こんにちは。ベトナム拠点の清水です。
ベトナムの法人設立は、IRC(投資登録証明書)とERC(企業登録証明書)の取得が中核であり、外資規制や資本計画、拠点住所の選定が成否を分ける重要なプロセスです。
ベトナム進出を検討する日系企業にとって、現地法人の設立は重要な第一歩です。一方で、日本と同じ感覚で進めてしまうと、想定以上に時間がかかったり、設立後の事業開始に支障が出たりすることがあります。
特にベトナム法人設立では、事業内容、資本金、法定代表者、オフィス住所などを事前に決定しておく必要があります。これらはIRCの申請前に整理しておくべき重要な項目です。
本記事では、ベトナム法人設立の簡単な流れと、設立前に注意すべき主なポイントを解説します。
1. ベトナム法人設立の簡単な流れ
ベトナムで外資企業が現地法人を設立する場合、一般的には以下のような流れで手続きが進みます。
- 事業内容・資本金・法定代表者・住所などの決定
- IRC申請
- IRC取得
- ERC申請
- ERC取得
- 会社印作成・銀行口座開設・税務関連手続き
- 資本金送金・会計税務体制の整備
- 事業開始
IRCとERCの違い
IRC(投資登録証明書):外国投資家がベトナムで初めて投資を行う場合や、特定の条件を満たすプロジェクトには取得が義務付けられています。
ERC(企業登録証明書):ベトナム法人そのものの設立を証明する書類です。IRC取得後に申請します。
このように、ベトナム法人設立では、設立申請そのものだけでなく、申請前の整理と設立後の手続きまで含めてスケジュールを組むことが重要です。
2. 外資規制や追加ライセンスの確認
ベトナムでは、外資企業がすべての事業を自由に行えるわけではありません。業種によっては、外資規制がある場合や、会社設立後に追加ライセンスの取得が必要になる場合があります。たとえば、以下のような事業では注意が必要です。
- 卸売・小売業
- 飲食業
- 教育関連事業
- 人材関連事業
- 物流・輸送関連事業
- 不動産関連事業
- 一部の専門サービス業
会社設立自体はできたとしても、必要なライセンスが取得できなければ、実際に事業を開始できない可能性があります。また、登録する事業内容によって、必要書類、審査期間、当局からの確認事項が変わることもあります。
そのため、設立手続きを開始する前に、予定している事業がベトナムで実施可能か、外資規制や追加ライセンスの有無を確認しておくことが重要です。
3. 資本金の設定と借入枠の設定
ベトナムでは、業種によって明確な最低資本金が定められている場合もありますが、多くの業種では一律の最低資本金が定められていません。
ただし、最低資本金の定めがないからといって、極端に少ない資本金で問題なく設立できるとは限りません。実務上は、以下のような要素を踏まえて、事業計画に見合った資本金を設定する必要があります。
- オフィス、店舗、工場などの賃料
- 人件費
- 設備投資
- 仕入資金
- 設立後の運転資金
- 予定している事業内容
- ライセンス取得上の妥当性
資本金が少なすぎる場合、当局から事業計画との整合性を確認される可能性があります。また、設立後すぐに資金不足となり、追加送金や親子ローンの検討が必要になるケースもあります。
設立時点では、単に「いくらから設立できるか」ではなく、「設立後に事業を継続できる資金計画になっているか」を確認することが重要です。
借入枠の設定も忘れずに
設立後に親会社などから借入を行う可能性がある場合、投資総額と資本金のバランスを踏まえて、借入可能枠を設定しておく必要があります。投資総額の範囲内で資本金と借入を設計するため、将来的な資金調達の可能性がある場合は、設立時点で資金計画を整理しておくことが望ましいです。
資本金額や借入枠は、IRC申請前に決定する必要があります。
4. 法定代表者の決定
法定代表者は、会社を代表して契約締結や行政手続きなどを行う重要な立場です。日本人駐在員が法定代表者になるケースもあれば、ベトナム人スタッフが法定代表者になるケースもあります。決める際には、以下の点を確認する必要があります。
- 誰がベトナム法人を代表するのか
- ベトナムでの居住要件を満たせるか
- 労働許可証や一時滞在カードの取得が必要か
- 銀行手続きに対応できるか
- 電子署名やオンライン行政手続きに対応できるか
- 契約締結権限や社内承認ルールをどう設計するか
特に、日本人を法定代表者にする場合は、ビザ、労働許可証、一時滞在カード、居住要件などを含めて検討する必要があります。一方で、現地スタッフを法定代表者にする場合は、定款、委任状、社内規程、銀行承認権限などを通じて、権限範囲を明確にしておくことが重要です。
法定代表者はIRC申請前に決定しておく必要があります。設立直前になって候補者が決まらない場合、申請スケジュール全体に影響する可能性があります。
5. オフィス住所の決定
登録住所となるオフィス住所を決定する必要がありますが、どの住所でも法人登記に使用できるわけではありません。
たとえば、住居用マンションの住所は、原則として法人登記に使用できない場合があります。また、業種によっては、オフィス、店舗、倉庫、工場など、実際の事業内容に合った場所が必要になることもあります。飲食業や製造業などでは、会社設立とは別に、消防、食品衛生、環境関連などの許認可が問題になるケースもあります。
そのため、賃貸契約を締結する前に、その住所で予定している事業が実施できるか、法人登記に使用できるかを確認しておくことが重要です。
オフィス住所もIRC申請前に決定しておく必要があります。住所が決まらない場合、設立申請に進むことができないため、物件選定や賃貸契約のスケジュールも早めに確認しておく必要があります。
6. スケジューリング
一般的な目安として、必要書類がそろってからIRCとERCの取得までに一定期間を要します。ただし、実際の所要期間は、事業内容、投資家の所在国、当局の審査状況、追加説明の有無などによって変動します。
特に、当局から追加資料や説明を求められた場合、当初予定していたスケジュールよりも遅れる可能性があります。また、親会社側の書類準備、署名、公証、認証、翻訳、ベトナム側での提出書類作成などにも時間がかかります。
そのため、最短期間だけを前提にするのではなく、当局からのリクエストや書類修正の可能性を見込んで、一定のバッファを持たせることが重要です。特に、以下のような予定がある場合は、早めに準備を開始することをおすすめします。
- 店舗や工場の開業日が決まっている
- 日本人駐在員の赴任時期が決まっている
- 取引先との契約開始日が決まっている
- 初回売上の予定時期が決まっている
- 銀行口座開設や資本金送金の期限を管理する必要がある
設立完了日を固定して考えるのではなく、遅延リスクを前提にしたスケジュール管理が必要です。
7. 設立後の手続き
ベトナム法人設立では、ERCを取得すればすべて完了というわけではありません。設立後には、以下のような多くの手続きが発生します。
- 社印の作成(任意)
- 銀行口座の開設
- 資本金の送金
- 税務登録
- 電子インボイス登録
- 会計帳簿の作成
- 会計ソフトの設定
- 月次・四半期・年次の税務申告
- 労働契約書の作成
- 社会保険登録
- 日本人駐在員の労働許可証・ビザ・一時滞在カード手続き
これらの手続きは、設立完了後に初めて検討するのではなく、設立完了前から準備を進めておくことが重要です。
たとえば、設立後すぐに請求書を発行する予定がある場合、電子インボイス登録や税務手続きが完了していなければ、スムーズに取引を開始できない可能性があります。また、日本人駐在員が赴任する場合は、法人設立後に労働許可証やビザ関連手続きが必要になるため、赴任スケジュールと合わせて事前に準備する必要があります。
8. まとめ
ベトナム法人設立では、申請手続きそのものだけでなく、申請前の準備と設立後の対応まで含めて検討することが重要です。特に、以下の点は設立前に確認しておく必要があります。
- 設立の全体的な流れ
- 外資規制や追加ライセンスの有無
- 資本金額と借入枠の設定
- 法定代表者の決定
- オフィス住所の決定
- 遅延リスクを踏まえたスケジューリング
- 設立後の銀行・税務・会計・労務手続き
IRC申請前に決定が必要な3項目
資本金、法定代表者、オフィス住所については、IRC申請前に決定が必要です。これらが決まっていない場合、設立申請を進めることができないため、早い段階で整理しておくことをおすすめします。
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- 本記事は執筆時点におけるベトナムでの一般的な法人設立実務に基づく解説です。必要な手続きや所要期間は、事業内容・業種・当局の審査状況などにより異なります。
- 上記は執筆時点の情報に基づきます。法律・制度は変更される場合があります。
本記事は、執筆時点(2026年7月1日)の法令・実務情報等に基づいて作成しております。法令改正や行政運用の変更等により、内容が変更となる場合があります。
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