シンガポールにおけるパートタイムの働き方をおさらい!

労務

日本と違い、正規・非正規と雇用形態を区別しないシンガポールですが、全く雇用形態の別が存在しないわけではありません。

シンガポールの労基法、雇用法(The Employment Act)によって、明確に区別されているのがフルタイム・パートタイムの区別です。

今回はパートタイムの従業員に適用される規則をおさらいしながら、気を付けたい法的要件をお伝えします。

 

 

パートタイムの定義は?

日本では、正社員でない定時の働き方をする従業員を「パートさん」と呼ぶことが多いですが、シンガポールでは正社員という扱いは存在しません。

全ての社員は契約で働く従業員と規定したうえで、雇用法上パートタイム・ワーカーとは、一週間の勤務時間が合計35時間(実働時間で休憩時間を含まない)に満たない従業員と定義されています。

週休二日制のところがほとんどだと仮定すると、週合計35時間とは一日平均7時間を指し、それ以上の従業員をフルタイム、一日7時間未満の従業員をパートタイム、と区別していることになります。

従って、パートタイムだから管理職になれない、ということもなければ、昇給や人事評価の上でも当然に対象となる点に注意が必要です。

 

 

契約書が違う?

フルタイムとパートタイムの雇用における決定的な違いは、その給与体系と言えます。

具体的には、フルタイムが多くの場合月給制であり、勤務日数をベースに給与が計算されるのに対して、パートタイムは給与支給が月一回でも時給計算で計算されることになります。

そのため、契約書にも時給がいくらで、時間当たりの手当てがいくらで、一日何時間勤務で週何日勤務なのか、明記する必要があるとされています。

 

 

残業の計算は?

パートタイムの従業員に残業が許されないわけではありません。

雇用契約書で規定された一日当たりの就労時間を超えたとき、どのように時給が計算されるかについては、契約締結時に話し合って決めるべき事項と定められています。

しかし、雇用法上定められる残業の規定が無視できるかというと、そうではありません。

就業時間と残業を規定する雇用法第4部は、月額給与がS$2,600以下のすべての従業員に適用されると理解されています。つまり、パートタイムの従業員は、そのほとんどが対象になると言えるでしょう。

 

ここで、雇用法により規定される残業とは、フルタイムの従業員が通常勤務する時間を超えた時間を指します。

 

例えば、一日実働8時間でフルタイムの就業時間が組まれている場合、通常一日5時間勤務のパートタイムの従業員については、5時間を超えても8時間までは通常の時給で、8時間を超えた分は通常の時給の1.5倍で、それぞれ計算されることになっています。

 

これを最低限の規則として、個々の従業員に対し、何時間までの勤務はいくらの時給にするのか、といった取り決めをしていくことが求められます。

 

 

休日の考え方は?

もう一つ、シンガポールの法律で注意したいのが、パートタイムでも休息日(Rest day)がなくてはならない、というルールです。

シフト制で働く場合には、毎月のシフトを明確にするとともに、少なくとも週に一日は勤務のない休息日が与えられなければならないとされています。

もし、この休息日に働くことになったら、通常一日当たりの勤務時間分に関しては、半日単位で倍の時給で計算した給与を支払うことになります。

 

祝日の考え方は?

更にややこしいのが祝日(Public holiday)の対応です。

働いていないけれども宗教行事に参加して働いたものと見做すのが祝日の扱いですので、通常は働いた時間数だけ時給計算して給与を支給するのがパートタイムですが、祝日に関しては働いていなくとも給与が発生するということになります。

一週間当たり、何時間働くかという数字から、一日当たりの勤務時間を計算し、これに時給をかけて祝日の給与と計算します。

当然、その日に働いたらそれはそれで別に給与計算し、上記祝日の給与と併せて支給することになります。

 

 

休暇の計算は?

最後に、年次休暇(Annual leave)その他の休暇についてです。

パートタイムの従業員にも、フルタイムの従業員と同じように、一定数の年次休暇・病気休暇、その他を付与する義務が生じます。

こちらも、日数などは雇用契約に明示されるよう、雇用者と従業員との間で取り決めるものとされています。

 

しかし、例えば年次休暇を7日付与するとして、実際には働いた時間数だけ給与が付与されるパートタイムの従業員にとっては、年休の使用は働かずして一日分の給与をもらったのと同じになります。

 

つまり、パートタイムの年次休暇は、無条件で付与日数分の給与を増加させるのと変わらなくなります。

形式的には、年次休暇を申請式にして、使用される都度実働時間に足し入れて給与計算に組み入れることもできますが、事実上は付与されると同時に対応する時間数の給与を支給してしまっても結果は同じです。

 

このため、雇用法もパートタイムの従業員の年次休暇については、原則として買い取り(Encashing)が可能であると規定しています。

 

以上、パートタイムの従業員の規則を見てきましたが、シンガポールは多人種、多国籍、多言語で活動する人々で成り立っているため、平等を強く意識したルール作りがされていると言えるでしょう。

 

労務に関するお問い合わせはもちろん、会計や税務に関するお問い合わせも、お待ちしております。

 

株式会社東京コンサルティングファーム  シンガポール法人
近藤貴政

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2019-10-23

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