フィリピンで事業を運営する企業にとって、最低賃金(Minimum Wage)の管理は労務コンプライアンス上の重要事項の一つです。フィリピンでは全国一律の最低賃金制度ではなく、地域ごとに異なる最低賃金が設定されています。そのため、従業員の勤務地によって適用される賃金額が異なる点に注意が必要です。
今回は、フィリピンの最低賃金制度の概要と、企業が実務上留意すべきポイントについて解説します。
【本記事のポイント:フィリピンの最低賃金管理】
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最新の最低賃金:マニラ首都圏(NCR)の非農業部門は日額695ペソ(2025年7月改定)
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給与計算の注意点:最低賃金は「基本給」のみで判定。各種手当やインセンティブは含まれない。
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実務上の留意点:最低賃金引き上げ時は、社内の給与格差が縮小する「賃金圧縮(Wage Distortion)」の是正協議が必要。
1.フィリピンの最低賃金とは
フィリピンの最低賃金は、労働雇用省(DOLE)の管轄下にある各地域の「Regional Tripartite Wages and Productivity Board(RTWPB)」が決定します。
最低賃金を決定する際には、物価上昇率、生活費、労働者の生産性、企業の支払能力、地域の経済状況などの要素が考慮されます。そのため、同じ職種であっても勤務地によって最低賃金が異なることがあります。
2.現在のマニラ首都圏(NCR)の最低賃金
2025年7月18日より、マニラ首都圏(National Capital Region:NCR)では過去最大となる1日50ペソの引き上げが実施されました。現在の最低賃金は以下の通りです。
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区分
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最低賃金(日額)
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非農業部門(Non-Agriculture)
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PHP 695
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農業部門(Agriculture)
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PHP 658
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従業員15名以下の小売・サービス業
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PHP 658
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従業員10名未満の製造業
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PHP 658
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3.最低賃金に含まれるもの・含まれないもの
最低賃金は「基本給(Basic Wage)」に対して適用されます。そのため、以下のような法定手当や福利厚生は最低賃金の計算には含まれません。
含まれないものの例)
・13か月給与
・夜勤手当
・残業代
・休日勤務手当
・インセンティブ
・各種福利厚生
例えば、マニラ首都圏で勤務する従業員の基本給がPHP650/日の場合、たとえインセンティブを含めるとPHP700を超えていても、最低賃金違反となる可能性があります。企業は必ず「基本給ベース」で最低賃金を満たしているか確認する必要があります。
4.最低賃金の対象外となるケース
以下のような場合には、一般的な最低賃金規定が適用されないことがあります。
(1) Kasambahay(家事使用人)
家庭内で働く家事使用人は、通常の最低賃金ではなく「Domestic Worker Wage Order」が適用されます。これは、一般従業員とは異なり日額ではなく月額で規定されているもので、マニラ首都圏では2026年2月より月額最低賃金がPHP7,800へ引き上げられています。
(2) BMBE:Barangay Micro Business Enterprise(バランガイ最小規模企業)
BMBE法に基づき登録された事業者は最低賃金法の適用除外となります。しかし、SSS・PhilHealth・Pag-IBIGなどの法定福利厚生の付与義務は残ります。
(3) Apprentices(見習い労働者)
DOLEの承認を受けた一定の見習い制度では、最低賃金の75%以上の支払いが認められる場合があります。
5.日系企業が注意すべき実務ポイント
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最低賃金改定時の給与調整
最低賃金が改定された場合、企業は施行日以降の給与を新賃金へ調整する必要があります。特に注意したいのは、固定給従業員、日給制従業員、プロジェクトベース従業員などの給与設定です。場合によっては、給与テーブル全体の見直しが必要になるケースもあります。
2.賃金圧縮問題
最低賃金が引き上げられると、新入社員とベテラン社員の給与差が縮小する場合があります。このような場合、勤続年数や職責による賃金差が失われるため、「Wage Distortion(賃金圧縮)」の問題が発生します。労働組合の有無に応じて是正協議が必要になる場合があるため、最低賃金改定時には給与体系全体の確認が推奨されます。労働組合が存在する場合は団体交渉、存在しない場合は会社と従業員との協議により解決を図ることになります。
3.地域ごとの最低賃金確認
フィリピンは17の地域に分かれており、それぞれ最低賃金が異なります。
例)
・NCR(マニラ首都圏):PHP695程度
・中部ルソン(Region III):PHP600程度(業種等により異なる)
・地方都市:PHP450~550程度
など地域差があります。支店や工場を複数地域で運営している企業は、勤務地ごとに適用賃金を確認することが重要です。
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最後に
フィリピンで人事・労務管理を行う企業にとって、改定される最低賃金への適切な対応は、法令遵守のみならず労務トラブルや行政指摘の防止という観点からも重要です。
弊社では月次会計・税務サービスに加え、給与計算レビュー、SSS・PhilHealth・Pag-IBIG対応、人事労務コンプライアンスチェックなどのサービスも提供しております。フィリピンでの人事・労務管理にお困りの際はお気軽にご相談ください。