こんにちは。ベトナムハノイ拠点の小瀬です。

ベトナムでは、2025年後半から2026年初頭にかけて、新たな法人所得税法(第67/2025/QH15号)およびその指導政令・通達が相次いで施行され、実務上のルールが大きく刷新されています。

本稿では、日系企業の皆様が特に留意すべき「損金算入の新たな決済基準」や「新設された免税規定」、および実務上の重要な変更点について詳しく解説いたします。

1. 法的根拠と主要なタイムライン

現行の法人所得税は以下の新しい法令体系に基づいています。これらは既にすべて発効しており、2026年度の税務申告において全面的に適用されます。

法令 施行日・内容
法人所得税法(第67/2025/QH15号) 2025年10月1日施行
政令第320/2025/NĐ-CP 2025年12月15日施行(法人所得税法の詳細指導)
通達第20/2026/TT-BTC 2026年3月12日施行(実務運用・計算指導)
政令第141/2026/NĐ-CP 2026年1月1日施行(中小・新設企業向け特例)

2. 恒久的施設(PE)の新定義と外国企業への影響

新法では、デジタル経済への対応として外国企業の恒久的施設(PE)の定義が拡張されました。

ベトナム国内に物理的なオフィスを持たない外国企業であっても、ベトナム国内向けに商品やサービスを提供するための「電子商取引(EC)プラットフォーム」や「デジタルプラットフォーム」を運営している場合、ベトナムにおけるPEとみなされることになりました。該当する場合、ベトナム国内で発生した収益に対して定率(%)を用いた方法等での納税義務が生じます。

3. 損金算入の4大条件とは?「500万VND基準」の注意点

費用を税務上の損金(控除対象)として処理するためには、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。

  • 事業関連性:実際の生産・事業活動に直接関連して発生した費用であること
  • 適正な証憑:法令の規定に基づく適法なインボイス(電子請求書)および関連証憑が揃っていること
  • 非現金決済の遵守:1回あたりの支払額が500万VND以上の場合、銀行振込等の非現金決済証憑があること
  • 不算入リストへの非該当:法令で指定される損金不算入項目に該当しないこと

【重要変更】非現金決済義務の基準が500万VNDへ引き下げ

従来の「2,000万VND以上」から「500万VND以上」へと基準が大幅に引き下げられています。小額の取引であっても、以下の実務ルールが適用されますのでご注意ください。

  • 1日の一括カウント:同一の販売者から1回あたり500万VND未満の購入であっても、同日中の購入合計額が500万VND以上となる場合は、非現金決済が必要です
  • 従業員の立替精算:従業員に500万VND以上の支払いを委任・立替させる場合、社内規定(または決定書)を整備した上で、必ず非現金決済(会社から従業員口座への振込等)のルートを通す必要があります
  • 個人口座への現金振込はNG:買い手が販売者の「個人口座」へ直接現金を払い込む行為は、適格な非現金決済とは認められません。必ず企業口座間の振込等を行う必要があります

4. インボイス不要で損金算入できる費用(様式02/TNDNの活用)

取引の性質上、通常の電子インボイスが発行されない場合でも、所定の「様式02/TNDN(Bảng kê 02/TNDN)」を作成・添付し、実際の支払証憑を揃えることで損金算入が認められる例外項目があります。

対象となる費用項目 必要となる書類・実務上の要件
人件費 給与、賃金、各種手当、ボーナス等(雇用契約書、給与明細、支払証憑)
直接購入する農林水産物・手工芸品 生産者・職人から直接買い付ける場合(様式02/TNDNの作成)
スクラップ・廃材・家庭用資産 収集業者や個人から直接、不用品や中古資産を購入する場合(様式02/TNDNの作成)
免税基準未満の個人事業主からの仕入れ 年間売上高がVAT課税基準未満の個人からサービス等を調達する場合(様式02/TNDN)
個人からの資産賃貸借(オフィスの借入等) 賃貸借契約書および支払証憑。※企業が税金を肩代わりする契約内容の場合は、肩代わり分の納税証明書も必要

5. 特例的な損金算入項目(事業非関連費用の例外)

原則として事業に直接関連しない費用は損金不算入ですが、社会貢献や企業の維持準備を目的とする以下の項目は、規定の証明書類を揃えることで例外的に損金算入が認められます。

  • 特定の寄付・スポンサー費用:教育、医療、災害復旧、貧困層向けの家屋建設、科学技術研究開発への寄付(所定の確認書や証明書が必須)
  • 不可抗力による損失:自然災害、疫病、または期限切れ・技術的陳腐化によって廃棄した商品の損失(保険等で補償されない部分。廃棄に関する社内委員会等の処理書類が必要)
  • 事業準備・マーケティング費用:企業の設立費用、営業休止中の維持費用、製品販売前の広告・市場調査費用(プロジェクトが最終的に不成功に終わった場合であっても損金算入可能)
  • 社内組織支援費:国防・安全保障教育費、党組織や労働組合の活動支援費用、職場でのHIV/AIDS予防活動費

6. 2026年新設の免税所得特例(スモールビジネス支援)

年間総収益10億VND以下の法人は免税

今回の改正の目玉の一つとして、小規模法人への免税措置が強化されました。政令第141/2026/NĐ-CPに基づき、年間の総収益が10億VND以下のベトナム法人の所得は免税となります。

新設企業で初年度の売上が10億VND以下と見込まれる場合は、期中の四半期暫定納付も不要とされ、資金繰りの負担が軽減されます。

7. 損金不算入(控除不可)となる主なリスク項目

実務上、否認されやすい代表的な不算入項目は以下のとおりです。期末の税務調整に向けて今から確認を進めてください。

  • 行政違反の罰金:交通違反、登記遅延、会計・税務違反に伴う罰金および税金の遅延利息(すべて損金不算入)
  • 移転価格(関連当事者取引)の利息制限:関連会社との取引がある企業において、支払利息の純額がEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)の30%を超える部分
  • 過度な福利厚生費:従業員への直接的なお見舞い金や祝い金、社員旅行などの福利厚生費のうち、会社全体の「実際の平均月給の1ヶ月分」を超える部分

8. よくある質問(FAQ)

Q. 非現金決済の対象となる金額はいくらからですか?

A. 1回あたりの支払額が500万VND以上の場合、銀行振込等の非現金決済が義務付けられています。

Q. 10億VND以下の法人に免税措置はありますか?

A. はい。政令第141/2026/NĐ-CPに基づき、年間総収益が10億VND以下のベトナム法人の所得は免税となります。

Q. 損金不算入となる罰金には何がありますか?

A. 交通違反、登記遅延、税務違反に伴う罰金および税金の遅延利息はすべて損金不算入です。

【参照・引用元】
  • 法人所得税法(第67/2025/QH15号):2025年10月1日施行
  • 政令第320/2025/NĐ-CP:2025年12月15日施行
  • 通達第20/2026/TT-BTC:2026年3月12日施行
  • 政令第141/2026/NĐ-CP:2026年1月1日施行
  • 上記は執筆時点の情報に基づきます。法律・制度は変更される場合があります。
【免責事項】
本記事は、執筆時点(2026年7月8日)の法令・実務情報等に基づいて作成しております。法令改正や行政運用の変更等により、内容が変更となる場合があります。
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