
お世話になっております。
TCFタイの高橋です。
今週は投資還流方法を見ていきましょう。
日本企業がタイへ進出し、タイにおいて利益を獲得した場合、この利益を留保して再投資するか、親会社(支店形態であれば日本本店)に還流するかという問題が発生します。
現地において再投資をする場合には、税務上の問題は特段生じませんが、日本にある本社または親会社へ利益を還流する場合には、その還流方法により税務上の取り扱いが異なります。
1.支店→本店の還流
日本企業がタイに支店を設置し、そこで発生した利益を日本本店へ還流する場合には、タイから送金する際に、送金総額に対して10%の利益送金税が課せられます。
この利益送金税の課税対象には、直接的に海外に利益を送金する場合以外に、利益または利益とみなされるものをタイ国外に蓄える場合も含まれます。
課税対象の金額は、以下のいずれかにより計算されます。
a.損益計算書、または国外の者への債務弁済または相殺あるいは債権の計上により算定
b.上記aの状況が明らかでない場合には、外貨送金の際の申請書の外貨額
c.上記aまたはbと同様の結果となる取引の取引額
2.子会社→親会社への還流
タイの子会社で生じた利益を日本の親会社へ還流する場合、その方法には以下のものがあります。
子会社利益の還流方法
① 配当により親会社へ還流する方法
② 親会社との取引を通じて還流する方法
・親子ローンによる利息の還流
③ロイヤルティでの還流
配当により利益還流を行う場合、タイからの支払時に10%の源泉所得税が課税されます。つまり、支払総額から10%を控除された残額が親会社へ支払われることになります。
日本の親会社側においては、「外国子会社からの受取配当等の益金不算入」の規定*により、タイ子会社から受け取る配当金は、益金不算入となります。
つまり、タイにおいて配当の総額に対して10%の源泉所得税を納め、日本側で益金不算入とすることにより、二重課税を排除する形になっています。
*日本の法人が、タイの関係会社の株式を、配当等の支払義務が確定する日の6カ月以上前から引き続いて議決権のある株式を25%以上保有している場合に、益金不算入の規定が適用されます。
また、ロイヤルティなどの取引を通じて親会社に利益を還流する場合には、移転価格税制の適用を受けるため注意が必要となります。
Q:当社は日本の法人から出資をしています。タイ法人であがった利益について、日本の親会社への還流を検討しています。タイ法人からの利益の還流方法について、簡潔に教えてください。
A:まず、利益の還流とは出資している親会社、株主に利益として戻すことを前提とします。多くの日系企業はタイに出資をし、タイでの再投資、他国での再投資の他、利益を日本に戻すケースがあります。
また、タイ企業との合弁による進出の場合には、タイ国内のパートナーへの利益還流を行うケースもあります。
利益還流を行うにはいくつかの方法がありますが、還流時の税金の取扱については留意が必要となります。
これらの際の源泉所得税についてまとめると概ね以下のようになります。
1.配当による還流時
・タイ法人⇒日本の親会社への配当:10%
・タイ法人⇒タイパートナーへの配当:10%
2.利息の支払いによる還流時
・タイ法人⇒日本の親会社への配当:15%
・タイ法人⇒タイパートナーへの配当:15%
租税条約において軽減税率が適用となるケースがありますが、現在の日本タイ租税条約においては、国内法と同率が適用となっております。
他の源泉税においても同様ですが、源泉税の徴収漏れがある場合には、自社にてグロスアップ(逆算計算)して負担しなければならない、対応が遅れる場合には利息が発生する、といった可能性がありますので、事前の計算と対応に留意が必要です。
なお、上記は配当、利息の支払い時の源泉所得税についてであり、受取る側の税金についても留意しなければなりません。
また弊社では、このような実務セミナをー2か月に一度無料で行っておりますので、
気になった方は是非一度お声がけ頂ければと思います。
以上、その他質問事項等ございましたら、お気軽にご連絡いただければ幸いです。
高橋 周平