こんにちは。ハノイ拠点の小瀬です。
ベトナムでは毎年のように台風や水害が発生するため、その対策と復旧を目的とした「自然災害防止基金(Quỹ phòng, chống thiên tai)」という制度が設けられています。本日は、政令78/2021/ND-CP号に基づき、近年当局からの納付要請や取り締まりが強化されつつある本基金の概要と、企業が負う実務上の義務について解説いたします。
本基金は、国家予算とは別枠で各省レベルで管理されるものであり、企業および個人の双方にとって強制(法的義務)とされています。未納が常態化しているケースも見受けられますが、規定上は明確な罰則が存在するため、コンプライアンスの観点から改めて自社の対応状況をご確認いただくことをお勧めいたします。
1. 拠出金の種類と概要
基金への拠出には、大きく分けて「企業自身の負担分」と「従業員(個人)の負担分」の2種類が存在します。
| 項目 | 企業負担分 | 従業員(個人)負担分 |
|---|---|---|
| 算出基準 | 前年12月31日時点の財務諸表上の総資産額の0.02% | 1/2 ×(地域別最低賃金 ÷ 契約上の月間労働日数) |
| 金額の目安 | 下限:50万VND/上限:1億VND | 概ね半日分の賃金(数万VND程度) |
| 納付期限 | 5月31日までに50%以上、10月31日までに残額(※各地方自治体・省の定めに従う) | 毎年7月31日までに一括納付 |
| 損金算入 | 法人税(CIT)計算上、損金算入可能 | 個人の負担であるため対象外 |
2. 従業員負担分に関する企業の役割
従業員負担分の拠出義務はあくまで「個人(従業員)」に帰属しますが、実務上、企業は以下の対応を求められます。
徴収と代行納付
企業は、自社が管理する従業員について徴収・納付計画のリストを作成し、従業員の給与から源泉徴収した上で、省の基金へ一括して代行納付することが通例として求められます。
推奨される実務対応
従業員各自の自主的な納付に任せる(企業が関与しない)状態は、結果として未納が発生しやすく、企業としての管理責任を問われるリスクが高まります。そのため、「企業が従業員から徴収し、従業員に代わって一括納付する」フローを構築することが、最もコンプライアンスに則した安全な対応となります。
3. 未納および義務違反に対する罰則
本基金の未納や、関連する手続きの不備に対しては、以下の行政罰が規定されています(時効は1年)。
- 基金の未納に対する罰則
未納額に応じて罰金が科されます(組織に対する罰金は個人の2倍となり、最大1億VND)。また、罰金に加えて未納分の追納も命じられます。 - リスト未提出に対する罰則
自社が管理する個人の徴収・納付リストを提出しない、または不備がある場合、企業に対して500万VND〜1,000万VNDの罰金が科される可能性があります。
本記事は一般的な情報提供のみを目的として作成されたものであり、特定の個人や法人に対する専門的、法的、または税務的な助言を提供するものではありません。実際の適用にあたっては、各省・直轄市や管轄当局の運用によって解釈や取り扱いが異なる場合がございます。
具体的な事案に対する判断や手続きにつきましては、必ず専門家や管轄当局へ直接ご相談・ご確認いただきますようお願い申し上げます。本記事の情報を利用したことによって生じたいかなる損害についても、当方は一切の責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。