こんにちは。ハノイ拠点の小瀬です。
前号(第2回)では、「誰の・どの取引にFCTがかかるのか」という適用対象を整理し、判断の軸が「ベトナムを源泉とする所得か」にあることを確認しました。今回はその裏返し、「FCTがかからない取引(適用対象外)」を扱います。ここを誤ると、本来不要な源泉徴収をしてしまったり、逆に課税漏れを起こしたりするため、実務で特に重要な論点です。
この号の位置づけ
適用対象外の多くに共通するキーワードは、「ベトナム国外で実施され、ベトナムで消費されない」という点です。以下の除外リストも、この一点から整理すると理解しやすくなります。
1. ベトナムFCT(VAT・CIT共通)で対象外となるケース
通達20/2026号 第7条第2項(CIT)と通達69/2025号 第9条第2項(VAT)は、いずれも次のケースをFCTの範囲から除外しています。
- 売り手・買い手間で引き渡し条件とリスク移転が明確で、ベトナム国内での付随サービスを伴わずに、国外またはベトナムの国境ゲートで引き渡される場合
- 輸送手段・機械・設備の修理サービス(海底ケーブル・伝送設備を含む)が、ベトナム国外で実施される場合
- 広告・マーケティングサービス(インターネット経由を除く)が国外で実施される場合
- 投資・貿易促進サービス(インターネット経由を除く)が国外で実施される場合
- 物品販売・サービス提供の仲介サービス(インターネット経由を除く)が国外で実施される場合
- トレーニングサービス(オンラインを除く)が国外で実施される場合
- 外国側に配分され、ベトナム国外で実施される国際電気通信料金・国際郵便料金
- 国際輸送・通過・積替え・保管・賃加工のための補助倉庫としての、保税倉庫・内陸通関施設(ICD)の使用
- ベトナム国外で実施され、ベトナムで消費されないその他のサービス
「インターネット経由を除く」に注意
広告・仲介・トレーニングなどは、オンラインで提供される場合は"国外実施"とは扱われず、対象外から外れる(=課税され得る)ことがあります。デジタルでの役務提供が増えている今、実務で特に判断を誤りやすい点です。
2. CITでのみ、追加で対象外となる2ケース
上記の共通除外に加えて、CITについては通達20/2026号がさらに2つのケースを除外しています。これは旧通達103/2014号にはなかった新しい取り扱いです(第10回で改めて触れます)。
- グループ内再編に伴う資本移転:最終親会社が変わらず、所得が発生しないグループ内所有権の再編(最終的な実質的支配権・移転価値・義務の継承などの条件を同時に満たす場合に限る)
- 保税倉庫・非関税地域での原材料等の販売:契約に基づく輸出用物品の生産・加工に供するための輸入を目的とした、保税倉庫/非関税地域での原材料・供給品・部品の販売
3. よくある質問(FAQ):FCT対象外となる取引の具体例
例1:外国の親会社が、自国の工場でベトナム子会社の設備を修理し、修理後にベトナムへ返送する
→ 修理役務が国外で完結しているため、対象外。
例2:外国企業が、オンライン広告サービスをベトナム企業に提供する
→ インターネット経由のため"国外実施"の除外に当たらず、対象として検討が必要。
今回のキーポイント
- 対象外の軸は「国外で実施・ベトナムで非消費」
- 広告・仲介・研修などはオンラインだと除外から外れ得る
- CITのみ、グループ内再編・保税倉庫での原材料販売が追加で対象外
実務での読み解き方
対象外の判定は、「実施場所」と「消費地」の2点を押さえるのが近道です。役務がベトナム国外で完結し、成果もベトナムで消費されないなら対象外に寄ります。一方、少しでもベトナム国内での実施・消費が混ざると、原則に戻って対象として検討することになります。
判断に迷う契約は、契約書上で役務の実施場所を明確にしておくことが、後の税務リスク低減につながります。
ここまでで「誰に・どの取引にかかるのか(かからないのか)」の入口が整理できました。次号(第4回)からは、いよいよ税額計算の本体に入ります。まずはCIT(法人所得税)について、計算式と「ベトナムを源泉とする課税所得」の考え方を解説します。
- 通達20/2026号 第7条第2項(CIT関連の対象外規定)
- 通達69/2025号 第9条第2項(VAT関連の対象外規定)
- 旧通達103/2014号(従来規定)
- 上記は執筆時点の情報に基づきます。法律・制度は変更される場合があります。
本ブログは、2026年9月2日時点で有効なベトナムの法令に基づき、一般的な情報提供のみを目的として作成されたものであり、特定の取引・契約に関する法的助言や税務助言に代わるものではありません。個別の事案への適用にあたっては、必ず原文法令および適用時点の改正・追加規定をご確認いただくとともに、当社までご相談ください。本資料の利用により生じたいかなる結果についても、当社は責任を負いかねます。