こんにちは、Tokyo Consulting Firm Philippine Branchの大橋 聖也です。
【1分でわかるフィリピン進出のイロハ】
No.72<フィリピン寄付金課税と親子間取引の注意点とは?!>
今回は、【贈与税(Donor’s Tax)と親子間取引の取扱い】をご紹介します。
フィリピン日系子会社の税務コンプライアンスチェックにおいて、贈与税(Donor’s Tax)、とりわけ親子間取引における寄付金課税の取扱いは日本親会社にとっても重要なテーマとなります。
まずは、フィリピン国内における寄付金課税についてです。
フィリピンでは日本と異なり、寄付者・贈与者側が申告・納税義務を負います。
例えば、株式や不動産等の資産を個人・法人が時価相当額より低額で譲渡した場合において、原則、時価と譲渡対価の差額に対して寄付金課税が行われます。
申告期限は、寄付・贈与の日から30日以内となります。
また、2018年の第一弾税制改革で、寄付金課税に関しても抜本的な見直しがなされています。
旧税法では親族に対する贈与は累進課税・第三者の贈与は30%の固定レートであったものが、新税法では受益者に関わらず25万ペソを超える場合に一律6%に置き換えられ、減税が図られました。
また、税法第100条には、寄付の意図がない場合は、当該取引は寄付金課税の対象とならないことが明確化されていますので、納税者にとっては、通常の取引で市場価格より低い値段で取引したとしても寄付金の意図がないことを立証すれば寄付金課税の対象外となる機会が与えらることになります。
次に、親子間取引において寄付金課税リスクが発生するケースをみていきます。
*下記のケースに該当する際は、日本親会社の税務顧問に確認するのが良いでしょう。
1)スタートアップ時
日本からフィリピン立ち上げのために出張などで現地に滞在する場合に、その経費負担をどのように決めるかが問題になります。
一般的に、会社設立前の費用については日本親会社で負担、会社設立後の費用についてはフィリピン子会社で負担というケースが多いですが、スタートアップ時にフィリピン子会社で赤字が続くような場合に、日本側で費用負担をしてしまうケースがあります。
本来、日本で負担すべきでない(フィリピン側で負担すべき)費用を日本で負担した場合には、日本側において寄附金課税のリスクが発生します。
当該リスクに備えるためには、役務提供についてはしっかりと契約書を作成し、費用負担については一定の合理的な基準を設け、その基準に沿って各法人で負担させるといった規則正しい処理が望まれます。
2)海外子会社への追加出資
日本親会社からフィリピン子会社への貸付を無利息で行った場合に、無利息で貸付ける経済的合理性の有無、そして低利息を支払う場合、貸付利率が適正に設定されているかという点が問題になります。
移転価格税制において親子間取引については、一般的に外部の第三者と同じ取引をした場合と同様の対価設定が必要になるため、日本親会社側では「利率が低い」と指摘されたり、フィリピン子会社側では「利率が高い」と指摘を受ける可能性があります。
このような場合に、特にアジア各国間においては市場金利が一定しておらず、一体どちらの国の貸出利率を基準にすれば良いのか?という問題が発生しますが、一般的に、貸出側(資金の提供元)の国における適正貸出利率をベースに移転価格を検証していく形になります。
3)経営不振による債務免除
日本親会社からフィリピン子会社への売掛債権や貸付金などを、経営不振や撤退を理由に債権放棄をする際には、債権に関する妥当な基準や計画、債務超過の状態などを考慮した損失負担額に合理性があるかどうか、また適切な取締役会決議や債務免除の子会社への通知といった書面があるかによって寄付金課税リスクの発生が問題になります。
一方で、経済的合理性が認められる場合は、貸倒損失として損金算入が認められることになります。
現状、フィリピンの税務調査では、寄付金課税や移転価格について指摘されるケースは稀ですが、日本の税務調査においては特に親子間取引の取扱いは、焦点になりやすい事項となります。
よって、日本フィリピン両国における寄付金課税・移転価格税制の取扱いを十分に考慮して頂ければと思います。
最後に、2017年9月に弊社フィリピン本の第2版が、出版されました。
フィリピンへの進出実務を最新の情報にアップデートすると共に、弊社フィリピン拠点における6年間のコンサルティング実務の経験を盛り込んでまとめ直したものとなります。
中でも本著はフィリピンの基本的な投資環境から、設立法務、会計税務、人事労務、M&Aに至るまでフィリピンでのビジネス展開に必須な情報を網羅的に収録していますので、
是非、本屋又は弊社宛にお問合せ頂き、手に取っていただけますと幸いです。
今週もどうぞよろしくお願い致します。
Tokyo Consulting Firm – Philippine Branch
大橋 聖也
2012年、東京コンサルティンググループに入社。中小企業の発展、会計業界の生き残りを掛けて、社外CFOとして社長のビジョン実現をサポートする、ビジョナリーコンサルティングを立上げに奮闘。社長の抱えるお困り事解決すべく経営理念の策定・経営会議のファシリテート・財務分析等の支援を行う。2016年10月より、フィリピン支店の拠点長として世界に活躍のフィールドを拡げ、真の顧客貢献を目指す。
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