シンガポールに進出した会社において、一時的に商業活動を停止させることは珍しいことではありません。そんな時便利なのが、休眠会社(Dormant Company)という制度です。
会社法(Companies Act 201A.-(1))によれば、設立時、または前賦課年度末から、会計上の取引が発生しない場合、休眠会社として扱われます。
ただし、ここで言う「会計上の取引」は以下二つの当局により若干定義が異なるため注意が必要です。
1.IRAS(税務局)
一賦課年度中一切の収益、収入
2.ACRA(登記官庁)
一賦課年度中、以下の費用支払いを除く一切の収支
・会社秘書役(company secretary)の選任
・会計監査人(auditor)の選任
・登記住所(registered office)の維持
・登記書類(registers)及び会計帳簿(books)の保持
・ACRAへの登記手数料(fees to the Registrar)、罰金(fine and default penalty)の支払い
・会社定款(memorandum)の規程に従った株式引き受け(taking of shares)の実行
休眠会社に該当する場合、所得税申告(Form C-S/Cの提出)が免除されるためには、更に以下の4つの条件を満たしている必要があります。
1. 休眠会社となるまでの財務諸表提出、所得税申告が行われている。
2. 投資資産(株式、不動産、定期預金等)を保有していない。
3. GST登録を行っていない、又は解除している。
4. 2年以内に事業を再開する見通しがない。
すべての条件に該当する場合、所得税申告放棄申請書(Waiver of Income Tax Return Submission)を提出すれば、IRASに対する所得税申告が免除されます。提出方法は下記二つです。
1.電子申請(e-Application)
EASY(電子サービス権限付与システム)において、アクセス権限保持者(Approver)を登録し、オンライン申請する。
2.書面申請(Hardcopy Application)
下記ホームページからダウンロード、1ページ目必要事項記入の上、IRASに所得税申告放棄申請書(Application for Waiver of Income Tax Return (Form C-S/ C) Submission by a Dormant Company)を提出する。
リンク:
なお、申請が受理された後2か月以内に書面で承認か否かの結果が通知されます。
休眠会社として上記手続きを完了すれば、IRASへの所得税申告の他、会計監査実施、及び監査報告書の提出が免除されます。
一方、ACRAが管轄する以下二つの義務は免除されません。
1.年次総会の開催
2.年次報告書の提出
また、休眠していても登記住所、書類、会社秘書役の維持のために、毎年一定の費用がかかることには注意が必要です。
なお、事業再開においては、収益発生から1か月以内に下記ホームページからダウンロードできるフォームを記入、提出することで、休眠状態を解除することができます。
リンク:
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近藤貴政
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