メキシコにおける商事会社一般法について

経営

 

今回はメキシコにおける商事会社一般法についてお話します。

商事会社一般法(Ley Generalde Sociedades Mercantiles)は、日本でいう会社法に相当する法律です。商事会社の諸形態、株主・従業員の権利、組織再編や会社の清算等を規定した連邦法であり、M&Aにおいても、他の法律に特別な定めのない限り、一般的に本法が適用されます。

 

■株式会社

商事会社一般法では6つの会社形態を規定しており、なかでもM&Aの対象として最も一般的な形態は株式会社(S.A.:SociedadAnónima)です(1条)。また、可変資本制度(定款を変更せずに資本金の増減が可能)による、可変資本株式会社(S.A.deC.V.:Sociedad Anónima de Capital Variable)も多く存在します(8条)。株式会社の主な特徴は以下のとおりです。

・株主責任の範囲は、出資額を限度とする(有限責任)
・株主または社員が最低2名いることが会社設立・維持の要件であり、1人会社は認められていない
・議決権については基本的に株式数に応じ各株主が有しており、会社の決議事項については株主総会や取締役会において決定される
・株主総会により取締役を決定し、各取締役が会社を管理運営する

株主は会社組織、構造、事業目的、資産構成を変更する権限を有します。同種の株式を保有する株主は平等な権利を有しており、特定の種類株式(1つの株式会社により発行されには、事前に当該種類株主による特別総会決議が必要です。
株式を償還する際は、総株主の持分比率に応じて行うか、または公正な抽選により償還する株式を選定します。償還に関する規則は全株主の同意により変更することも可能です。

 

■合同会社

合同会社(S.deR.L.:Sociedadesde Responsabilidad Limitada)は、株式会社よりも出資者の権利義務等に関し柔軟な扱いが認められており、出資者間の関係がより閉鎖的、かつ比較的小規模な事業向けの形態です。合同会社においても可変資本制度は適用可能で、その場合は可変資本合同会社(S.deR.L.deC.V.:Sociedadde Responsabilidad Limitadade Capital Variable)となります。

 

■合併・分割

M&Aに関連する内容として、合併(fusión)と分割(escisión)に関する規定があります(合併につき商事会社一般法222条~226条、分割につき同法228条の2)。
合併には、新設合併(2つ以上のすべての会社の法人格が消え、新しい会社に統合する)と、吸収合併(1社が継続したまま、その他企業を取り込む)があります。
分割には、新設分割(既存の会社の法人格を消滅させ、その資本や資産を2つ以上の法人に分割する)、および吸収分割(既存会社の消滅を伴わずに、資本や資産の一部を他法人に移転する)があります。合併・分割については、それぞれの関連企業株主による特別総会決議が必要となります(182条)。また、法的効力を持たせるため、商業登記所(The Public Registry of Commerce)において公証、登録する必要があります(223条)。

 

■ジョイントベンチャー

ジョイントベンチャーの設立を検討する上で、当事者が2社以上あり、オペレーションや技術・ノウハウの提供よりも資本提供の側面が強い場合には、株式会社形態が取られることが一般的です。
一方、買収後も出資者が継続して経営に参加する場合など、合同会社形態がふさわしい場合もあります。少数株主にとっては、株式会社より合同会社の形態の方が、支配権という側面からは有利ともいえます。
商事会社一般法においては株主間契約(企業や株主間における株主の権利に関する取決で、議決権行使や株式譲渡に係る条件等を定めたもの)の有効性が明文化されておらず、むしろ旧来の商事会社一般法においては、株主の自由な議決権行使を制限する契約が無効とされていました(2014年6月改正により削除)。したがって、同法に基づく株式会社および合同会社形態では、当事者が株主間契約においてガバナンスに関する取決を行っていても、後にその有効性が争われるという事態が生じえました。
同様の内容を付属定款で定めた場合には拘束力が高まるものの、附属定款の設置・変更には、株主の承認や公証等法定の要件が定められており、取決の公開を望まない株主がいる場合には付属定款を用いることが困難です。
近年ではジョイントベンチャーにおいても、後述の、証券市場法に基づく投資促進会社(S.A.P.I.:Sociedad Anónima Promotorade Inversión)形態の利用が進んでいます。

 

以上、お読みいただきありがとうございました。

なお、本記事は2019年9月時点の内容となっております。最新情報やより詳細な情報は弊社サービスのWiki Investmentをご利用頂きたいと思います。Wiki Investmentへの登録は、下記のリンクからお願い致します。

 

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