
皆さん、こんにちは!
東京コンサルティンググループタイ拠点の松木 祐里香です!
いつもブログをお読みいただきありがとうございます。
さて、今回は「タイ会社法とは?制度体系から株主・取締役・資本制度まで完全解説【2026年最新版】」についてお話していこうと思います。
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目次
タイ会社法とは?制度体系から株主・取締役・資本制度まで完全解説【2026年最新版】
対象:タイ現地法人の設立・運営を検討する日本企業担当者 / 経営者 / 法務担当者
タイへの進出・現地法人の設立・運営を検討する日本企業にとって、「タイ会社法」の正確な理解は事業成功の大前提です。タイの会社に関する法制度は、日本の会社法とは根本的に異なる体系を持ち、株主数の最低要件・議決権の仕組み・取締役制度など、多くの場面で日本企業が「想定外」に直面するポイントが存在します。
本記事では、タイ会社法の全体像(法体系・根拠法・管轄官庁)から、株主制度・取締役制度・資本制度・配当規制・公開会社の特徴・日本との比較・最新改正動向まで、体系的かつ網羅的に解説します。
📋 本記事の構成・目次
- タイ会社法の概要と法体系
- タイの会社形態一覧
- タイ会社法上の株主制度
- タイ会社法における取締役制度
- タイ会社法の資本制度・株式制度
- 配当・利益処分制度
- 公開会社法の特徴
- タイ会社法と日本会社法の比較
- タイ会社法の最新改正動向(2025〜2026年)
- まとめ|タイ会社法を理解することが進出成功の前提
1. タイ会社法の概要と法体系
タイ会社法とは何か
「タイ会社法」とは、タイにおける会社の設立・運営・解散・株主・取締役・資本に関するルールを定めた法律群の総称です。日本のように「会社法」という単一の法典が存在するわけではなく、主に①民商法典(Civil and Commercial Code)第3編と②公開株式会社法(Public Limited Company Act 1992年)の2つの柱から成り立っています。
タイの会社法制は1925年に制定された民商法典を基礎としており、その後の経済発展に対応して公開会社法が1992年に制定されました。現在も逐次改正が行われており、2023〜2025年にかけては電子化・デジタル化対応の改正が実施されています。
- 民商法典(Civil and Commercial Code)第3編の位置付け
民商法典第3編(Book III)は、合名会社・合資会社・非公開会社(株式会社)に関する基本ルールを定める中核的な法律です。会社の設立手続き、株主・取締役の権利義務、資本・株式制度、配当・準備金、株主総会の開催要件・決議方法、解散・清算など、会社運営の根幹となる事項が包括的に規定されています。
日本企業がタイに設立する現地法人(非公開会社)の大半には、この民商法典が直接適用されます。
- 公開株式会社法との関係
1992年に制定された公開株式会社法(Public Limited Company Act)は、株式公募・上場を行う公開会社(Public Limited Company)に特別法として適用されます。民商法典に規定がない事項については、公開会社にも民商法典が補充的に適用される関係にあります。
- 管轄官庁
タイ会社法に関する行政上の主管は商務省(Ministry of Commerce)の事業開発局(Department of Business Development:DBD)です。会社の設立登記・変更登記・解散登記はすべてDBDが管轄します。なお、上場会社については証券取引委員会(Securities and Exchange Commission:SEC)も監督権を有します。
関連主要法令一覧
| 法令名 | 制定・改正年 | 主な規律対象 |
|---|---|---|
| 民商法典(Civil and Commercial Code)第3編 | 1925年制定
(逐次改正) |
合名・合資会社、非公開会社、会社の設立・運営・解散 |
| 公開株式会社法
(Public Limited Company Act) |
1992年制定 | 公開会社の設立・取締役・株主総会・ガバナンス |
| 外国人事業法
(Foreign Business Act) |
1999年制定
(2022年改正) |
外資出資規制、事業許可、ネガティブリスト |
| 会計法(Accounting Act) | 2000年制定 | 会計帳簿・財務諸表・公認会計士制度 |
| 証券取引法
(Securities and Exchange Act) |
1992年制定 | 上場会社・証券市場・開示規制 |
| 工場法・労働保護法 等 | 各年制定 | 業種別・労働分野における会社運営規制 |
2. タイの会社形態一覧
タイ会社法上、認められている主な会社形態は以下のとおりです。日本企業が現地法人を設立する場合には非公開会社が最も一般的ですが、事業目的・資金調達方法・ガバナンス要件によって最適な形態は異なります。
| 会社形態 | 根拠法 | 最低株主数 | 特徴 | 主な利用ケース |
|---|---|---|---|---|
| 非公開会社
(Private Limited Company) |
民商法典
第3編 |
3名以上 | 最も一般的な外資参入形態。株主責任は出資額限定。外国人事業法の出資比率規制適用あり。 | 製造業・サービス業・日系現地法人の大半 |
| 公開会社
(Public Limited Company) |
公開株式会社法
(1992年) |
15名以上
(設立時) |
株式公募・上場が可能。取締役5名以上・半数以上のタイ居住者要件あり。ガバナンス規制が厳格。 | 上場企業・大規模事業・公募増資が必要な企業 |
| 合名会社
(Ordinary Partnership) |
民商法典
第3編 |
2名以上 | 全社員が無限責任を負う。法人格あり(登記の場合)。 | 小規模ローカルビジネス |
| 合資会社
(Limited Partnership) |
民商法典
第3編 |
2名以上
(無限・有限各1名) |
無限責任社員と有限責任社員が混在。日本の合資会社に近い。 | ファミリービジネス・小規模事業 |
| 外国会社支店
(Branch Office) |
外国人事業法
民商法典 |
不要
(親会社が存在) |
法人格なし。親会社の債務を全額継承。法人税は源泉で完結する場合あり。タイ国内取引に制限。 | 限定的な駐在拠点・情報収集 |
⚠️ 実務上の注意 外国人事業法(Foreign Business Act)により、タイの多くの業種では外資の出資比率が49%以下に制限されています。非公開会社でワークパーミット取得のために必要な資本金額(外国人従業員1名につき200万バーツ)も、外国人事業法に基づく要件です。会社形態の選択は外国人事業法との整合性を踏まえて検討してください。
3. タイ会社法上の株主制度
3-1. 株主の権利と義務
タイ会社法上、株主は以下の主要な権利を有します。非公開会社においては、少数株主保護の観点から「株式の20%以上」を基準とする特別な権利が設けられている点が特徴的です。
- 剰余金配当請求権(配当決議に基づく)
- 残余財産分配請求権(清算時)
- 株主総会への出席・議決権の行使
- 取締役・会計監査人の選任・解任に関する議決参加
- 株主総会の招集請求権(株式の20%以上保有者)
- 会社帳簿・書類の閲覧請求権(一定の条件下)
- 定款変更・増資・減資・合併・解散等の特別決議への参加
3-2. 最低株主数の要件
タイ会社法では、非公開会社においても最低3名以上の株主を常時確保することが義務付けられています(民商法典1237条4項)。日本では株主1名でも株式会社を設立・維持できますが、タイでは株主数が3名を下回った場合、裁判所が会社解散命令を下す可能性があります。
▶ 実務上の影響 日本人1名のみでタイ会社を設立することは不可能です。タイ人株主2名以上の確保が必須であり、株主の死亡・移住・脱退に備えた後継者の事前確保が求められます。また外国人事業法の出資比率規制との調整も必要です。
3-3. 株主総会の種類と開催要件
① 創立総会
会社設立登記前に開催される株主総会で、発起人による設立手続の承認・定款の承認・初代取締役および会計監査人の選任等を決議します。
② 定時株主総会(AGM)
会社設立後6カ月以内に最初の定時株主総会を開催し、以降は年1回以上の開催が義務付けられます(民商法典1197条)。決算報告・配当決定・取締役・会計監査人の改選等が主な決議事項です。決算日後4カ月以内の開催が慣例です。
③ 臨時株主総会(EGM)
取締役が必要と認める場合または以下の事由が生じた場合に開催します。
- 会社の損失が資本金の半分以上になったとき(民商法典1172条)
- 株式総数の20%以上を保有する株主から要求があったとき(民商法典1173条)
- 会計監査人に欠員が生じたとき(民商法典1211条)
株主から要求があったにもかかわらず30日以内に開催しない場合、株主自ら招集可能となります。
3-4. 招集手続と通知要件
タイ会社法における株主総会の招集通知は、書面送付に加えて新聞での公告が義務付けられています。これは日本にはない独特の要件であり、見落としが多いポイントです。
- 普通決議事項:総会開催日の7日以上前に通知・公告
- 特別決議事項:総会開催日の14日以上前に通知・公告
- 招集通知には「場所・日時・議題」の明記が必要(民商法典1175条)
⚠️ 違反の場合 招集公告を怠った場合、会社に最大2万バーツ、取締役個人に最大5万バーツの罰金が科されます(民商法典違反)。
3-5. 定足数・決議方法
非公開会社では総株式の25%以上を保有する株主の出席が必要です(民商法典1178条)。特別決議事項については出席株主の75%以上の賛成が必要となります。
3-6. タイ会社法の議決権制度の特殊性と対策
タイ会社法で日本企業が最も注意すべき制度が議決権の付与方式です。民商法典1190条では、決議方式は原則として「挙手制(1人1票)」とされており、2名以上が要求した場合にのみ「投票制(1株1票)」に移行します。
| 決議方式 | 議決権の計算 | 具体例(日本企業98株・タイ人各1株×2名) |
|---|---|---|
| 挙手制(原則) | 1人につき1議決権 | 日本企業:1票 タイ人2名:2票 → タイ人が過半数 |
| 投票制(要求により移行) | 1株につき1議決権 | 日本企業:98票 タイ人2名:2票 → 日本企業が圧倒的多数 |
出資比率98%を保有する日本企業であっても、挙手制が適用された場合にはタイ人株主2名に議決権で劣後するリスクが生じます。以下の対策が実務上用いられています。
- 対策①:定款に「株主総会の決議は投票による」旨を明記し、投票制を原則とする
- 対策②:定款に「決議は議決権の52%以上の賛成を要する」と規定し、一方的決議を防止する
- 対策③:議決権制限付き優先株式をタイ人株主に割り当て、議決権比率を調整する(規制動向を要確認)
- 対策④:互いに利害関係が一致しない複数のタイ人株主に株式を分散保有させる
4. タイ会社法における取締役制度
4-1. 取締役の人数と選任要件
非公開会社では最低1名以上の取締役が必要です。国籍・居住地に関する制限はありません。公開会社では5名以上の取締役が必要で、かつ半数以上がタイ国内居住者でなければなりません(公開会社法第6条・第7条)。なお、業種によってはタイ人取締役の割合が別途規定される場合があります(運送業・倉庫業等)。
4-2. 取締役の選任・解任
取締役の選任・解任はいずれも株主総会の決議によります。選任は普通決議(非公開・公開会社共通)、解任は非公開会社が普通決議・公開会社が特別決議(公開会社法第76条)です。公開会社で解任に特別決議を要するのは、軽率な解任を防ぐ株主権濫用抑止の趣旨です。
4-3. 取締役の任期
タイ会社法上の取締役任期は原則1年、定款で別段の定めがある場合は最長3年です(民商法典1152条)。また、毎年3分の1ずつ改選することが義務付けられており(民商法典1153条・公開会社法71条)、任期の長い取締役から改選対象となります。再任は可能です。日本(原則2年・非公開会社は最長10年)と比較して、タイの取締役任期は大幅に短く設定されています。
4-4. 代表権・サイン権の設定
タイには日本の「代表取締役」という概念がなく、誰がいかなる権限でサインできるかを、定款および取締役会決議で明確に規定する必要があります。
- 一定金額以下の銀行決済権のみを現地スタッフに付与
- 少額専用銀行口座を別途開設し、その口座に限定して権限を付与
- 日本側とタイ側の連名署名でなければ効力を生じない設定(機動性は低下)
- すべての権限を日本人駐在員のみに集中させる場合、出張等で不在時に業務が停滞するリスクを考慮
4-5. 取締役会の設置義務
非公開会社には取締役会の設置義務はありません。一方、公開会社は取締役会を設置し、3カ月に1回以上の開催が義務付けられます(公開会社法第67条・第79条)。取締役会の決議は取締役の過半数出席・頭数多数決(1人1票)で行われ、特別利害関係を有する取締役には議決権が認められません。
4-6. 取締役の責任
取締役は会社に対して善管注意義務・忠実義務を負います。会社の損害について取締役の故意または重大な過失が認められる場合、会社に対する損害賠償責任が発生します。公開会社の取締役は、会社との利益相反取引・自社株式保有状況の取締役会への報告義務も課されています(公開会社法第88条)。
5. タイ会社法の資本制度・株式制度
5-1. 資本金規制と額面株式制度
タイ会社法上、法定の最低資本金額は定められていません。ただし、外国人事業法に基づきワークパーミット(就労許可)を取得するためには、外国人従業員1名につき200万バーツの資本金を確保する必要があります。
タイは額面株式制度を採用しており、非公開会社の最低額面価額は1株当たり5バーツです(民商法典1117条)。実務上はローカル企業が1株100バーツ、日系企業が1株1,000バーツとするケースが多く見られます。
5-2. 株式の種類
タイ会社法では普通株式と優先株式の2種類を発行することができます(民商法典1108条)。
優先株式については、民商法典に明文規定がなく、議決権の取扱いについても普通株式と異なる設計が可能です。この柔軟性を利用して、議決権制限付き優先株式をタイ人株主に割り当て、外資規制下でも日本側が実質的な支配権を維持する手法が用いられてきました。ただし、近年外国人事業法との関係で規制の動きがあるため、専門家への相談が必要です。
重要な制限として、優先株式の発行は新株発行時(会社設立時または増資時)のみ可能で、既存の普通株式を優先株式に変更すること、および完全無議決権株式の発行はいずれも認められていません(民商法典1142条)。
5-3. 増資手続
既存株主の保有割合に応じた株式割当(プロラタ増資)が原則です。増資は株主総会の特別決議が必要で、以下の手続を経ます。
- ① 株主総会特別決議で増資を決定
- ② 14日以内に商務省事業開発局(DBD)へ議事録を提出(民商法典1228条)
- ③ 全株主に割当株数・申込期限を通知(民商法典1222条)
- ④ 期限内に申込がない場合、取締役が他の株主に引き受けさせるか自ら引受け
- ⑤ 株主からの払込
- ⑥ 定款変更の登記
📌 2015年4月施行の手続変更(重要) 増資後の資本金が500万バーツを超える場合、手続の順序が変更されました。【500万バーツ以下】株主総会 → DBD申請 → 払込 【500万バーツ超】株主総会 → 払込先行 → DBD申請(着金証明書の添付が必要)
5-4. 減資手続
減資には株主総会の特別決議が必要です(民商法典1224条)。登録資本金の4分の1未満には減資できません。債権者保護のため、新聞公告・全債権者への通知・異議申立期間(30日)の確保が義務付けられており、増資より手続期間が長くなります。
実務上、資本金を500万バーツ以下に抑えることで法人税の軽減税率適用(通常税率20%が適用免除・段階的軽減)が受けられるため、利益が安定した段階での減資検討も有効な戦略です。
5-5. 株式譲渡制限
非公開会社では定款に株式譲渡制限を設けることが可能です。取締役会の承認を要件とする設計が一般的で、望ましくない第三者への株式移転を防止する機能を持ちます。公開会社では株式の自由譲渡性が保障されており、定款による譲渡制限は認められません。
6. 配当・利益処分制度
6-1. 配当の決定方法
タイ会社法では、配当は原則として株主総会の決議によって決定されます(民商法典1201条)。ただし、定款に定めておくことで、会社に十分な利益がある場合には取締役会決議のみで期中配当(中間配当)を実施することも認められています(民商法典1201条、公開会社法115条)。配当額は保有株式数に比例して決定するのが原則です。
6-2. 配当制限と欠損填補
累積損失(繰越欠損金)が計上されている場合、その損失が解消されるまで配当は禁止されます(民商法典1201条)。これは日本の分配可能額規制と同様の趣旨ですが、タイでは累積損失の存在が就労ビザ(Bビザ)の更新拒否事由となる場合もあり、実務上は早期の損失解消(増資による資本充実等)が重要です。
6-3. 法定準備金の積立義務
非公開会社・公開会社共通で、登録資本金の10%以上に達するまで、配当金額の5%以上を法定準備金(Legal Reserve)として積立てることが義務付けられています(民商法典1202条)。
公開会社はさらに厳格な規制があり、登録資本金の10%に達するまでの間、配当の有無にかかわらず年間利益の5%を利益準備金として積立てなければなりません。この準備金は清算時まで取り崩すことはできないと解釈されています。
6-4. 違法配当の効果
会社に利益がないにもかかわらず配当が行われた場合、会社の債権者はその事実を知っていた株主に対して配当の返還を請求できます(民商法典1203条)。違法配当の事実を知らなかった株主は返還義務を負いません。
7. 公開会社法(Public Limited Company Act)の特徴
7-1. 公開会社とは
公開株式会社(Public Limited Company:PLC)とは、1992年制定の公開株式会社法に基づき設立された会社形態で、株式の一般公募・証券取引所への上場が可能な会社です。設立時に15名以上の株主が必要であり、非公開会社と比べてガバナンス規制が厳格に課せられます。
7-2. 非公開会社との主要な相違点
| 項目 | 非公開会社(Private Co.) | 公開会社(Public Co.) |
|---|---|---|
| 根拠法 | 民商法典第3編 | 公開株式会社法(1992年) |
| 最低株主数 | 3名以上 | 15名以上(設立時) |
| 取締役要件 | 1名以上、制限なし | 5名以上、半数以上がタイ居住者 |
| 取締役会開催 | 義務なし | 3カ月に1回以上開催義務 |
| 株式公募 | 不可 | 可(証券取引法適用) |
| 監査委員会 | 任意 | 必置(独立取締役要件あり) |
| 財務諸表開示 | 登記所への提出のみ | 証券取引委員会・一般公衆への開示 |
| 特別決議要件 | 議決権の75%以上 | 議決権の2/3以上 |
7-3. 上場会社への追加規制
タイの証券取引所(SET)または新興株式市場(MAI)に上場する公開会社は、公開会社法に加えて証券取引法(Securities and Exchange Act 1992年)が適用され、タイ証券取引委員会(SEC)の監督下に置かれます。上場会社は四半期・年次財務諸表の公表・独立取締役の設置・監査委員会の設置・コーポレートガバナンスコードへの準拠等が求められます。
8. タイ会社法と日本会社法の比較
日本の会社法(2005年制定、2023年改正)とタイ会社法(民商法典・公開会社法)を主要項目で比較します。制度の構造的違いを把握することで、タイ現地法人運営におけるリスク管理・コンプライアンス設計に役立てください。
| 比較項目 | タイ会社法(非公開会社) | 日本会社法(株式会社) |
|---|---|---|
| 最低株主数 | 3名以上(民商法典1237条4項) | 1名以上(1人株主可) |
| 最低資本金 | 法定最低額なし
(ワークパーミット要件:外国人1名につき200万バーツ) |
法定最低額なし(実質1円会社可) |
| 取締役最低人数 | 1名以上(国籍・居住地制限なし) | 1名以上(取締役会設置会社は3名) |
| 取締役任期 | 原則1年、最長3年
(毎年1/3改選義務) |
原則2年、非公開会社は最長10年 |
| 株主総会決議方式 | 挙手制(1人1票)が原則
投票制は2名以上の要求で移行(1株1票) |
1株1議決権の投票制が原則 |
| 特別決議要件 | 議決権の75%以上の賛成 | 議決権の2/3以上の賛成 |
| 法定準備金 | 登録資本の10%達成まで
配当額の5%以上を積立義務 |
資本準備金・利益準備金合計が
資本金の1/4達成まで |
| 会計監査人 | 規模・業種を問わず全社必置 | 大会社・上場会社のみ必置 |
| 株主総会招集通知 | 書面通知+新聞公告の双方が必要 | 書面通知のみ(非公開会社は省略可) |
| 自己株式取得 | 原則禁止
(公開会社のみ一定条件下で可) |
財源規制内で取得・保有可 |
💡 最重要ポイント タイ会社法で日本企業が最も注意すべき相違点は①最低株主数(3名以上)と②挙手制による議決権(出資比率≠議決権比率)の2点です。これらは現地法人設立時の定款設計段階で適切な対策を講じておくことが、後の紛争を防ぐ最善策です。
9. タイ会社法の最新改正動向(2025〜2026年)
9-1. 電子株主総会(E-Meeting)の制度化
COVID-19を契機に、2020年に緊急措置として認められた電子株主総会が、その後も恒久的な制度として運用されています。2022年以降、オンライン形式または対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド形式での株主総会が、非公開会社・公開会社ともに認められるようになりました。
電子株主総会を実施する場合、セキュリティ要件・議決権行使の記録保存・参加者の本人確認手続等について、商務省事業開発局(DBD)のガイドラインへの準拠が求められます。
9-2. デジタル申請・電子登記の拡充
DBDは2023〜2024年にかけて、会社設立・変更登記・解散登記に関するオンライン申請システム(e-Registration)を大幅に拡充しました。現在では会社設立に関する多くの手続きをオンラインで完結させることが可能となっており、従来の書面郵送手続の削減・処理期間の短縮が実現しています。
9-3. 外国人事業法改正の動向(2024〜2025年)
外国人事業法については、2024〜2025年にかけて改正議論が進んでいます。規制対象業種の見直し・外資優遇措置の拡大・デジタルビジネスへの対応等が検討されており、タイ政府は外国投資誘致を目的とした外資規制の緩和方針を示しています。ただし、制度確定には至っておらず、最新情報の継続確認が必要です。
9-4. 優先株式・議決権設計への規制強化動向
外国人事業法の趣旨を没却するとして問題視されてきた、タイ人名義株主・議決権制限付き優先株式を活用した外資支配の手法に対して、商務省・内務省が連携した取締強化が2023〜2024年に進みました。実質的支配者(Beneficial Owner)の登録義務が強化されており、名義貸しを利用した外資規制迂回行為は刑事罰の対象となります。
📌 2026年時点の実務上の注意 優先株式・名義株主を活用した支配権設計は、現行規制下では法的リスクが高い手法です。タイ当局の執行強化が続いており、新規設計・既存スキームの見直しには、タイ法律専門家への相談が不可欠です。
9-5. ESG・サステナビリティ開示への対応
タイ証券取引委員会(SEC)は2024〜2025年にかけて、上場会社に対するサステナビリティ開示(ESG報告)の義務化を段階的に進めています。非公開会社への直接的な義務化は現時点では限定的ですが、大規模な取引先上場企業の要求に応じたサプライチェーン全体でのESG対応が求められるケースが増加しています。
10. まとめ|タイ会社法を理解することが進出成功の前提
タイ会社法(民商法典第3編・公開株式会社法)は、日本の会社法とは根本的に異なる制度設計を持っています。日本企業がタイ現地法人を設立・運営する際に特に把握しておくべき重要ポイントを整理します。
① 株主制度の特殊性
非公開会社でも最低3名の株主が必要であり、挙手制(1人1票)が議決権のデフォルトとなります。出資比率≠議決権比率という現実を定款設計段階で制御しておくことが、経営上の安定を確保する最重要事項です。
② 取締役制度と代表権管理
タイには「代表取締役」という概念がなく、サイン権の範囲を定款と取締役会決議で明確に設計する必要があります。取締役の任期は最長3年・毎年1/3改選という短いサイクルも、人事計画に組み込む必要があります。
③ 資本制度・増資の実務
ワークパーミット取得や累積損失対応のために増資が必要になるケースが多く、2015年改正による払込先行ルール(500万バーツ超の場合)を含む手続きを正確に把握しておく必要があります。
④ 法定準備金と配当規制
累積損失がある間は配当が禁止され、配当可能な状況でも法定準備金(配当額の5%以上)の積立義務が続きます。キャッシュフロー計画に必ず組み込んでください。
⑤ 最新改正への継続対応
電子株主総会の制度化・デジタル登記の拡充・外国人事業法改正・ESG開示対応など、タイ会社法をめぐる制度環境は2025〜2026年にかけて大きな変化の途上にあります。最新情報の収集と専門家によるアドバイスの継続が不可欠です。
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※ 本記事は2026年2月時点の情報に基づいています。法令は随時改正される可能性があるため、実際の業務には必ずタイの法律専門家にご相談ください。
根拠法令:民商法典(Civil and Commercial Code)第3編・公開株式会社法(Public Limited Company Act B.E.2535/1992年)・外国人事業法(Foreign Business Act B.E.2542/1999年)
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