”クレーム0”という言葉に潜む罠

「お客様からのクレームをなくしたい」
これは、どの会社も考えることだと思います。

実際に、クレームが起きると担当者はその対応に追われ、
心理的にも通常業務の倍以上の負荷がかかり、それに
疲弊してしまう、という事も見受けられます。

よく工場などに行くと、「事故件数0件」「●日継続中」
といった看板を見かけることがあります。

工場内での事故は人命に関わるものもある。
取り返しがつかないため、絶対に起こしてはいけない。
それを一人一人が強く意識して行動するため、見える位置に
掲げて意識付けがされています。

もちろん、”悪い事”は起こさないほうがいいのは
当たり前なのですが、この工場での”事故ゼロ”と
”クレーム0”を混同してしまうと、大きな問題が発生
することがあります。
それは、この2つの決定的な違いによるものです。

社内でのミス、事故ゼロと言うのは”会社側の努力”により
防ぐことができます。
そのため、絶対に起こさないために時間と手間をかけて
その仕組みを作る事は会社の成長に大きく寄与します。

一方で、”クレーム”というのはそもそも自社が行うことではなく
”お客様”が何か思うところがあり、それが”クレーム”という
形で外に出てきた結果に過ぎません。

つまり、クレームを言うかどうかはお客様の意思ひとつであり、
会社が一方的に「クレームをゼロに」と言うのは言い換えると
「お客様の口を塞げ!」となる可能性もあります。

さらに言うと、クレーム0を評価基準にした場合、
評価される社員側による”クレームの隠蔽”に繋がる
こともあります。

この根底にあるのは。社員の意識の中で”クレームは悪”
いうものに基づきます。

「臭い物には蓋をせよ」と言うように、悪いものを
見えなくして、というようなことが往々にして日常的に
見逃されているような場合、この言葉の解釈が悪い方向に
いき、時間とともにどんどん会社が悪くなっていきます。

表面的に、クレームは0件。それを見て経営者、上司は
喜んでいるが、実は現場では潜在的にクレームが溢れ
かえっており、それが限界値を迎えた瞬間に一気に大爆発。
事象として起こって初めて経営者が気づき対処する。
という事をやっていては、会社の存続も危ぶまれてしまいます。

このような悲劇を防ぐためには、”自社視点”だけで物事を
考えるのではなく、常に”お客様の視点”で物事を考える
ということが必要になります。

それが出来ていれば、「クレーム0」と言ったときに
「どうすればお客様にもっと喜んでもらえるか」と考える
ことも出来ますが、自社視点しか持たない会社が「クレーム0」
と言うと、お客様の口を塞ぐような行為又はクレームを
隠蔽して無かったことにするような行為が平然と行われて
しまう可能性があります。

一見、お客様のクレームも知識や技術、コミュニケーション
などが原因、という事を言われたりもしますが、その根底に
あるのは、その会社”企業文化”。これに尽きるのではないでしょうか。

どのような企業文化を作るか。
それなくして、表面的な問題解決の仕組みやルールを
決めたところで、問題の解決が速くなるだけで、問題は
起こり続けます。

何が本当の問題か?
クレーム0、に潜む罠をしっかりと認識しておく、
その対処まで考えたうえで「クレームを無くす!」と
声高らかに宣言する、という事が必要なのだと思います。


株式会社東京コンサルティングファーム

代表取締役社長
増田 鉄矢

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