シンガポールの個人所得税~申請書類解説~

税務


シンガポールの個人所得税~IR8A解説

 

シンガポールの個人所得税は、Auto-Inclusion Scheme(AIS)の導入やmyTax Portalの一般化により、いわゆる税務の専門家でなくとも多くの場合困らない体制になってきています。

 

しかし、駐在員としてシンガポールで働く外国人の大部分が、母国での給与支給や海外駐在のための福利厚生を用意されているため、その内容は複雑なものが多くなっています。

 

今回は、2021年現在、日本人駐在員の個人所得税で一般に関わる申告書類、IR8AとAppendix 8Aの項目を解説しながら、シンガポールにおける税務上の扱いをまとめてお伝えします。

個人所得税申告書の種類

 

シンガポールの個人所得税申告には、以下4つの申告書類が用意されています:

・IR8A:従業員として雇用者から受取る所得を記載

・Appendix 8A:現物支給としてIR8Aに含まれる金額の詳細を記載

・Appendix 8B:ストックオプションなどにより利益を得た場合に詳細を記載

・IR8S:CPFを法定の基準以上に納付し、その還付を求める場合に詳細を記載

 

それぞれ、Word版がシンガポール税務当局IRASのウェブサイトでダウンロードできます:

https://www.iras.gov.sg/irashome/Businesses/Employers/Reporting-Employee-Earnings–IR8A–Appendix-8A–Appendix-8B–IR8S-/

 

この中、多くの海外駐在員で提出が必要になるのが上の二つ、IR8AとAppendix 8Aです。

 

シンガポール国内で永住権などを保持し、現地採用として働く方の場合は、ナショナルスタッフ同様、IR8Aのみの提出となることが多いです。

IR8Aの項目

 

まず、所得は以下の4つに大分されます:

  1. a) Gross Salary, Fees, Leave Pay, Wages and Overtime Pay:給与、残業代等
  2. b) Bonus:賞与
  3. c) Director’s Fees:取締役報酬
  4. d) Others:その他手当等

 

それぞれ、上から注意点を見ていきましょう。

  1. a) Gross Salary, Fees, Leave Pay, Wages and Overtime Pay:給与、残業代等

 

給与には、シンガポールでの勤務に対してであれば、日本など外国で支給された給与も含みます。

 

給与の一部を日本の本社で支給されているような場合、シンガポールドルで毎月固定の金額を日本円換算して支給するのであれば、元々のシンガポールドル金額を記載すれば問題ありませんが、日本円で固定された金額が支払われるような場合、各月のレートを定めてシンガポールドル換算して金額を算定することが必要になります。

 

適用レートについては、シンガポール中央銀行MASの為替レートを用いて計算するといいでしょう:

https://eservices.mas.gov.sg/Statistics/msb/ExchangeRates.aspx

 

※母国での支給額

 

なお、駐在員が母国の本社やその他グループ会社で支給される所得全般に言えることですが、シンガポールでの就労に対する所得は原則シンガポールの雇用者が負担することとされており、他国で負担された場合、その国の個人所得税が発生したとしても、その金額はシンガポールの課税所得から控除することができず、二重課税を免れ得ません。

 

具体的な例として、シンガポールでSGD5,000、日本でJPY200,000の月額給与を受け取っている駐在員の方には、日本での給与支給に対して所得税(場合によっては住民税も)が発生します。

 

控除されたこちらの金額について、日本で納税しているからといって、日本で支給されたJPY200,000分を課税所得から控除することはできず、シンガポールでも課税され、同じ金額が二重課税になります。

  1. b) Bonus:賞与

 

賞与は、雇用契約で一定額支給することが決まっているもの(Contractual bonuses)と、それ以外のもの(Non-contractual bonuses)に分けられ、前者には支給の時期の記入が求められます。

 

この賞与金額をa)の給与所得と区別するのは、賞与が多く変動する性質を持ち、従業員の給与を管理する上で、賞与、特にNon-contractual bonusesは度外視して考えるべき要素に当たるためと考えられます。

  1. c) Director’s Fees:取締役報酬

 

取締役に就任していることに対して、株主総会などで報酬を決めて支給を受けている場合に記載しますが、シンガポール法人の取締役としての報酬に限定される点に注意が必要です。

 

具体的には、例えば日本法人でも取締役、シンガポール法人でも取締役として任命されていて、それぞれ報酬を受け取っているケースが考えられます。

その支給場所にかかわらず、シンガポール法人の取締役として受け取る報酬のみがシンガポールで課税所得となります(日星租税条約第16条)。

 

また、取締役報酬は、どの年度に取締役であったことに対する報酬であるかによって、課税所得として申告すべき年度が異なりますが、株主総会により遡及的に決定される場合には、一律株主総会が開催された年度の所得として算入することになる点に注意が必要です。

  1. d) Others:その他手当等

 

その他手当等には社会保険料など多くの要素が関わります。

 

特に、日本法人による取り扱いが、シンガポールではどのように解釈されるのか、その対応について理解を深める必要があるでしょう。

 

次回は、このd) Othersについて詳述します。

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