こんにちは、中国・上海の田中勇です。
本日は、増値税における一般納税人と小規模納税人について、お話しします。
事業活動において、コストを抑える手段は多くあります。その手法のうちで最も手っ取り早くコストを抑えることができるものが、税金コストであると我々は考えております。なぜなら、税金コストは税金の知識さえあれば、比較的容易に抑えることが可能だからです。中国において、その税金コストの中でもよく話題に上がる項目が増値税です。
増値税の納税者は、一般納税人と小規模納税人で区分管理されております。さらに、それぞれ、資格要件・増値税計算方法・増値税発票発行方法等が異なります。資格要件については、サービス業の会社の場合、年間課税売上高が500万元以上の会社は一般納税人を選択しなければいけませんが、年間課税売上額が500万元未満であれば、一般納税人と小規模納税人どちらかを選択することが実質的に可能です(ただし、一般納税人を選択するには、製造企業50万元・商業企業80万元の年間課税売上高があること、会計処理体制が健全であること、適切な税務資料の提出が可能であることが必要です)。したがって、一般納税人と小規模納税人で自由に選択できる企業は、それぞれのメリット・デメリットを認識し、適切なシミュレーションを行った上で、最終的なコストを抑えることができるのかを検討することが重要なのです。一般納税人と小規模納税人のそれぞれのメリット・デメリットは以下の通りです。
一般納税人
・売上に係る増値税(売上税額)から仕入に係る増値税(仕入税額)を控除できる
・増値税の発票を自社発行できる
デメリット
・税率が高い(原則17%)
・増値税発票発行の専用機械を購入する必要がある(ただし、機械の購入金額を仕入増値税額として控除可能)
小規模納税人
・税率が低い(3%)
・増値税発票発行のための専用機械を購入する必要がない
デメリット
・売上税額から仕入税額を控除できない
・売上増値税の発票を発行するには、発行の都度税務局に依頼しなければいけない。
一般納税人と小規模納税人のメリット・デメリットを比較してみると、仕入税額が売上税額に対して比較的多い場合は一般納税人を選択し、一方、仕入税額が売上税額に対して比較的少ない場合は小規模納税人を選択するのが、有利になることが多いです。
例えば、①売り上げが年間100万元、仕入額が85万元の会社②売り上げが年間100万元、仕入額が10万元の会社があったとします。すると、増値税の計算は以下のようになります。
※売上=課税売上、仕入=課税仕入として計算しております。
【一般納税人と小規模納税人におけるそれぞれの増値税の計算】
以上のように、税金の規定を正しく理解することで、税金コストは簡単に確実に抑えることが可能です。それぞれ会社の状況によって、有利・不利が異なります。適切なシミュレーションをおこない、どのような会計処理を行うかを選択することをお勧めします。
参照規定:
・増値税一般納税人資格管理弁法(国家税務総局令[2010]22号)
・増値税一般納税人の指導期間に関する管理弁法(国税発[2010]40号)
・国家税務総局 北京等8省市に対する営業税から増値税への改革試行にかかわる増値税一般納税人認定に関する公告(国税[2012]38号)
以上です。