フィリピン 現地駐在員への社宅・社用車の付与で、追徴課税?!

経営

 

こんにちは、Tokyo Consulting Firm Philippine Branchの大橋 聖也です。

【1分でわかるフィリピン進出のイロハ】
No.67<現地駐在員への社宅・社用車の付与で、追徴課税?!>

今回は、【社宅・社用車の取扱い】をご紹介します。

 

フィリピン日系子会社の税務コンプライアンスチェックにあたって、追徴課税を受ける可能性が高い一つの項目が、社宅・社用車といった駐在員手当の取扱いです。

まず大前提として、フィリピンでは源泉税の一つに管理職の従業員が会社から受け取る現物給付に対して課税される、付加給付税(Fringe Benefit Tax通称:FBT)というものがあります。
日本にはないフィリピン特有の税目であるため、知らずに課税対象、かつ未申告となっている日系企業が多く見受けられます。

 

■FBTとは何か
FBTは、管理職クラスの給与所得者が負担すべき支出を会社経費とすること(現物給付)で、個人所得税を逃れようとするのを防ぐための税制として、1998年より導入されました。

課税対象となる現物給付には、社宅や個人利用の車両、ドライバーやメイドさんの使用料、海外渡航費、教育補助費などが対象となります。

但し、会議の為の海外渡航費、事務所から50m以内の住居や出張者用の社宅といった事業との関連性があり、業務の遂行上必要なものとして雇用者が利便を得るものと判断される場合は、対象外となります。

例えば、社用車について、ある特定の管理者のみ使用する権限を有し、営業目的や通勤目的以外に、土日でのプライベートなどで使用する場合は、FBTとみなされる可能性が高いのでご注意下さい。

 

■FBTの計算方法と申告時期
また、付加給付税の源泉徴収税額の算定にあたって、まず貨幣価値額を算定します。
次に当該価値額を一定の割合(65%)で除し、課税標準を求めます。
そして、課税標準に所得税の最高税率である35%をかけたものが付加給付税の納税額となります。

次に、申告に関しては、四半期ごとにBIR Form 1603を四半期月の翌月末、期末にはBIR Form 1604CFを翌年1月31日までに申告納付する必要があります。

上記を前提に、社宅と社用車に関しては大きく2通りの処理方法が考えられます。

 

■社宅の取り扱い(事務所から50m以内の住居ではない場合)
<会社経費(Rental Expense)とみなした場合>
・FBT(付加給付税)として35%の税金が発生
・EWT(拡大源泉税)として5%の税金が発生
*EWTについては、年次の法人税申告時にCWT(控除対象源泉税)として控除可能
・Rental Expense並びにFBTは、現地法人で損金計上可能

<個人のベネフィット(Compensation)とみなした場合>
・FBTの代わりにWTC(給与にかかる源泉税)が発生
・Compensationは、現地法人で損金計上可能

 

■社用車(レンタル)の取り扱い
・現物給付とみなされた場合は、FBT課税
・事業運営に伴う費用である場合は、Rental Expenseとして費用処理
・EWT(拡大源泉税)として5%の税金が発生
※ドライバー付きの場合は、EWTが2%となります。

 

<検討のポイント>
FBTの場合は、家賃分を貨幣価値額とし、当該貨幣価値の50%に対して、65%を除した額に、所得税の最高税率35%が課税されます。
一方で、2018年の税制改正を受けて、所得税の新ブランケットでは課税所得が8百万ペソを超える場合に35%の対象となります。
つまり、8百万ペソを超えない場合は、32%以下の課税となり、FBTに比べてコストの最適化できる余地が考えられます。

また、契約書の名義が駐在員個人として日本本社で実質負担とする場合には、フィリピン現地でFBTを課税される可能性は少ないですが、当然、社宅や社用車の費用を現地法人で費用計上することは出来ません。

 

<検討のポイント>
こちらの注意事項としては、日本側の税務当局の基本的な見解として、労務の提供が実際に行われている現地企業側で給与やその他駐在員にかかる費用を負担すべきものとなっており、日本側での現地費用負担については寄付金課税のリスクがあると考えられます。
※駐在者に対する給与にかかる出向格差補填分については別段の定めにより一部認められます。

また、複数の海外子会社を有する企業の場合は、フィリピン以外にASEANなどに拠点があり、仮にそちらで今回のような負担が生じていない場合、その点についても日本の税務当局側で他拠点との取扱いが違う、という指摘をするものと想定されます。
*日本側の税務リスクにつきましては、貴社顧問税理士にご確認頂ければと存じます。

 

このようにフィリピン現地駐在員に対する手当の取扱いを含め、事前の税務調査への対応が日系企業にとって重要性を増していくことでしょう。
という事で、4月22日、弊社東京オフィスにて「フィリピン税務調査セミナー」の開催します。
お時間ある方は是非ご参加ください。

 

最後に、2017年9月に弊社フィリピン本の第2版が、出版されました。
フィリピンへの進出実務を最新の情報にアップデートすると共に、弊社フィリピン拠点における6年間のコンサルティング実務の経験を盛り込んでまとめ直したものとなります。
中でも本著はフィリピンの基本的な投資環境から、設立法務、会計税務、人事労務、M&Aに至るまでフィリピンでのビジネス展開に必須な情報を網羅的に収録していますので、
是非、本屋又は弊社宛にお問合せ頂き、手に取っていただけますと幸いです。

 

今週もどうぞよろしくお願い致します。

 

 

Tokyo Consulting Firm – Philippine Branch
大橋 聖也

2012年、東京コンサルティンググループに入社。中小企業の発展、会計業界の生き残りを掛けて、社外CFOとして社長のビジョン実現をサポートする、ビジョナリーコンサルティングを立上げに奮闘。社長の抱えるお困り事解決すべく経営理念の策定・経営会議のファシリテート・財務分析等の支援を行う。2016年10月より、フィリピン支店の拠点長として世界に活躍のフィールドを拡げ、真の顧客貢献を目指す。

 

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