今回は、フィリピンの13か月給与制度の概要から計算方法、税務上の取り扱い、実務上の注意点まで解説します。
東京コンサルティングファーム フィリピン拠点の古谷です。
フィリピンで事業を行う企業にとって、「13か月給与(13th Month Pay)」は必ず理解しておくべき労務制度の一
つです。日本では一般的に賞与(ボーナス)の支給は会社の業績や就業規則によって実施の有無が決まりますが、
フィリピンでは13か月給与の支給が法律で義務付けられています。
今回は、フィリピンの13か月給与制度の概要から計算方法、税務上の取り扱い、実務上の注意点まで解説します。
1. 13か月給与とは?
13か月給与とは、1975年に制定された Presidential Decree No. 851(PD 851)に基づき、従業員に対して
毎年支給が義務付けられている法定賞与です。フィリピンでは、民間企業の雇用主は原則として13か月給与を支給
しなければなりません。一般的にはクリスマスシーズンである12月に支給されることが多く、多くの従業員にとっ
て重要な収入源となっています。
2. 支給対象者
原則として、民間企業に勤務するRank-and-File Employee(一般従業員)が対象です。
なお、管理職については法定対象外ですが、多くの企業では会社規程に基づき支給しています。詳しくは、以下の
ような従業員が対象となります。
例)正社員、契約社員、試用期間中の従業員、固定給に加えてコミッションを受け取る従業員、出向社員(実態による)
一方で、一般的に対象外とされる形態もあります。
例)純粋なコミッションベースの営業員、独立請負人(Independent Contractor)、フリーランサー、家事使用人
(Kasambahay)、政府職員ただし、雇用契約の内容や実態によって判断が異なる場合もあるため注意が必要です。
3. 支給時期
13か月給与は毎年12月24日までに支給しなければなりません。しかし、分割支給も法律上認められています。
企業によっては6月に50%分、12月に50%分、というように分割支給しているケースもあります。
4. 計算方法
基本的な計算式は、「13か月給与 = その年に受け取った基本給の合計 ÷ 12」となります。
<計算例① 1年間勤務した場合>
月額基本給:30,000ペソ
年間基本給:30,000 × 12か月 = 360,000ペソ
13か月給与:360,000 ÷ 12 = 30,000ペソ
つまり、1か月分の基本給相当額が支給されます。
<計算例② 途中入社した場合(2026年7月1日に入社)>
月額基本給:30,000ペソ
勤務月数:6か月
年間基本給:30,000 × 6 = 180,000ペソ
13か月給与:180,000 ÷ 12 = 15,000ペソ
途中入社の場合でも、勤務期間に応じて按分計算した額を支給する必要があります。
5. 計算対象となる給与
13か月給与の計算対象となるのは、原則として「Basic Salary(基本給)」です。
<含まれるもの>
・基本給
・固定月給
・基本給として支払われる通常賃金
<含まれないもの>
・残業代(OT Pay)
・夜勤手当(Night Shift Differential)
・休日勤務手当
・各種手当(Transportation Allowance、Meal Allowance等)
・インセンティブ
・業績賞与
・生活手当(COLA)
つまり、給与総額ではなく、あくまで基本給部分のみを基礎として計算する点に
注意が必要です。
6. 退職者への支給
退職者についても13か月給与の支給義務があります。退職日までに発生した13か
月給与相当額を計算し、最終給与(Final Pay)に含めて支払います。
例)月額基本給:24,000ペソ
退職日:6月30日
勤務期間の基本給:24,000 × 6 = 144,000ペソ
13か月給与:144,000 ÷ 12 = 12,000ペソ
上記の内容を最終給与と合わせて支払う必要があります。
7. 税務上の取り扱い
13か月給与は一定額まで所得税が非課税となります。現在の税制では、13か月給
与を含めるその他の賞与等の合計で年間90,000ペソまで非課税とされています。
例)13か月給与:80,000ペソ
クリスマスボーナス:30,000ペソ
→合計:110,000ペソ
→非課税部分:90,000ペソ
→課税対象部分:20,000ペソ
超過額については給与所得として課税されます。
8. DOLEへの報告義務
企業は毎年、13か月給与を適切に支給したことを証明するため、労働雇用省
(DOLE)へ報告を行う必要があります。原則として翌年1月15日までに13th Month
Pay Compliance ReportをDOLEへ提出します。提出方法や様式は地域や年度によって
変更される場合があるため、最新のDOLEガイドラインを確認することが重要です。
9. 注意すべきポイント
日系企業を含めてよく発生する誤りは、手当を含めて13か月給与を計算していた
り、途中退職者への最終給与へ13か月給与が反映されていなかったりという事例が
あります。また、支給対象とすべき試用期間社員に対して支払っていなかったり
、12月24日までの支払期限を遵守できていないケースもありますので、ご注意くだ
さい。給与に関連するミスや不備は従業員との労働問題に発展するリスクがありま
すので企業は細心の注意が必要です。
よくある質問(FAQ)
Q. 13か月給与の計算に交通費や住宅手当などの手当は含まれますか? A. 含まれません
。13か月給与の計算対象は基本給(Basic Salary)のみであり、各種手当や残業代は除
外して計算します。
Q. 12月以外に分割して支払うことは可能ですか? A. 可能です。法律上は毎年12月24
日までの支給が義務付けられていますが、6月と12月に50%ずつ分割支給するなどの運
用も認められています。
最後に
13か月給与は毎年発生する法定義務であり、計算方法や支給対象を誤ると労務トラ
ブルや行政指摘につながる可能性があります。特に日系企業では日本の賞与制度との違
いから誤解が生じやすいため、制度を正しく理解し運用することが重要です。
弊社では月次会計・税務サービスに加え、人事労務コンプライアンスのチェックやレ
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