近年、ベトナムを拠点とする日系企業の間で「仲介貿易(三国間貿易)」の取引が増えています。この取引形態は通関手続を経ないため、書類の整え方一つでリスクにもメリットにもなり得ます。今回は実務での取扱いを、書類の流れに沿って整理します。
1. ベトナムにおける仲介貿易(三国間貿易)とは?
商法(36/2005/QH11、2005年制定)第30条第1項では、ベトナムへの輸入手続又はベトナムからの輸出手続を行うことなく、ある国・領土で物品を購入し、ベトナム領土外の別の国・領土で販売する行為を「仲介貿易」と定義しています。第30条は現在も有効で、これまでの法改正の影響を受けていません。
第30条第2項では、仲介貿易の実施形態を次の2つに規定しています。
- ① 輸出国から輸入国へ、ベトナムの国境を通過せず直送する形態
- ② ベトナムの国境を通過するが、ベトナムへの輸入手続・輸出手続のいずれも行わない形態
なお、保税倉庫・港湾中継エリアを経由する形態は、政令69/2018/NĐ-CP第18条で補足的に規定されています。
「一時輸入再輸出(TNTX)」との違いに注意
似た制度に「一時輸入再輸出(TNTX)」がありますが、TNTXはベトナムへの輸入通関を一度経る点で仲介貿易とは異なります。この違いを混同すると、後述するVAT還付の取扱いを誤って適用してしまうリスクがあるため注意が必要です。
2. 実務フロー(書類の流れ)
仲介貿易は通関書類が存在しないため、契約書・デリバリーノート・インボイスの整合性が特に重要になります。
| 書類 | 実務上のポイント |
|---|---|
| ① 契約書 | 仕入先(下請業者)⇔自社:引渡条件に自社の顧客の住所を明記する。通関書類がない分、ここで物流のゴールを明確にしておく必要がある。 自社⇔顧客:通常の売買契約でよい。 |
| ② デリバリーノート | 送り主は仕入先(仕入先の住所から発送)、受け取り主は顧客(顧客の住所着)。物理的な物流は仕入先から顧客へ直接行われ、自社は経由しない。 |
| ③ 決済 | 顧客 → 自社へ銀行送金、自社 → 仕入先へ支払い。銀行によっては、送金手続きの際に契約書やデリバリーノートの提出・確認を求められる場合があるため、両書類の整合性(住所・品目・数量)を事前にチェックしておくとスムーズ。 |
| ④ インボイス | 仕入先 → 自社:商業インボイス 自社 → 顧客:商業インボイス + VATインボイス |
※仲介貿易品は従来VATの課税対象外として扱われてきました。2025年7月のVAT法改正以降の位置づけについては、取引ごとに最新の取扱いを確認することを推奨します。
3. 会計処理
上記のフローが正しく整っていれば、通常の販売取引として会計処理を行います。仕入費用・配送費(発生する場合)についても、インボイス・契約書等の証憑が適切に揃っていればCIT(法人税)の損金算入対象となります。
4. 混同しやすい論点:VAT還付の取扱い
2025年7月1日以降、ベトナムに輸入した商品を加工・製造せずそのまま第三国へ再輸出する取引については、仕入VATの還付対象外となることが明確化されました(VAT法48/2024/QH15号第15条第1項、政令181/2025/NĐ-CP第29条第1項)。
ここで注意したいのは、この規定は「一度ベトナムに輸入通関した上で再輸出するケース」を対象にしている点です。本記事で整理した仲介貿易(通関を経ない直送型)は、輸入後再輸出とは取引形態が異なります。ただし両者は実務上混同されやすく、社内・取引先への説明ではVAT還付の取扱いについても明確に区別して伝える必要があります。
まとめ
- 仲介貿易は通関書類がない分、契約書・デリバリーノート・インボイスの整合性が重要。
- 「仲介貿易(通関を経ない)」と「輸入後再輸出(通関を経る)」は法的性質が異なり、VAT還付の取扱いも異なる。
- 正しい書類フローが整っていれば、通常の販売取引としてCIT損金算入も問題なく可能。
本記事は、執筆時点(2026年8月7日)の法令・実務情報等に基づく一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言を行うものではありません。
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