こんにちは。ハノイ拠点の小瀬です。

本日は、ベトナムにおいて税務当局が強化している電子インボイス(電子請求書)の監視システム「K係数(Kファクター)」について、その仕組みや企業への影響、実務上の留意点を詳しく解説いたします。

ベトナムでは近年、不正な請求書の売買によって利益を得ようとする「幽霊企業」の存在が問題視されており、当局はITを活用した厳格な監視体制を敷いています。ベトナムで事業を展開される企業におかれましては、税務リスク管理の観点から非常に重要なトピックとなります。

1. K係数(Kファクター)とは何か?

K係数とは、ベトナム税務当局が電子インボイスの不正利用(特に架空請求書の発行)を検知・防止するために導入したリスク警告指標(パラメータ)です。

2023年6月14日にベトナム税務総局(Tổng cục Thuế)から発出された公文書「2392/TCT-QLRR」に基づき、電子インボイスアプリケーション上に自動監視システムが構築され、同年6月15日より運用が開始されています。

K係数の計算式

K = 販売商品の総額 ÷ (在庫総額 + 仕入商品の総額)

※販売商品総額および仕入商品総額は、VAT(付加価値税)を含まない金額で計算されます。

2. リスク警告のしきい値(目安)

業種によって、税務当局からリスク警告を受ける基準(しきい値)が設定されています。

業種 警告を受けるしきい値
製造業 Kが4倍以上(販売商品額が仕入・在庫合計の4倍以上)
商業部門 Kが2倍以上

3. システムの監視・警告プロセス

税務当局のシステムは、日々提出される電子インボイスを自動的に分析・評価し、以下のステップで監視を行います。

  • 自動検知と警告:日々の請求書発行データをもとにK係数を算出し、しきい値を超えた場合、架空請求の兆候とみなして即座に検出・警告を出す
  • 監視リストへの登録:安全基準を超えて請求書を発行した納税者は、「監視対象の納税者リスト」に自動的に追加される
  • 説明要求と実地調査:警告を受けた場合、税務当局は対象企業に対して説明を求める。これに応じない場合、当局は実地調査(現地調査)を実施し、実際の在庫状況とインボイス情報を照合する
  • 利用停止措置:調査の結果、架空請求書の発行などの不正行為が確認された場合、政令第123/2020/NĐ-CP号 第16条の規定に基づき、その企業の電子インボイスの使用が一時的に停止される

4. 企業への影響と実際の摘発事例

このシステムは非常に強力に稼働しています。

事例:ザライ省税務局

ザライ省の税務局では、2025年の最初の7か月間だけで、Kファクターによる警告を受けた商品・サービスの請求書が2,781件記録されました。

そのうち2,525件は、企業が速やかに理由を説明し、必要な情報をシステムに補足することで警告が解除・処理されています。

5. 企業に求められる対応

システムから警告を受けた場合、企業は以下のような対応が求められます。

  • 在庫帳簿と会計帳簿の照合:前期からの繰越在庫数量が正確に計上されているか確認する
  • VAT申告書の確認:申告漏れの仕入インボイスがないか確認する
  • 製造業の場合の対応:販売された製品が適正な仕入に基づいていることを証明するため、原材料の定数(消費基準)を明確にしておく

なお、警告を受けたこと自体が直ちに違反を意味するわけではなく、適切に説明し情報を補足すれば、システム上の警告は解除されます。

6. よくある質問(FAQ)

Q. K係数による警告を受けた場合、すぐに罰金やペナルティが発生しますか?

A. 警告を受けたこと自体が直ちに違反となるわけではありません。速やかに税務当局へ正当な理由を説明し、情報を補足すれば警告は解除されます。

Q. 対象となる業種に指定はありますか?

A. 全業種が対象となります。製造業(4倍以上)や商業(2倍以上)など、業種ごとに異なるしきい値が設定されています。

7. おわりに:日系企業が取るべき予防策と今後の展望

K係数による厳格な管理は、税収の損失を防ぐだけでなく、法令を遵守する企業がリスクを回避し、自社の評判や競争力を高めるための重要なツールでもあります。

企業にとっては、自社の仕入・在庫・販売のバランスを常に適切に管理・帳簿付けしておくことが最大の防御策となります。経理・税務担当部門におかれましては、日々の記帳とインボイス管理体制の再点検をお勧めいたします。

【参照・引用元】
  • ベトナム税務総局(Tổng cục Thuế)公文書「2392/TCT-QLRR」(2023年6月14日発出、2023年6月15日運用開始)
  • 政令第123/2020/NĐ-CP号 第16条
  • 上記は執筆時点の情報に基づきます。法律・制度は変更される場合があります。
【免責事項】
本記事は、執筆時点(2026年6月3日)の法令・実務情報等に基づいて作成しております。法令改正や行政運用の変更等により、内容が変更となる場合があります。
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