こんにちは。東京コンサルティングファーム ベトナム拠点の下田琴美です。

ベトナムに進出する日系企業は、まずどの会社形態で登記するかを選ぶ必要があります。企業法(2020年法律59号)は、出資者の人数と株式発行の可否によって、会社形態を大きく3つに区分しています。

会社形態 出資者の人数 株式発行
株式会社(JSC) 最低3名、上限なし 可能
一人有限責任会社 1名のみ 不可
二人以上有限責任会社 2名以上50名以内 不可

1. 株式会社(Công ty cổ phần/JSC)

出資者は「株主」と呼ばれ、最低3名必要で上限はありません。株主総会を最高意思決定機関とし、その下に取締役会、業務執行者として社長を置きます。

ガバナンス体制は、株主総会+取締役会+監査役会+社長という「監査役会設置型」と、監査役会を置かず取締役会内の内部監査委員会が監督機能を担う「単層型」の2つから選択できます。監査役会設置型の場合、株主が11名以上、または法人株主が発行済株式の50%以上を保有するときに監査役会の設置が義務付けられます。

株式会社だけができること

株式発行による資金調達・上場(IPO)が可能なのは株式会社だけです。株式の譲渡も比較的自由に行えますが、設立時の発起株主が保有する株式は、設立後3年間、他の発起株主または株主総会の承認を受けた者への譲渡に限られます。

2. 一人有限責任会社(Công ty TNHH một thành viên/Single-Member LLC)

出資者が1名のみの会社形態で、日系企業が100%出資でベトナムに子会社を設立する場合、実務上もっとも多く選ばれています。

出資者が個人であれば、その個人が会社の所有者として重要事項を決定します。出資者が組織(法人)の場合は、法人に代わって議決権を行使する個人(委任代表者)を指名する必要があります。

企業法上、委任代表者の人数は「1名又は複数名」とされ、法人が自由に決められますが、実務上は3名までとするケースが一般的です。委任代表者が1名であれば、その委任代表者が会社所有者の権限を行使します。複数名の場合は、委任代表者同士の合議体を置き、その中から議長役を選出します。

株式は発行できませんが、社債発行や出資者自身による追加出資は可能です。持分の譲渡には、企業登録内容(ERC)の変更手続が必要となります。

3. 二人以上有限責任会社(Công ty TNHH hai thành viên trở lên/Multi-Member LLC)

社員が2名以上50名以内という制限がある会社形態で、合弁会社でよく使われます。最高意思決定機関は社員総会で、その中から選出される議長役と社長を置きます。

株式は発行できませんが、追加出資や社債発行は可能です。持分の譲渡は、他の社員へまず同条件で譲渡を申し出る必要があり、他の社員が買い取らない場合に初めて外部へ譲渡できます。監査役会の設置は、国有企業を除き義務ではありません。社員が組織の場合は、一人有限会社と同様に委任代表者を指名する必要があります。

4. 日本との違い

① 株式会社の設立には最低3名が必要

日本では株式会社も合同会社も1人で設立できますが、ベトナムで株式会社を設立するには最低3名の株主が必要です。1人だけで会社を持ちたい場合は一人有限会社を選ぶことになります。

② 「法定代表者」という独立した地位

ベトナムには対外的な代表権を持つ「法定代表者」という、ERCに記載される独立した法的地位があります。日本にはこの概念がなく、代表取締役が経営執行と対外的代表を一体的に担う点が構造上の違いです。

法定代表者は必ずしも社長が兼任するとは限らず、取締役会会長や一人有限会社の所有者が務めることもできます。

③ 「委任代表者」制度

社員・株主が組織である場合、その組織に代わって議決権を行使する個人を指名する「委任代表者」という制度も、ベトナム特有のものです。日系企業がベトナムに100%出資子会社を設立する際は、この委任代表者の指名・管理が必須となる点に留意が必要です。

5. まとめ:将来を見据えた会社形態の選択

ベトナムでは、会社形態によって機関設計や資金調達の方法、持分譲渡のルールなどが大きく異なります。設立時には問題がなくても、増資や役員変更、合弁化、グループ再編などの場面で、会社形態の違いが手続きや意思決定に影響することも少なくありません。

そのため、進出目的だけでなく、将来の事業計画も見据えたうえで会社形態を選択することが重要です。

東京コンサルティングファーム・ベトナムでは、会社設立・投資ライセンス(IRC)および企業登録証明書(ERC)の取得支援をはじめ、法定代表者・委任代表者の変更、増資・減資、定款変更などの会社法務手続きまで一貫してサポートしております。ベトナムでの会社設立や組織運営についてご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

【参照・引用元】
  • ベトナム企業法(2020年法律59号)
  • 上記は執筆時点の情報に基づきます。法律・制度は変更される場合があります。
【免責事項】
本記事は、執筆時点(2026年7月22日)の法令・実務情報等に基づいて作成しております。法令改正や行政運用の変更等により、内容が変更となる場合があります。
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