こんにちは。東京コンサルティングファーム ベトナム拠点の下田です。

EPE(輸出加工企業)がベトナム国内販売を強化する際、通関や関税の負担を回避するためには、販売機能を担うNon-EPE(一般法人)を別途設立し、法人構造を最適化することが実務上の推奨ルートです。

1. はじめに

ベトナムに製造拠点を構える日系企業の多くは、進出当初、輸出を主軸としてEPE(輸出加工企業)を選択されています。ところが事業が軌道に乗り、ベトナム経済の成長とともに現地市場が広がるにつれ、ベトナム国内でのマーケット獲得に舵を切る企業も増えています。

「輸出で築いた品質をそのまま国内の顧客にも」という流れは自然な事業拡大に思えますが、EPEという法人形態のもとでは、ここで思わぬ壁にぶつかります。

2. EPE(輸出加工企業)とは

EPEは、税務上「ベトナム国内にありながら国外にある企業」とみなされ、非関税地域(保税区)の扱いを受けます。この結果、以下の優遇を受けられます。

  • 輸出製品の製造に使う原材料・設備を輸入する際、輸入関税と輸入VATが免除される
  • 海外との取引、およびEPE同士の取引はVATの課税対象外

原材料を無税で輸入し、製品を無税で輸出できるため、輸出比率の高い製造業にとってはキャッシュフロー面で大きなメリットになります。

3. EPEで国内販売を行う際のリスク

問題は、この「国外にある企業」という位置づけが、国内販売の場面では逆に足かせになる点です。

EPEがベトナム国内の顧客に製品を販売する場合、たとえ工場が国内にあっても、その取引は「輸入」として扱われます。つまり、次の手間とコストが生じます。

  • 販売のたびに、双方に輸出入の通関手続きが発生する
  • 無税で輸入した原材料のうち、国内販売分については関税・輸入VATの納付が必要になる

当局の監視強化にも注意

当局による輸出加工型企業の国内販売に対する監視は強まっており、税務優遇の要件審査が厳格化される傾向にあります。将来的な制限リスクや実務上の管理コスト増には注意が必要です。

国内販売を本格化させたいEPEにとって、現状の枠組みは決して使い勝手のよいものではないのです。

4. Non-EPE(販売法人)設立という解決策

そこで有力な選択肢となるのが、国内販売を担うNon-EPE(一般企業)を別に設立することです。

法人構造のイメージ

EPE工場(製造・輸出/優遇を維持)

↓ 国内向けに引き渡し(=輸出入扱い)

Non-EPE販売会社(国内流通・販売)

↓ 通常のVATで国内販売

顧客(ベトナム国内)

製造はこれまで通りEPEが担い、輸出の優遇を維持したまま、国内販売はNon-EPEの販売会社が引き受ける。EPEの強みを手放さずに国内市場へ踏み出せる、実務上よくとられる構造です。

5. 実は、会計・税務・労務・法務が一体で絡む

ただし、これは「会社をもう一つ作れば済む」という単純な話ではありません。EPEとNon-EPEという別法人の間で取引が生じることで、次のように各領域が連動して影響を受けます。

領域 検討が必要になる論点
会計 グループとしての連結管理/2社間の利益配分/原価管理(EPEから販売会社への仕切り価格の設計)
税務 関連者間取引となるための移転価格税制への対応/国内販売にかかるVATの設計/EPEから販売会社への引き渡し時に生じる関税
労務 新会社の雇用設計/既存人員を活用する場合の出向契約
法務 IRC/ERCの変更手続き/販売会社に必要なライセンス(流通業許可等)の設計

つまり、法人構造の見直しは会社設立だけの論点にとどまらず、会計・税務・労務・法務が一体となって初めて成り立つものなのです。

6. まとめ

最適解は、輸出と国内販売の比率、取扱品目、既存の組織体制などによって、企業ごとに異なります。だからこそ、進出時の形態選択だけでなく、事業拡大フェーズでの法人構造の見直しが重要になります。

「国内販売を強化したいが、EPEの優遇は手放したくない」。そのようにお考えでしたら、御社の事業状況に即した最適な法人構造を、会計・税務・労務・法務の各面から一体でご提案いたします。まずはお気軽にご相談ください。

【参照・引用元】
  • 本記事は執筆時点におけるEPE(輸出加工企業)制度の一般的な取り扱いに基づく解説です。最適な法人構造は、輸出と国内販売の比率、取扱品目、既存の組織体制などにより異なります。
  • 上記は執筆時点の情報に基づきます。法律・制度は変更される場合があります。
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本記事は、執筆時点(2026年7月1日)の法令・実務情報等に基づいて作成しております。法令改正や行政運用の変更等により、内容が変更となる場合があります。
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