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【フィリピン】PEZA企業の在宅勤務(WFH)が再び緩和へ~FIRB Resolution No. 005-2026の実務を解説~

2026.05.27 労務 投資環境

FIRB(Fiscal Incentives Review Board)が2026年4月10日に発行したFIRB Resolution No. 005-2026では、PEZA企業を含む経済区登録企業(RBE)に対して一時的に最大90%までのWork From Home(WFH)を認めています。
 今回の通達の背景にあるのは、中東情勢の悪化によるエネルギー不安です。イラン・イスラエルを中心とした緊張の高まりを受け、世界的に原油価格上昇リスクが意識される中、フィリピン政府は「国家エネルギー緊急事態(National Energy Emergency)」を宣言しました。これに伴い、企業活動を維持するための特例措置としてWFH緩和が打ち出されました。今回は、PEZA企業をはじめとするRBEにおけるWFHセットアップの実務的なポイントと通達の内容について解説します。

なぜPEZA企業はWFHに厳しかったのか

今回の通達を理解するには、まずPEZAの仕組みを知る必要があります。PEZA(Philippine Economic Zone Authority)は、フィリピン政府の投資誘致機関です。PEZA登録企業は法人税優遇、VATゼロレート、輸入税優遇などの大きなインセンティブを受けられます。その代わり、政府は企業に対して「PEZA認定経済区の中で事業を行うこと」を求めてきました。つまり、PEZAの優遇制度はもともと物理的に経済区域内のオフィスへ集まることを前提に作られているのです。特にIT-BPM(BPO)業界で「PEZA登録=原則オンサイト勤務」という考え方が長く続いていました。

コロナで一気に変わった働き方

しかし2020年、パンデミックで状況が変わり、ロックダウンが実施される中でもBPO業界のオペレーションが続くことを考慮し、フィリピン政府は特例として大規模WFHを容認しました。当時は最大90%までWFHが認められ、多くの企業が完全リモート体制へ移行しました。その結果として、多くの企業がWFHでも十分オペレーションできることが分かり、生産性を維持しながら離職率低下、地方人材の採用、オフィスコストの削減など、多くのメリットが見えてきたのがこの時期です。

コロナ明けから進められた出社回帰

ただ、コロナ後に政府はPEZA制度の本来の考え方である「税優遇を受けるなら経済区で事業を行うべき」に基づき、再び出社を求め始めました。そのため2022年以降は、70%出社とWFHを許容する場合は30%までというルールへ戻っていきました。その後、CREATE MORE関連施策で徐々に50%WFHまで柔軟化されましたが、それでも「完全自由」というわけではありませんでした。

そして今回の中東情勢

2026年、中東情勢の緊迫化によって、フィリピン政府は国家エネルギー緊急事態を宣言しました。フィリピンはエネルギー輸入依存度が高い国のため、中東で緊張が高まると原油価格、電気料金、ガソリン価格、物流コストなど多方面で直接影響します。特にマニラ首都圏では、ただでさえ通勤負担が大きいため、「毎日出社を前提にすると経済全体へダメージが出る」という懸念が強まりました。そこで発行されたのが、今回のFIRB Resolution No. 005-2026でした。

FIRB Resolution No. 005-2026とは?

一定の要件を満たす経済区登録企業(RBE)に対し、税制優遇を維持したまま最大90%までの在宅勤務を一時的に認める通達です。 今回の通達の大きなポイントは、最大90%のWFHを一時的に認めたという点です。対象はPEZA企業だけではなく、各種経済区登録企業(RBE)となります。さらに重要なのは、これまでの税優遇を維持したままWFHができるという点です。通常、PEZA企業が規定以上のWFHを行うと、税インセンティブへの影響が問題になります。しかし、今回は「非常時対応」という扱いになっているため、インセンティブを失わずに柔軟勤務が可能になっています。これは企業にとってかなり大きく、特にIT-BPM企業にとっては通勤負担軽減、電力・燃料リスク対策、人材維持、事業継続の観点で非常に有効な措置だと言われています。

今後の動きについて

今回の通達は単なる「緊急措置」以上の意味がある可能性があります。というのも、ここ数年の流れを見ると、フィリピン政府の考え方そのものが変わってきているからです。以前のPEZA制度はオフィス中心であり、経済区内での活動が重視されていました。しかし今は、過去のパンデミックでの経験、人材競争、グローバルBPO競争、地政学リスクやエネルギー問題を経て、「どこで働くか」より「いかに事業を止めずに効率的に働けるか」へ軸足が移ってる傾向にあります。実際、今のBPO・IT業界では、柔軟勤務はほぼ世界標準です。もしフィリピンだけが厳格な出社を求め続ければ、インドやベトナム、マレーシアなど競合国へ案件が流れる可能性があります。政府もそれを理解しているからこそ、今回ここまで大胆な緩和を行ったとも言えるでしょう。そのため、今後も中東情勢が回復しても政府のWFHの措置が緩和を続ける可能性はあるかもしれません。

※)記載しました内容は、作成時点で得られる情報をもとに、最新の注意を払って作成しておりますが、その内容の正確性及び安全性を保障するものではありません。該当情報に基づいて被ったいかなる損害についても情報提供者及び当社(株式会社東京コンサルティングファーム並びにTokyo Consulting Firm Co., Ltd.)は一切の責任を負うことはありませんのでご了承ください。

最後に

フィリピンの実務現場では、今回のように政府からの通達が突然発行されることも多く、 新しい措置やルールを抑えるのにも工夫が必要になります。特にコンプライアンス事項や税務関連では複雑な内容が多くあるため専門家へ相談することをお勧めします。
 特にPEZA企業では、WFH比率だけでなく、資産管理や税務対応など実務面で注意すべきポイントも少なくありません。弊社では月次会計・税務の代行サービスだけではなく定期的なコンプライアンスチェックやレビューサービスも提供できますので、お気軽にご相談ください。







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