こんにちは。ベトナムハノイ拠点の小瀬です。
2026年4月7日、ベトナム政府は企業の生産・ビジネス活動に関連する行政手続きの削減・簡素化を目的とした「決議第66.16/2026/NQ-CP号」を発行しました。
本決議により、給与・賃金所得に係る個人所得税(PIT)の申告において、これまでの実務運用を大きく変える簡素化が実施されます。ベトナムに進出されている日系企業の実務に直結する重要な変更となりますので、詳細を以下のとおりご案内いたします。
結論として、企業の規模や前年のPIT納税額にかかわらず、原則としてすべての企業がPITの「四半期申告」へ一元化されます。すでに電子税務システム(eTax)上で月次申告は受け付けられない状態となっているため、経理フローの見直しが必要です。
1. 新規制(決議第66.16/2026/NQ-CP号)の概要
まず、今回の決議の基本情報を整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発行日 | 2026年4月7日 |
| 施行日 | 2026年4月15日(2027年2月28日まで有効) |
| 主な目的 | 行政手続きの簡素化、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進、企業のコンプライアンス費用の削減 |
なお、有効期間中に詳細な通達(Thông tư)や政令(Nghị định)が発効した場合は、そちらが優先して適用されます。
2. 最大の変更点:PIT申告の「四半期次」への一元化
今回の新規制により、給与・賃金所得に係るPITは従来の月次申告義務の対象から除外されました。これにより、企業の売上規模や前年のPIT納税額等の条件にかかわらず、原則としてすべての企業が「四半期申告」へと移行・簡素化されることになります。
| 項目 | 従来 | 新制度(決議第66.16号) |
|---|---|---|
| 申告周期の判定 | 売上規模・前年のPIT納税額等の条件により月次または四半期 | 条件による判定なし |
| 給与・賃金所得のPIT申告 | 月次申告の対象 | 月次申告義務の対象外(四半期申告に一元化) |
| 年間の申告回数 | 最大12回 | 4回 |
3. 適用時期と電子税務システム(eTax)の現状
本変更は、2026年第2四半期(2026年4月申告分)より直ちに適用されています。これに伴い、実務上およびシステム上で以下の動きが確定しています。
① システムの仕様変更(月次申告のブロック)
2026年5月19日付で電子税務システム(eTax)のアップグレードが実施されました。現在、システム上では2026年4月期以降の月次申告書(02/KK-TNCNおよび05/KK-TNCN)の提出がロック(遮断)されており、四半期申告のみが受け付けられる仕様に変更されています。
② すでに提出済みの「4月分月次申告」の取扱い
システム改修前(4月〜5月中旬)に、すでに2026年4月分の月次申告データを提出・受理された企業に対する今後の処理方法については、現在、税務総局が各省・市の地方税務局に向けた詳細な指導通知の作成・送付を進めています。
該当する企業は、管轄税務署からの追加案内を待つステータスとなります。
4. 企業へのメリットと今後の見通し
今回の簡素化は、実務負担の軽減という点で大きなメリットがあります。
- 実務負担の軽減:企業によっては毎月発生していた申告・納付手続きが年間4回に削減されるため、経理担当者の作業工数および外部委託コストの削減が期待できます
- 今後の法整備ロードマップ:財務省において税務管理法を指導する新しい通達のドラフト作成が進められており、2026年7月1日には四半期申告を恒久的なルールとして定めた新通達が効力を発生する見通しです(ドラフト段階のため、今後の正式発表を要確認)
5. 企業が取るべき税務上の対応とは?
今回の変更を受けて、進出日系企業が実務面で進めておくべき対応は次のとおりです。
- 社内フローの改定:2026年第2四半期以降、経理部門におけるPIT申告および納税スケジュールを「四半期ベース」へアップデートする
- 外部委託先との契約見直し:税務申告を外部のコンサルティングファームや会計事務所に委託している場合、申告業務およびサービス費用の請求サイクルを月次から四半期次へ移行する調整を進める
留意点:本措置は「時限措置」である
本決議による措置は、現時点で2027年2月28日までの有効期限が設けられています。期間内に公式に月次申告義務を廃止する恒久的な法令が発行されない場合、原則として従来の月次申告運用に戻る可能性があります。
四半期ベースへの移行を進めつつも、恒久化に向けた法令の動向は継続して確認しておくことをお勧めします。
6. よくある質問(Q&A)
Q. 今回の四半期申告への移行に対象外となる企業はありますか?
A. 原則としてすべての企業が対象となります。企業の売上規模や前年のPIT納税額などの条件にかかわらず、一元的に四半期申告へ移行・簡素化されます。
7. まとめ
今回の決議第66.16/2026/NQ-CP号により、給与・賃金所得に係るPIT申告は、企業の規模や納税額の条件を問わず四半期申告へ一元化されました。すでにeTax上で月次申告はブロックされているため、対応は「これから検討する」段階ではなく、すでに始まっていると捉える必要があります。
一方で、本措置は2027年2月28日までの時限措置であり、恒久化には今後の通達の正式発効を待つ必要があります。社内の経理フローと外部委託契約の見直しを進めつつ、法令の動向を継続的に確認していくことが重要です。
ベトナムにおけるPIT申告・給与計算の実務についてご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
- 決議第66.16/2026/NQ-CP号(2026年4月7日発行/2026年4月15日施行、2027年2月28日まで有効)
- ベトナム税務総局 電子税務システム(eTax)のアップグレード(2026年5月19日付)
- 上記は執筆時点の情報に基づきます。法律・制度は変更される場合があります。
本記事は、執筆時点(2026年5月28日)の法令・実務情報等に基づいて作成しております。法令改正や行政運用の変更等により、内容が変更となる場合があります。
また、本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言を行うものではありません。個別案件については、必ず専門家へご相談ください。
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