したチケット/船荷証券収入等。海上輸送は、ベトナムの積地港から最終荷揚げ港までの全運賃が対象です。
  • 国際貨物輸送・ロジスティクス(ベトナム発):課税対象売上に、運送業者へ支払う国際輸送費は含めません。ただし国際エクスプレス配送は、総売上ベースで計算します(この違いに注意)。

4. その他の個別ケース

  • 再保険(出再/受再):譲渡・受領した再保険料、手数料、その他の関連収入が課税対象売上。
  • 証券・譲渡性預金の移転:販売代金の総額。先物契約は、決済価格・契約乗数・契約数・当初証拠金率に基づく所定の計算式で算定します。
  • 貸付利息:あらゆる形態の貸付から受け取る全額(預金利息・遅延損害金・債券利息・債券割引・財務省証券・譲渡性預金、契約上ベトナム側が支払う手数料を含む)。

実務での勘どころ

個別ケースの多くは、「総額が原則、書類があれば一部除ける/自分の取り分だけが売上になる」という2つのパターンに整理できます。どちらに当たるかで税額が変わるため、契約書で下請けの範囲・除ける費用・国際輸送費の区分を明確にし、裏付け書類を揃えておくことが、そのまま税負担の最適化につながります。

5. 具体例で確認

例:外国の元請業者が、ベトナム企業から請け負った工事(総額10億VND)のうち、3億VND分をリスト記載済みのベトナム下請業者に出した。→ 元請業者のCIT課税対象売上は、下請分を除いた7億VND。この7億VNDに業種別率を掛けてCITを算定します(下請分3億は下請業者側で処理)。

今回のキーポイント

・ 原則は「受け取る総額(立替費用込み)」が課税対象売上。

・ 下請け分はリスト記載を条件に元請の売上から除ける。

・ リース費用の除外・国際輸送費の扱いは裏付け書類と契約の区分が鍵。

次号(第7回)では、1つの契約に複数の事業活動が混在する場合、どの率を適用するのか――第5回で触れた「価値を個別に識別できるか」の判断ルールを、建設や機械据付の例とともに詳しく整理します。

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