メキシコにおけるM&A スキームの基本について

経営

 

今回はメキシコにおけるM&A スキームの基本についてお話します。

 

商事会社一般法で規定されている買収スキームには合併以外に、株式取得と資産取得の2つがあります。

 

(1)株式取得

 

■相対取引

相対取引による既存株主からの株式取得の特徴として、事業取得と比較して手続等が簡単なため、スピーディーに買収を行うことができることが挙げられます。

対象企業が存続する株式取得では、一部の税務的な責任を除き、企業としての法的責任は引続き対象企業が負うことになります。法人の背後に存在する支配的存在の責任を問うための「法人格否認の法理」がメキシコ法上認められないため、買い手にとってリスクを計算しやすいというメリットがあります。

対象企業が公開会社の場合、株式の30%未満の取得であれば、市場外における合意があり、その他要件に従う限り、相対取引が可能です。

増資により株式を取得する場合、既存株主から、新株発行に係る新株引受権の放棄を受ける必要があります。その理由は、新株引受権が行使された場合、当初予測していた割合を取得することが困難となるためです。メキシコ法においても新株引受権は規定されており、株主の権限を強化するため、付属定款において株主に付与されていることが一般的です。

 

■公開買付

海外から企業買収を行うにあたり、公開買付はあまり一般的な手法ではありません。公開買付は証券市場法の規制下にあり、市場において公開会社の普通株式30%以上を取得する場合は、公開買付義務が生じます。

 

(2)資産取得

 

資産取得の特徴は、対象企業に付随する権利義務をすべて引受けずに、特定の事業のみが取得可能であることです。

ただし、この権利義務が、事業資産そのものに付随している場合や、契約により合意した場合には、取得に伴って権利義務を引受ける必要があります。労働、税務や環境に関する責任などは、資産に付随する可能性が高いです。

実質的にすべての資産を買収する場合には、買い手は買収完了時点で資産に付随する従業員の使用者となり、労働法上の義務を承継することになります。雇用に関する福利や条件の修正は認められないため、これを回避するには、買収完了時点でいったん解雇し、解雇手当を支払った上で再度雇用する、等の手続が必要です。

メキシコにおいて資産取得により事業譲渡を行う場合、主要資産の譲渡契約書とともに、それに付随する資産も確実かつ適時に移転するために必要な手続を記載した、付随的な権利委譲書を締結するのが一般的です。これより複数の不動産がかかわる場合、各不動産につき個別の契約書が、公証役場での公証や不動産登記に先立って必要となります。

長期リース契約やその他契約における権利が譲渡される場合には、別途手続が必要となります。担保の対象となっている資産であれば、担保解消および資産移転のため、個別の書類が必要となります。

資産取得は株式取得に比べて一般的に多くの書面を必要とし、そのドラフティングや交渉等に時間がかかるため、ディールが長期化しがちであることに注意が必要です。

 

 

以上、お読みいただきありがとうございました。

なお、本記事は2019年10月時点の内容となっております。最新情報やより詳細な情報は弊社サービスのWiki Investmentをご利用頂きたいと思います。Wiki Investmentへの登録は、下記のリンクからお願い致します。

 

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