フィリピンでは台風や雨季に伴う大雨・洪水など、突発的な悪天候による事業停止や交通遮断が頻繁に発生します。労働雇用省(DOLE)から発布されたLabor Advisory No. 14(2026年)において、悪天候時における民間企業の業務停止判断、労働者の保護、および給与計算のルールが改定・再確認されました。
本記事では、フィリピンに拠点を持つ日系企業が押さえておくべき給与計算ルールや実務上の留意点をわかりやすく解説します。
1. 切迫した危険がある場合の従業員保護(行政上の制裁禁止)
本通達で最も重要なポイントは、従業員の安全確保です。悪天候や洪水などにより、通勤や労働環境に「切迫した危険(Imminent Danger)」があると判断される場合、従業員が出勤を拒否、または欠勤しても、会社はこれを理由として懲戒その他の行政上の制裁を課すことはできません。
日系企業でありがちな、悪天候下で出勤しなかったことを理由に、事情を確認せず一律に懲戒処分を行うと、本通達に抵触する可能性があります。なお、勤務しなかった時間に対する給与については、後述するNo Work, No Payの原則が適用されます。
2. 悪天候時・業務停止時の給与計算ルール
悪天候時の給与計算は、「誰が業務停止を判断したか」「実際に何時間勤務したか」によって異なります。
全日欠勤・全日業務停止の場合
原則:No Work, No Pay(ノーワーク・ノーペイ)が適用されます。
例外:会社規定、労働協約(CBA)、または慣行として手当を支払う規定がある場合、そちらが優先されます。また、会社が認める場合には、従業員が保有する有給休暇(Accrued Leave Credits)を充当することも可能です。
悪天候時に一部勤務した場合
出社後に天候が悪化し、途中で業務を打ち切った場合の給与計算は以下のとおりです。
| 当日の実労働時間 | 給与支給ルール |
| 6時間以上 | 1日分の全額給与(100%)を支給 |
| 6時間未満 | 実労働時間に応じた按分計算(Proportionate Pay)で支給 (例:通常8時間勤務で4時間だけ働いて帰宅させた場合、4時間分の基本給を支給) |
3. 出勤者へのインセンティブ・手当の推奨
DOLEは、悪天候や交通機関の乱れの中でも出勤し業務を支えた従業員に対し、追加のインセンティブや特別手当、食事・交通費の補助などを提供することを推奨しています。法的な強制支給ではありませんが、従業員のエンゲージメント向上や安全配慮の観点から、企業によっては、特別手当や交通費補助などを検討することも考えられます。
4. 日系企業が今すぐ取り組むべき実務対応
天災が発生してから対応を検討すると混乱が生じます。事前に社内規定やBCP(事業継続計画)を整えておきましょう。
- 就業規則(Employee Handbook)の確認と改定:悪天候時の在宅勤務(WFH)への切り替えルールや、有給休暇の充当手続きをあらかじめ規定しておく。
- 安全衛生委員会(OSH Committee)との連携:事業停止の判断基準(例:台風シグナル、洪水警報、LGUの勧告等を踏まえた社内基準など)を明確にし、OSH責任者と連携して迅速に判断できる体制を作る。
- 緊急連絡網・送達ルートの確保:社内グループチャットや連絡用アプリを活用し、出勤停止や途中帰宅の指示が全従業員に即座に伝わる環境を整備する。
まとめ
フィリピンでの労務管理では、「労働者の安全」が最優先されます。No Work, No Payの原則を正しく理解しつつも、柔軟な在宅勤務の活用や配慮ある運用を行うことが、労使トラブルを防ぎ、安定した店舗・オフィス運営につながります。
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最後に
弊社では、フィリピンにおける労務・法務をはじめ、税務・会計など幅広い実務支援を行っております。現地の専門家とも連携しながら、フィリピン特有の法制度や実務を踏まえたサポートを提供しておりますので、社内規程の整備や労務対応等でお困りの際は、お気軽にご相談ください。