皆さん、こんにちは!東京コンサルティンググループ フィリピン拠点の古谷です。
フィリピン内国歳入庁(BIR)は2026年9月7日付で、RMC(Revenue Memorandum Circular)No. 96-2026を発行しました。本通達は、輸出企業(Export-Oriented Enterprises: EOE)がフィリピン貿易産業省・輸出マーケティング局(DTI-EMB)から「VATゼロ評価証明書(VAT Zero-Rating Certificate)」を発行されるまでの過渡期における、VAT還付申請資格(Eligibility for VAT Refund)について明確な基準を示したものです。
今回は、現地日系企業の実務にどのような影響を与えるのか、その背景とポイントを分かりやすく解説します。
1. 背景 ― 証明書取得のタイムラグと現場の混乱
フィリピンで輸出事業を行う企業(EOE)が一定の国内仕入についてVATゼロ税率(VAT Zero-Rating)の適用を受けたり、負担した仕入VATの還付(VAT Refund)を受けたりするには、DTI-EMB発行の「VATゼロ評価証明書」が必要です。
しかし、実務上は以下の課題が発生していました。
- 証明書発行までのタイムラグDTI-EMBへの申請から証明書が実際に発行され、手元に届くまでに時間がかかる。
- 12%のVATが転嫁されるその結果、「証明書の発行待ち期間中」に仕入を行った場合、取引先から12%のVAT(Passed-on VAT)を請求されてしまう。
- 解釈をめぐる混乱「証明書未取得の期間に負担した仕入VATについて、後からVAT還付を申請できるのか」という解釈をめぐり、現場で混乱が生じていた。
今回のRMC No. 96-2026は、以前の通達(RMC No. 37-2025等)のガイドラインを補正・明確化し、こうした企業の不利益を解消するために発出されました。
2. RMC No. 96-2026の主要なポイント
① 過渡期(Transitory Period)における仕入VATの還付が可能に
適格な輸出企業(EOE)は、2024年11月28日からDTI-EMBによるVATゼロ評価証明書の発行日までの期間に負担した、ゼロ税率売上に帰属する国内購入・輸入に係るPassed-on VATについて、一定の要件を満たすことでVAT還付を申請できます。ただし、当該証明書が過渡期間である2025年12月31日までに発行されていることが条件となります。
② 過渡期の対象範囲と適用条件
- 対象となる支出ゼロ税率売上(Export Sales)に直接帰属する国内購入(Local Purchases)および輸入(Importations)に係る仕入VAT。
- 必要要件最終的にDTI-EMBから適切な証明書が発行され、対象期間中に実際に輸出事業者としての要件(前課税年度における70%以上の輸出基準など)を満たしていたことを証明できること。
③ 証明書を取得できなかった場合
前年度に70%の輸出基準を満たしていても、所定のDTI-EMB VATゼロ評価証明書を取得していない場合、対象となる翌年度についてVAT還付を受けることはできません。ただし、未使用の仕入VATについては、原則として翌期以降に繰り越し、将来のVAT債務に充当することができます。
④ 既に回収・利用済みのVATは還付対象外
対象となる仕入VATについて、すでにサプライヤーから返金・調整を受けている場合や、他のVAT債務への充当等により利用済みの場合には、重複してVAT還付を請求することはできません。
3. 実務へのインパクトと日系企業が取るべき対応
この通達により、「証明書が発行される前に負担した12%の仕入VAT」が即座に無駄(コスト化)になるリスクが軽減されました。一方で、VAT還付申請ではSection 112および関連規則に基づき、証憑やゼロ税率売上との帰属関係等について厳格な確認が行われるため、十分な事前準備が必要です。実務上は以下のステップで準備を進めることをお勧めします。
現地実務チェックリスト
- 1.DTI-EMB申請履歴の管理・保管DTI-EMBへの証明書申請日、受付受領書(Acknowledgement)、および発行された証明書の原本・コピーを日付順に管理してください。
- 2.過渡期中の仕入請求書・領収書の確認証明書未提示期間中にサプライヤーから発行されたインボイス(12% VATが記載されたもの)を特定し、仕入帳簿上で分けられるように分類しておきます。
- 3.VAT還付(VAT Refund)のタイムライン管理VAT還付の申請期限(課税四半期の末日から2年以内)を超過しないよう、DTI-EMB証明書を入手後は速やかに還付申請パッケージの作成に入ってください。
4. よくある質問(FAQ)
Q. 証明書取得前に負担したVATは還付されますか?
A. はい、2025年12月31日までに証明書が発行される等の一定要件を満たせば、還付申請が可能です。
5. まとめ
今回のRMC No. 96-2026は、VATゼロ評価証明書への移行過程で生じていたVATの取扱い上の不明確さを解消し、一定の要件を満たすEOEについて、証明書発行前に負担したVATの還付を認めるものです。
ただし、実際の還付申請手続きにおいては、インボイスの要件(売上側・仕入側の記載事項)が極めて厳しく審査されます。「還付申請が可能か」「どのような証憑が必要か」については、自社の顧問会計事務所や税務アドバイザーへ事前にご相談の上、慎重に進めることを強く推奨いたします。
※本記事は、フィリピンに関する一般的な情報提供のみを目的としたものであり、法的助言を構成するものではありません。また、記事中の情報はBIR公表資料に基づくものであり、今後変動する可能性があります。
最後に
弊社では、フィリピン進出企業様向けにDTI/PEZA等のライセンス取得・更新サポートから、BIRのVAT還付申請手続き代行、税務コンプライアンス支援まで幅広くバックアップしております。「自社の過渡期の仕入VATが還付対象になるか確認したい」「還付申請の書類準備やBIR対応を任せたい」など、ご不明な点がございましたら、まずはお気軽にご相談・お問い合わせください。