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【フィリピン労務】Maternity Benefit(産休・出産給付)制度と会社負担 (Salary Differential)の実務対応

2026.06.25 労務

フィリピンでは女性従業員が出産した際に、一定期間の有給休暇と社会保険制度(SSS)による出産給付を受けることができます。日系企業においても、現地スタッフの採用・管理を行う上で、Maternity Benefit制度の理解は欠かせません。

今回は、フィリピンのMaternity Benefit制度の概要から実務対応について解説します。

【本記事の結論:フィリピンのMaternity Benefitのポイント】

Maternity Benefitとは?

Maternity Benefit(出産給付)とは、女性従業員が出産や流産等をした際に、休業期間中の所得を補償するために支給される給付金制度です。これらはMaternity Leave Law(共和国法:RA 11210号)、Social Security Act(共和国法:RA 11199号)で定められています。従業員は一定期間の産前産後休暇を取得でき、その期間中の給与相当額については、原則としてSSS(Social Security System)から給付を受けることができます。

  1. 産休期間

フィリピンの法定産休期間は以下の通りです。

内容

休暇日数

通常出産

105日

シングルマザー

120日

流産・死産

60日

なお、女性従業員は希望により、無給で最大30日間の休暇延長も可能です。

  1. SSSからの支給条件

Maternity Benefitは、SSS加入者で一定の条件を満たす場合に支給されます。

主な受給要件は:

・出産、流産、または妊娠中絶等の前の期間(Semester*)直前の12か月間において、少なくとも3か月分のSSS保険料を納付していること。なお、受給資格の判定にあたっては、SSSは給付事由が発生した期間(Semester)より前に納付された保険料のみを考慮する。

・妊娠・出産について雇用主およびSSSへ適切な通知が行われていること。

給付額は、従業員の過去のSSS報酬月額(MSC:Monthly Salary Credit)を基に計算されます。

※SSSにおけるSemesterとは、出産等が発生した月を含む連続6か月間を指します。

  1. 給付額の計算方法

Maternity Benefitの計算式は、「Average Daily Salary Credit(ADSC) × 給付対象日数」となります。給付対象日数は、通常の出産で105日分、シングルマザーの場合で120日分、流産・死産の場合で60日分となります。

ただし、SSSには報酬月額の上限が設定されているため、高所得者であっても給付額には上限があります。

現在、SSSの保険料上限は35,000ペソまで引き上げられているものの、Maternity Benefitの計算は現在も20,000ペソのMSC(Monthly Salary Credit)を基準としているため、SSSから支給される出産給付の上限は通常出産で約70,000ペソとなります。(※給付額の上限および計算方法は将来的に変更される可能性がありますので、最新のSSS公表情報をご確認ください。)

  1. 会社負担となる「Salary Differential」とは

従業員の通常給与相当額がSSSから支給されるMaternity Benefitを上回る場合、その差額を会社が負担する制度をSalary Differentialと呼びます。

例)

通常給与相当額:120,000ペソ

SSS給付額:70,000ペソ

→SSS負担:70,000ペソ

→会社負担(Salary Differential):50,000ペソ

このように、給付金はSSSからの支給とはなりますが、従業員の給与水準によっては会社負担が発生する可能性がある点に注意が必要です。

  1. 企業側の実務対応

対象となる女性従業員がいる場合、企業は次の対応が必要となります。

<出産前>

・従業員から妊娠通知を受領

・SSS加入状況の確認

・必要書類の案内

<出産後>

・出生証明書等の回収

・SSS申請手続き

・Salary Differentialの計算

・給与計算への反映

  1. 実務上の注意点

① Salary Differentialの免除対象確認

例えば、小規模事業者や経営難企業など、法律で定められた一定要件を満たす場合にはSalary Differential支払い義務の免除申請が認められることがあります。

② SSS給付上限の確認

SSSの報酬月額には上限があるため、高所得者ほど会社負担額が大きくなる傾向があります。

③ 産休取得者の代替要員確保

105日間という長期間の休暇となるため、事前の業務引継ぎや代替要員の手配が重要です。

④ 復職日の管理

予定より早く復職する場合、既に支給されたMaternity Benefitと復職後給与が同一期間に重複しているように見えるケースがあります。そのため、復職時期や給与計算方法については事前に慎重な確認が必要です。

※)記載しました内容は、作成時点で得られる情報をもとに、最新の注意を払って作成しておりますが、その内容の正確性及び安全性を保障するものではありません。該当情報に基づいて被ったいかなる損害についても情報提供者及び当社(株式会社東京コンサルティングファーム並びにTokyo Consulting Firm Co., Ltd.)は一切の責任を負うことはありませんのでご了承ください。

最後に

フィリピンで人事・労務管理を行う企業にとって、Maternity Benefit制度への適切な対応は、法令遵守だけでなく従業員満足度向上の観点からも重要なポイントとなります。

弊社では月次会計・税務サービスに加え、給与計算レビュー、SSS・PhilHealth・Pag-IBIG対応、人事労務コンプライアンスチェックなどのサービスも提供しております。フィリピンでの人事・労務管理にお困りの際はお気軽にご相談ください。

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