お世話になっております。東京コンサルティングファーム ベトナム拠点の清水です。
今回は、ベトナムの国家デジタル身分証明アプリ「VNeID」における外国人登録要件の改正と、TRC(一時滞在カード)不要化に伴う実務上のインパクトについて解説します。
ベトナムにおけるVNeIDとは?なぜ外国人駐在員・法定代表者に必要なのか
ベトナム政府は現在、社会全体のデジタル化(Digital Transformation)を急速に推進しており、その中核をなすのが公安省の管理するデジタル身分証明アプリケーション「VNeID」です。
従来、ベトナム国内での手続き(宿泊登録、銀行口座開設・KYC認証、各種行政手続き等)にはパスポートや紙の在留資格書類の提示が必要でした。しかし、VNeIDの普及に伴い、デジタル身分証明書の提示だけで完結する場面が飛躍的に増えています。
さらに企業実務において非常に重要なのが「法人向けVNeIDアカウント」の存在です。ベトナムでは電子申請システムや税務ポータル等へのアクセスにおいて、企業の法的代表者個人のVNeIDアカウントと企業アカウントの紐付けが求められるケースが増加しています。そのため、駐在員や法定代表者である日本人が自分自身のVNeIDを開設できるかどうかは、単なる個人の利便性にとどまらず、企業全体の行政手続きのスムーズさを左右する重要課題となっています。
2026年政令改正で何が変わった?TRC不要化の背景と主な変更点
これまで外国人がVNeIDを登録するためには、有効なTRC(一時滞在カード)またはPRC(永久滞在カード)の保有が必須要件とされていました。
この規定には実務上大きな壁がありました。例えば「ベトナムに会社を新規設立したばかりで、まだTRCが発行されていない日本人法定代表者」の場合、自分自身のVNeIDアカウントが作れないため、結果として会社の法人VNeIDアカウントの作成や電子手続きが滞ってしまうという事態が多発していたのです。
こうした実務上の不都合を解消するため、政令(政令320/2026/NĐ-CP等)の改正により、外国人に関するVNeIDの登録要件が大幅に見直されました。主な変更点は以下の通りです。
- TRC・PRC保有要件の撤廃:ベトナムに合法的に入国・滞在する外国人であれば、TRCを保有していなくてもパスポート等の有効な渡航書類でVNeIDアカウントの申請・取得が可能となりました。
- 設立初期の法人手続きの迅速化:TRCの発行を待たずに法定代表者のVNeID取得手続きを進められるため、会社設立後の手続き(法人アカウント開設や各種ライセンス変更)がスムーズになります。
- 申請手続きの一元化と生体情報の採取:従来のアプリ単体で完結するオンライン申請枠組みが整理され、外国人についても管轄の出入国管理部門や公安窓口にて、顔写真や指紋などの生体情報(Biometrics)を採取・登録する対面手続きが原則義務付けられます。
注意点
- 現場での運用格差:ベトナムの行政手続き全般に言えることですが、法令の施行直後は地域(ハノイ、ホーチミン、ダナン、各地方省)によって窓口での必要書類や対応速度にばらつきが生じやすいです。
- 生体認証登録のスケジューリング:出頭による写真撮影・指紋採取が必要となるため、駐在員や役員の出張・滞在スケジュールに合わせて計画的に手続きを組み込む必要があります。
- 社内規程・管理体制の整理:法人のデジタル署名やVNeIDアカウントの管理権限、代表者交代時の引き継ぎフローをあらかじめ定めておくことがトラブル防止に直結します。
まとめ
VNeIDをはじめとするベトナムのデジタル化政策や法改正はテンポが非常に速く、最新の運用実態を正確に把握して対応することが事業運営の鍵を握ります。
「新しく赴任した駐在員の身分登録やVNeID開設をサポートしてほしい」
「会社設立後の法人アカウント開設や労務・法務手続きで困っている」
このようなお悩みをお持ちの経営者様・駐在員様は、ぜひ東京コンサルティングファームへご相談ください。私たちTCGベトナム拠点では、会計・税務・労務・法務のプロフェッショナルが連携し、御社のベトナムビジネスを強力にバックアップいたします。
本記事は一般的な情報提供のみを目的として作成されたものであり、特定の取引・契約に関する法的助言に代わるものではありません。個別の事案への適用にあたっては、必ず原文法令および適用時点の改正・追加規定をご確認いただくとともに、当社までご相談ください。