取締役・財務役・秘書役に、フィリピン人社員を任命するリスク①

法務

 

いつもお世話になっております。東京コンサルティングファーム・マニラ支店の早川でございます。フィリピンの現行会社法上で特徴的なのが、会社の体系です。取締役5名、財務役、秘書役というものを任命せねばなりません。取締役会の過半数はフィリピン居住者でなければならなかったり、外資規制がある場合には外資比率に準じてフィリピン国籍の方を取締役に選任しなければならなかったり、秘書役はフィリピンに居住するフィリピン人でなければならなかったり、といった決まりがあります。

 

フィリピン人社員の方や、外部の弁護士の方にこれらの役職を任命することになるのですが、その際のリスクを考慮した上で、信頼できる方を選ばなければなりません。特に怖いのが、選任した方が、最初は物分かりもよく会社の方針に従っていてくれていたのに、後から…例えば利益が出てから、自分はもっと報酬をもらうべきだ、などと主張し始め、会社が必要な書類への署名をしなくなるといった事態です。その事態を想定してリスクを考えます。

 

<取締役(株主)のリスク>
取締役に選任するということはすなわち株主となるということです(現行の会社法上、取締役は最低1株以上保有しなければならない)。通常、(パートナーではなく)フィリピン人社員の方に持たせるのは1株ですので、ここにおいてもその前提でお話いたします。

取締役会は原則として、会社の能力を行使し、事業を遂行し、会社の資産を管理し保有する権限を有する、というのが会社法で定められております。具体的には、定款の変更にあたる、増資・減資、住所移転、会社名変更や、配当・財務政策の決定や、社長やその部下に対する管理権限の委譲当の決定などを取締役会で決めることになっております。
ただし基本的に、取締役会の過半数の賛成を得られれば決議は出来ます。例外として、秘書役または財務役の選任の決議に関しては、取締役会全員の賛成が必要となります。

 

つまり、だいたいの会社の決定事項は、万が一取締役のうちの1名が反対したとしても、他の過半数以上が賛成していれば進めることができる、ということです。

一方で株主としての側面も見なければなりません。取締役になるということは会社の最高意思決定機関である株主総会の一員となるのですが、株主総会も、発行済み株式数の3分の2以上あるいは過半数の議決権(=1株1議決権)があれば決議できますので、1議決権しか持っていない方が反対したとしても、大きなネックにはなりません。

 

それでも心配、という場合には、配当を放棄する旨の宣誓書に最初に署名させたり、あらかじめ株式を明け渡す譲渡証書を作成し署名させておいたりといった、前もっての準備もできます。

 

次回の記事では、財務役・秘書役に任命するリスクを解説いたします。

 

 

東京コンサルティングファーム・マニラ拠点
早川 桃代

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